キャンディから首都コロンボ近郊へ行く途中に休憩したアンベプッサのカフェにて。
ガラスの向こうで、もくもくとおいしそうな揚げ菓子をつくっている。
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これをみて「あれ、やってみたい!」とひとりの旅メンバーが反応した。
服が汚れそうだとか、油で火傷でもしたらどうしようとか…こまこま心配したけれど、この好奇心を無下にするよりは挑戦してもらうことにした。
さっそく乱入(^^)
kokis2パンケーキの元のようなものを真鍮の型にほどよく漬けて、熱い油の中しばらくしたら「トンっ」と軽く叩いて型から外す。よい色になるまでもう少しだけ油の中に置き、救い上げる。

材料は、米粉をココナッツミルクで溶いたもの。ターメリックと塩と卵を適量入れる。好みによって甘味も足す。これをココナッツ・オイルで揚げるというもの。

だんだん上手になってきて、お店の人も見学にあつまってきた(^^)
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完成!
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ガイドさんに「なんという名前ですか?」と聞くと「コキスと言います。スリランカの新年によくつくられるお菓子です。ポルトガルの時代のものじゃないですか」との事。スペルをきいてすぐにネット検索してみると、オランダがルーツだと解説してあった。

17世紀のスリランカは、ポルトガルから奪い取り18世紀にイギリスに奪い取られるまでの間、オランダが支配した。今でもその頃の商館や城塞は残されている。

KOKIS、さて、現代のオランダでは存在するのか?
帰国後、アムステルダムに住む友人に画像と共に質問してみると、納得の答えが返ってきた。

「そんな、感じのものは、揚げ菓子じゃないですがあります。この名前がオリジナルがオランダ語なのであれば、おそらくKoekjesから来ているのだと思います。意味はクッキー(複数形)です。似てますよね。ちなみに、ココナッツのことは、Kokosです。ココナッツ味のものであれば、こちらの意味から来ているのかもしれませんね。ココナッツとクッキーの意味合いが合わさったのかもしれません。」

なるほど、英語でいうCOOKIESだったのか!
想像してみよう、17世紀はじめのスリランカでの光景を。

オランダ人が食べている美味しそうな菓子を見て、スリランカ人が「それは何?」と、訊ねる。
オランダ人が「クッキーズ」と答える。

料理センスのあるスリランカ人が、スリランカにある食材をつかって、似たようなものを作ろうといろいろ工夫する。米粉をココナッツミルクで練って揚げるという方法を考え出して、それを現地訛りの名前KOKISと呼んで定着した。
珍しいお菓子なので、お正月など特別な時にだけつくられていた。

おおかたののスリランカ人もオランダ人も、こういう歴史的経緯は忘れ去っている。

日本人が「天ぷら」と呼ぶものは、もともと「TEMPORARYテンポラリー(一時的)」からきているとか(※一説です)そういうのと同じである。