1981年に仕事で盛岡を担当したのがきっかけで、僕は盛岡にハマり、いつしか第二の故郷と思えるようにさえなっていた。 久しぶりの休暇に、またも行き先は盛岡。

22年ぶりに立った、市街からも至近の岩山。 北上川も流れる風情のある盛岡市街、雄々しき岩手山、それに続く八幡平、秋田との県境の奥羽山脈、凛としたたたずまいの姫神山。 それらが快晴の空に余りにも美しく映える。 特別に冷える盛岡も少しずつ春が近づいている様で、ほんのうっすらと霞んで見えるのもこれまたいい。 空気は澄み渡り、日差しは強く、深呼吸せずとも体の中身まで洗われるようにさえ感じる。

おっと、白樺の林の中に、袴姿の小柄な人物が向こうを向いて立ちションベンをしている様子。 近づけば石川啄木先生じゃあーりませんか。 大変失礼しました。

 「先生、何をしておいでですか? マントも羽織らずに…。」
 「生まれ故郷の渋民を眺めているのだよ…。」
 
友人達がいつも暖かく迎えてくれる。 若い頃からの友人じゃないのに、いつの間にか一番気を遣わない、楽しい友人になっている。 一人の実家のある町に行く。 ここにも美味い盛岡冷麺(平壌冷麺)がある。 「21世紀に岩手でオリンピックを!」と書いた看板もある??。 北上川を渡ると100羽を越えようかという白鳥が雪解けの田んぼで餌を漁っている。

 宮古や八戸から運ばれる新鮮な魚が食えるいつもの寿司屋で小宴会の後、盛岡郊外の鶯宿温泉へ。 御所湖は全面氷に覆われている。 夕方に青く光る岩手山、ワールドカップもあった雫石スキー場が望める。 昔あった全日空機と自衛隊機の悲劇も嘘のように静まり返っている。 友人の温泉別荘がここにあるので、実に助かる。

 素晴らしい手料理、あちこちから集められた旨い酒、話も嫌がおうにも弾む。何度も温泉につかり、いつの間にか寝る。 僕の日常からは余りにもかけ離れた時間が流れる。 酒も、つまみも、仲間も、空気も、温泉も、宿も…すべてが良いから幸福感に包まれる。

 今日も美味い蕎麦に盛岡冷麺を2杯も食って、東京に帰った。 また行けるように、仕事を頑張ろう。 そんな気にさせてくれる僕の盛岡。