アメリカが、ひとつの国になるために、どうしても必要だったのが、大陸横断鉄道。苦難の工事の末に二つの線路が繋がったその場所には、今も二台の蒸気機関車が向い合せに置かれている。
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東から建設されたユニオンパシフィック鉄道の119号と、西から建設されたセントラルパシフィック鉄道のジュピター号。


最後の枕木が打ちこまれたのは1869年(明治二年)5月10日。午後一時少し前の事だった。

間違いなくアメリカの歴史の一ページとなるこの式典。
最後の枕木は、
金でつくられた「ゴールデン・スパイク(金の犬釘)」で打ち止められる事になった。


打ちこんだのは、カリフォルニア州知事もつとめた、スタンフォード大学の創始者、リーラント・スタンフォード氏。

その様子は、ソルトレイクシティのかつてのユニオン駅の壁にこんな風に画かれている。

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小松がこの「ゴールデン・スパイク」ナショナル・モニュメントを訪れたのは六月の晴れた土曜日。当時の式典を再現する催しが行われていた。



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「わずか十二日間で東と西をつなぐこの鉄道は、二つの世界をつなぐのです!」







「これは、インドへの道だ!」


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これを演じているのは、実はエキストラ。観客の中から選ばれた人が、衣装を貸してもらい、セリフを渡されいた。



それにしてもみんな達者です。




「中国人たちと、アイルランド人たちをはじめとした数多の命が失われました。彼らに黙とうをささげましょう」
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司会を務める人物が観客に質問する。
「この鉄道がつながった日はいつか、答えられる人?」
1869年5月10日!っと、答えた人があり、司会が「正解!」と言ったが、後ろから、待ったがかかった。



「いやいや、この釘には5月8日と書かれているんだよ」pro6

と、ゴールデン・スパイクに刻まれている文字を読む。


「ん、ほうほう、そうですな」

演技なのか真面目なのかよくわからない(笑)


事実は、どうなのか。


たしかに、式典の行われたのは5月10日だったが、実際にはその二日前の5月8日に線路はつながっていた。
ビジターセンターにある「ゴールデン・スパイク(黄金の犬釘)」のレプリカに、確かにそう書かれている。


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細部をようく見ると


「コンプリーテッド MAY 8th 1869」pro_golden2












鉄道がつながった知らせを受けて、カリフォルニアからのスタンフォード氏をはじめ、お歴々がやってくるのに、まる一日はかかっただろう。

何にもなかった草原に仮設テントと仮設レストランが出来、労働者をはじめ八百人もの人々でいっぱいだったという。


式典のクライマックスは、もちろんスタンフォード氏が「ゴールデン・スパイク(黄金の犬釘)」を打ちこむ瞬間。
この最後の一打を、電信機とシンクロさせて「DONE(完成)」の一文が世界中に送られるという趣向だったのだが・・・


あろうことか、スタンフォード氏はその一打を打ちそこねてしまったのだった!
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再現芝居では、ちゃんと、そのシーンもやっておりました(^^)/


電信技士は、そんな式典のハプニングは知らん顔で、手動で、鉄道の完成を全世界につたえた。


現代のテレビ中継のなかった時代、式典ので赤っ恥を世界に発信されなかったスタンフォード氏は幸いです。


今なら、あっというまに動画が世界中にながれてしまうだろう。

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ビジターセンターには前出の「ゴールデン・スパイク」のレプリカが置かれているだけでなく、当時のレールの様子も分かる。

よく考えればあたりまえだが、二本の線路を枕木に固定するには四本のスパイク(犬釘)が必要になる。

式典では四本それぞれが大事な記念物として特別なものが用意されていたのがわかった。
つまり、「ゴールデン・スパイク」は、その四本のうちの最後のものだったのだ。


17.6カラットの金でつくられ、当時の金額で350ドル相当。
式典後にすぐに引き抜かれて、現物は現在スタンフォード大学に保管されている。
※それは実は本物でないという説もありますが

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この歴史的な場所プロモントリーはしかし、線路が出会てから三十年少しで使われなくなってしまった。
1904年にグレートソルトレイクの中をつっきる線路が建設され、71㎞も短く、平坦な線路が使われるようになったのである。下がその様子。

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下は1927年のプロモントリー。廃線のわきにぽつんと建てられた記念碑。
この記念碑は1916年に旧セントラル・パシフィック⇒当時のサザン・パシフィック鉄道が設置したもの。

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現在は修復され、ビジターセンター横に移動されていた。


●ビジターセンター入り口pro2


入場料は、なんと車一台ごとにUS$7とお安い。


夏季の土用祝日には、このような式典を再現したドラマが行われる。

ソルトレイクシティから15号線を北上し、365番出口から83号へ。
周囲にはなにもないけれど、近くにスペースシャトルを運んだロケットを展示しているATKロケット・ガーデンがあるので、それも寄っていく価値があります。