山形から仙台方向へ列車で15分。山寺駅のホームから見える立石寺、通称「山寺」ははるか断崖の上に御堂が見えて、登ってゆくのはたいへんだと感じさせる。

山寺を最も印象深くしているのは、ひときわ尖った石の上に立つこの赤い小堂だろう。
この寺で最も古い建造物で経文を納めてあるそうだ。

だが、風景以上に、堂の下に開山の慈覚大師円仁が入定した岩屋があると知って興味がわいた。
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この写真からぐっと左に顔を向けると、後世の僧が修業した険しい岩山が見えて、あたかも彼らを見守る位置に円仁が座しているような雰囲気がする。

円仁は9世紀天台宗の僧。記録では比叡山で亡くなっていて、そちらに墓もあるそうだ。
が、この寺への思いが深く、亡くなる直前にこちらに飛んできたなんて話もある。

昭和24年の発掘調査では五体の人骨と円仁を写したと思われる頭部木彫がみつかった。なぜ人骨に頭部が無く、木像があったのか。なぜ五人なのか。理由は分からない。

分からなくてもよい。重要なのは、何かに苦しみ思い悩む人が訪れた時、その苦しみを「預けられる」だけの人がかつてそこに確かに存在していたと感じられる事。

山寺は、円仁の時代から千百年の間に訪れた人々の念が、穴だらけの岩と木立の中に重なっている。