三重県鈴鹿市の特定社会保険労務士＆特定行政書士・小岩広宣です。

すでに新聞報道などでご存じの方もいらっしゃると思いますが、労働者派遣事業の「許可基準」の一部が改正される見込みです。

厚生労働省は、９月中旬の改正に向けて、すでにパブリックコメント（意見公募手続き）を開始しています（意見受付期間は、７月２８日～８月２６日の１か月間）。

労働者派遣事業の許可基準の改正案に関する意見募集について

改正が予定されている内容は、ほかならぬ、「資産要件」です。

建設業や運送業と比較してもすこぶるハードルが高いため、許可申請や更新申請のときにネックとなることも実際に多いですね。

ただ、高く設定された基準には、もちろん目的があり理由があるわけですから、これを満たせない事業者は参入できない（してはいけない）ことは、あまりにも当然のことです。

資産要件については、現行の許可基準では以下のように定められています。

資産要件
許可申請事業主に関する財産的基礎

・資産（繰延資産及び営業権を除く。）の総額から負債の総額を控除した額（以下「基準資産額」という。）が2,000 万円に当該事業主が労働者派遣事業を行う（ことを予定する）事業所の数を乗じた額以上であること。
・基準資産額が、負債の総額の７分の１以上であること。
・事業資金として自己名義の現金・預金の額が1,500 万円に当該事業主が労働者派遣事業を行う（ことを予定する）事業所の数を乗じた額以上であること。

改正後は、上記の要件に加えて、下線部を新たに追加されることになります。

ただし、地方公共団体による債務保証契約又は損失補填契約が存在することによって派遣労働者に対する賃金支払いが担保されている場合は、資産要件を満たしていなくても差し支えないこととする。

改正の趣旨について、「案」では次のように述べられています。

「派遣労働者に対する賃金支払いの担保等といった観点から許可基準として一定の資産要件を定めているところである。これについて、地方公共団体による債務保証契約又は損失補填契約が存在することで、派遣労働者に対する賃金支払いが担保されている場合には、資産要件を満たしている場合と同等の評価ができるため、資産要件に関し一部見直しを図るもの」

気になる「地方公共団体による債務保証契約又は損失補填契約」については内容が明らかではありませんが、当然のことながら全面的に規制が緩和されるわけではなく、実質的な要件が担保されうるようなハードルが設けられることになると思われます。

この点については、新聞報道などでは少し誤解を招くような表現もみられたと思いますので、単に「許可基準が緩くなる」といった一面的な理解をすることのないよう、慎重を期したいものです。

今、特定労働者派遣事業は経過措置期間中にあり、言葉は失礼ですが「仮免許運転中」の状態にあります。

来年の９月２９日までに「許可」を取得しなければ、その後の営業は不可能になるわけですが、このような状況にある派遣事業者は全国に相当数存在するため、今回の改正案については「渡りに船」になる可能性もあります。

厚生労働省も派遣事業者の実態をにらみながら、ある種の救済策としての一部改正をせざるを得ないと判断しているものと思いますが、ただ、だからといって、これに飛びつくのは危険です。

私は個人意見として、派遣事業の現場を知る立場としては、このような改正の内容には慎重というか反対です。ただ、もちろん、実務家ですから、意見に関係なくクライアントの依頼にいかに健全に応えていくかがプロとしてのスタンスです。

その意味では、このような改正についても、この分野の専門家として、いち早く確実に対応していくことに注力したいと思っています。

このブログでも随時更新していきますが、もし具体的な実務対応について気になる方がいらっしゃれば、個別でご質問ください。

私自身のキャパの関係もありますが、できるかぎりの対応をさせていただきたいと思います。

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派遣事業の「許可基準」の一部が改正されます！