「俺も見てたわけじゃないから

詳しくは知らないんだけど……

なんでも、20歳ぐらいの女の子が

酔っ払いの運転してた車に

ひかれたとかってことらしいよ」


心臓がとまりそうだった。


否定するのは簡単だけど……


おそらく、間違いないだろう。


どうやら美鈴ちゃんは
交通事故にあってしまったらしい。


愕然とする俺に向け
さらに男が言葉を続けた。


「見たってヤツの話によると

暴走してきた車が

そこの歩道に乗り上げて

たまたま歩いてた女の子を

はね飛ばしたらしいんだ。

ちくしょう……

俺も見たかったなぁ……」


悪気はないのだろう。


しかし、その男の笑いは
俺の逆鱗に触れた。


「なんだと……」


湧き上がる怒りのままに
握りしめた拳は……


脇から伸びてきた手に
事前に阻まれてしまう。


その手の主は……


やはり、アヤだった。


悲しげな目で俺を見つめながら
ゆっくりと首をふる彼女。


唇をかむ俺を背中に回し
アヤは男に質問した。


「美鈴ちゃ……その子は

どこの病院に

運ばれたんですか??」


「そうだなぁ……」


アヤの際立つ美貌に
目を白黒させる男。


考え込むふりをしながら
ちらちらと視線を巡らせる。


「……わかりませんか??」


アヤが再度問いかけると
彼女の身体に向けた視線を
名残惜しそうに引き離しながら
男はようやく答えた。


「この辺だったら……

隣の駅のそばにある

救急病院だと思うよ」


「隣の駅ですね??

ありがとうございます」


男に頭を下げてから
俺に声をかけるアヤ。


「……行こう」


俺が短くうなずくと……


アヤは突然
駅に向かって走り去った。


慌てて後を追いかける。


「ちょ、ちょっと待って!!」


必死で彼女の服をつかむ
俺の手を振り払って
アヤは強い口調で吐き捨てた。


「何なのよ!! 離して!!」


「ちょっと落ちつけよ(´д`lll)

お前、駅に行く気だろ??」


「当たり前でしょ!?」


彼女はさも当然というように
ふんぞり返って答える。


「あのな……(-゛-;)」


俺はため息をつかずには
いられなかった。




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