日当たりのいいベランダに並べた鉢で野菜を育てる。
ちょっとした菜園みたいだ。
彼女は毎朝、歯を磨きながら、野菜の成長を楽しむ。
大きく育ったら良質のエクストラ・ヴァージンオイルをたっぷり使って
このナスやトマトでパスタを作ってよ、と楽しみにしていた彼。
バジルの葉っぱも大きくなり、
週末にはナスもトマトも収穫できそう。
彼女は彼に、“収穫祭に赤ワインで乾杯しよっ”と、メールした。
約束の日、彼女は外国人御用達のマーケットで
焼きたてのバゲット、フレッシュなラズベリーを買って部屋に戻った。
すると、ベランダで3羽のカラスが彼女の宝物をついばんでいる。
「こらっ」
彼女の声に飛び去るカラス。
でも、そこには無残な残骸が・・・。
ショック。
と、チャイムが鳴った。
彼は半べその彼女に気づいて「どうしたの?」と心配そうに尋ねた。
彼女はカラスの襲撃を説明した。
「ごめん、楽しみにしてたのに・・・」彼女はそう謝った。
彼は微笑みながら、こう答えた。
「君と同じように、カラスも野菜が育つのを毎日見ていたんだよ。
愛情を注いだものは美味しくって安全だって知ってるんだなぁ。
形は崩れちゃったけどいいじゃないか、これでパスタ作ってよ。
ほら、ワインを持って来たし。
それに、君の愛情をカラスの横取りされたままじゃくやしいしね、ははは」
二人は風の吹くベランダで、ワインと彼女の作ったパスタを味わった。
さて、今回二人が乾杯したワインは、カリフォルニアの赤ワイン
「Fetzer社 BonterraZinfandel フェッツァーボンテッラジンファンデル」
有機栽培による品種の持ち味を見事なまでに引き出した逸品。
コーヒーやカラメルを思わせる甘く魅惑的な香りと
華やかなベリー系の果実香、
ラズベリーの様な甘く凝縮感のある香りの中にスパイスも感じられます。
ちなみに、カリフォルニアで「有機栽培」を名乗るためには、
最低3年間、無農薬、無科学肥料、無除草剤を求められ、
協会(CCOF)の審査を経て初めて認定されます。
ノースコースト地域メンドシーノ地区に位置するフェッツァー社は、
そのカリフォルニアで最も早く認定を受けたワイナリーのひとつです。
フェッツァー社のフィロソフィーは、
葡萄園を病虫害から守るために、あらゆる「自然の力」を借りること。
畑のそこここに「ハビタット・ブレイク」と称するハーブや花、
果実などの植栽培帯を設け、
あるいは下草にも、クローバーやライ麦、ソバ等を植えつけて、
小鳥や虫、有益な微生物などを呼び寄せています。
小鳥や虫たちの歌声が響きわたるこの美しい自然環境に守られて、
フェッツァーの葡萄たちは、健康で素晴らしい房を実らせてくれるのです。
自然にやさしいワインは美味しいんです。
自然派の恋人たちにお勧めのワインです。
長い間、ご愛読くださいまして、まことにありがとうございました。
「恋に効くワイン」は今回で最終話となりますが、
恋をめぐる素敵なエピソードと美味しいワインがある限り、
また、みなさまとお目にかかれる日が必ず来ることと思います。
À bientôt
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