健康ニュースの読み方 | Agribusiness.com (ビジネスチャンスを産むバイオ情報サイト)

健康ニュースの読み方

まずは一つの例を出します。

DHA(omega-3 fatty acid docosahexanoic acid)にアルツハイマー病を予防する可能性があることをUCLAの研究者が発見だそうです。(英文元記事)

DHAを投与したネズミではアルツハイマーの原因となるbeta-amyloidが減少しbrain plaques(脳の血管が詰まること。和訳は何でしょうか。血栓?)が非投与の集団に比べて40.3%減少したそうです。

さて、この結果を受けてサプリメント会社が「DHAでアルツハイマー予防!」というキャンペーンを開始するとします。そこにイチャモンをつけるとすると以下のようなものがあります。

ネズミと人は体のサイズもシステムも違うのでネズミで効いたからといって人にも効くとは限らない。

立派なイチャモンですよね。では製薬会社はこの意見を受けて次の段階、人を使った臨床試験に移らなければなりません。そこでどのような結果がでるかは分かりません。

ここで何が言いたいかといいますと「~が~病に良い!」という報告には「分かったレベル」というものが存在している。

一番下なのが例えば「1万人の食生活を調査した結果、ビタミンAの消費量が増えると癌の発症率が低下する統計的な相関が見られた」というもの。こういう風に食生活と病気の関係を何万人という集団の中で調べる研究をEpidemiological Study(疫学研究) といいます(注1)。しかしこの疫学研究は色々と正確性を欠く事も多いです(注2)。

そこで次のレベルは動物実験。癌を発症したネズミに例えばビタミンAを投与して癌が減るか見ます。

最後のレベルは患者さんを使った臨床試験です。実際にビタミンAのサプリメントを人に飲ませて癌の発症率が減るか、もしくは癌が小さくなるかを見ます。

最終的に人に試してOKでしたら、それは「効果がある」と自信を持って言えますね。

では世の中に氾濫しているサプリメントですがどのレベルで分かっているのでしょう。例えば、今回のDHAは動物実験レベル、自分の専門であったビタミンAは動物の癌は小さくしたのですが臨床試験では健康に良いという結果は出ていません。びっくりしました?

でもサプリ会社は癌に効く!つまり臨床レベルで効能があるように宣伝してますよね。商売なんでしょうがないですけど、消費者は見抜くために賢くならなければなりませんよね。

ではまとめ。
「~が健康に良い」とニュースに出たときは1.疫学レベル 2.動物実験レベル 3.人を使った臨床レベル のどのレベルでの発見かをチェックしましょう。後に行くほど確かなので信用度はあがります。

注1:疫学研究には手法によって幾つかの種類があります。手法によって統計的な確からしさが変化します。Cohort study(健康な人の食習慣を何年も追跡調査してどんな病気にかかったかを調べる)の方がcase-control study(特定の病気を持っている人の過去の食習慣を調査する)よりも統計的なエラーが少なく確かだといわれています。

注2:疫学研究では同じ事を調べても真逆の結果が出ることも多々あります。そこで何十回も調査をして、どれだけ結果がコンシスタントなのか、ということの方がより重要になっていきます。