國民新聞・平成23年01月31日の記事(その5)公式ホームページにアップしました。「年頭に想ふ」の最後の全記事です。興味のある方は御覽ください。


その5は知人もあまりゐないので、紹介はやめて別の事を書きます。一度、論じてみたいと思つてゐた話題です。題して「乃木將軍と大西郷


乃木將軍大西郷(弟の從道と區別するため大をつける)は共に、西洋化する明治の日本で江戸時代の價値觀を護持し續けた偉人です。でも、二人には大きな違ひがありました。


大西郷新時代への適應に失敗し、乃木將軍は成功したのです。乃木將軍西洋の軍事学を深く理解して戦場で大活躍したのですが、古武士の風も失ふ事はありませんでした。


何故、似たやうな價値觀を持ちながら一方は近代に適應し、もう一方は適應異常を起こしたのでせう。どちらも、人間として見るなら立派な方でした。


乃木獨逸留學により、西洋と日本を相對化する事に成功したのです。獨逸にも下劣な人もゐれば駄目な處もある。西洋の全てを肯定する必要も日本の全てを否定する必要もない。


だとすれば、日本人は良き日本人であれば充分ではないか。かうした相對化が、優れた西洋の技術を導入する事に對するためらひをなくしました。


大西郷にとつて、西洋は最後まで野蠻な似而非文明だつたのでせう。さうした氣負ひが西洋化への適應異常を引起し破滅に導いたのだと想ひます。


僕は大西郷のやうに、「敬天愛人」なんて生き方はできません。せめて「天を恨まず、人を憎まず」くらゐの處を目指すつもりです。