【書評】「あんじゅう ― 三島屋変調百物語事続」 | 何事も楽しく、過ごしたい。

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宮部みゆきの著作「おそろし 三島屋変調百物語事始」の続編である。

宮部ワールド全開の時代小説。
舞台は、江戸時代の商家・三島屋(袋物屋。現代でも京都でお洒落な鞄やアクセサリー、身の回りの細々したものを可愛く並べているショップをよく見かけるが、そんな感じの店なのだろう)。

主人公は、17歳の娘のおちか、三島屋の主人の兄の娘、つまり姪っ子のお嬢さん。
以前に起きたある事件が、おちかの心に暗い影を落としているため、店で女中としても働くおちかの心を癒すため、三島屋の一室で不思議話を聞かせる人を呼び、おちか一人に話を聞かせる三島屋の主人夫婦。

話自体は、怖い話やどちらかというと辛い話なのだが、三島屋の主人夫婦、女中さんや番頭さん、丁稚の少年と回りにこころあたたかい人がいるので、話も暗くならない。しかも、話がすすむごとに回りの登場人物が増えてくるこの宮部ワールドが堪能できる。

第一話 逃げ水
第二話 藪から千本
第三話 暗獣
第四話 吼える仏
変調百物語事続

という構成になっており、第三話の暗獣がタイトルの「あんじゅう」である。
表紙イラストにもなっている、このあんじゅうのくろすけは可愛くもあり、悲しくもあり、涙を誘う話である。
第二話の薮から千本は、逆に人の怨念の恐ろしさをがっつりと教えてくれる話で、怖い話である。

イラストは、南伸坊氏が担当。表紙イラストだけでなく、本文の全ページの活字の下にイラストが挿入されている。このイラストも読んでいて、ほのぼのとさせられる。ページをめくっていると、まるでパラパラ漫画のような感じで、いい感じで楽しませてくれる。

新しい登場人物も増え、百物語というように、まだまだ続きそうな、また続けてほしい小説である。