【第2話 灯は赤々と】
團室には神棚を設置させて頂き、天照大御神と氏神様である住吉神社、そして我らが神戸の街が誇るの武の神 湊川神社の神々をお祀りし、日々、母校の発展を一心に祈願申し上げている次第でございます。
しかしながらそこは我が團員、問題は絶えないのであります。当番團員は毎朝、榊の水替え、神饌のお供えを行う日課がありますが、掃除に追われているうちに忘れてしまう事があり、雷を落とされた覚えがあるOBは少なくないでしょう。
さて、我々應援團の本業である応援に赴く際、團室に集合し神棚の前に幹部以下團員一同、打ち揃い、母校の必勝を祈願し、参拝する習慣がございます。その際は、新品の酒をお供えし、御神燈のロウソクに火を灯し、二礼二拍手一礼の作法を以て参拝、最後は御神酒を頂戴し、いざ出陣と相成るのでございます。
ある日、翌日の応援に備え早めに幹部全員が帰った事を見届けた3回生が、團室で寛いで会話に花を咲かせておりました。1、2回生はせっせと明日の応援の準備に励んでおります。
その時、ある3回生が前回の応援前の参拝の際、ロウソクが無くなりかけていた事をふと思い出し、原付で通学しておりました2回生を呼び、ロウソクを買って来る様、指示を出します。我ながらの用意周到さに酔い痴れ再び会話の輪に戻る3回生氏。
しかし待てど暮せど、2回生氏は帰って来ません。当時は今ほどコンビニがないにせよ、大学と最寄駅の間には立派なスーパーがあり、そこで難なく買える筈なのに、これはおかしい、事故か?と思い始めた時、階段を上ってくる足音が聞こえます。
皆の安堵と共に入室してきた2回生氏に、何をしていたのか、という当然の疑問をぶつける3回生諸氏。すると何やらモゾモゾと言い淀み、買い物を指示した3回生に助けを求める様な視線を投げかけます。
仕方なくその3回生が團室の外へ2回生を連れ出しますと、2回生氏が急に破顔一笑、手にしていた包みを渡しながら
「先輩、三宮まで行かないと商品がないと思いまして、大急ぎで行って参りました」
と胸を張ります。不思議に思い、明らかに想定より重い包みを開けますと、眩いばかりの真っ赤な極太のロウソクが視界に飛び込んできます。
「!!」
余りの事態に絶句する3回生氏。何故、こういう事態になったのか記憶を辿りますと、確か指示を出した時にちょうどSMクラブの話をしていた事を思い出します。しかも話を少し盛りまして「やっぱりMyロウソクに限るで」と全く自慢にもならないホラを吹いていた事がありありと蘇ります。「・・・この、ダボ!」とロウソクより赤い顔で怒鳴る前に、既に事の真相を知った他の3回生が七転八倒し爆笑の渦となっていた訳であります。
頓珍漢な事をする下級生も困ったものでありますが、変に気が回る下級生も考えもの、という実に含蓄に富んだお話でありました。
【写真:岡本秘宝館様より提供】
八代目甲南大學應援團OB会
広報委員会