韓国への進出、を考える場合、
もっとも一般的なのが100%出資で現地法人を設立する、
もしくは、韓国に支店を設置する、
のいずれかです。
この場合、利害関係者が自社以外にいないため、
特段の事情がない限りは、
スムーズに進みます。
一方、
合弁会社を作りたい。
韓国企業を買収したい。
という相談も寄せられますが、
これらについては、
慎重さが必要です。
「慎重さ」といっても、「尻込み」することとは違います。
韓国に投資をして何を目指すのか、
という目的をしっかりと持ち、それを実現するために、
阻害事項を前もって潰していくという作業です。
別の言い方をすれば、負っても良いリスクと負ってはいけないリスクを峻別し、
後者をどのようにコントロールするかにつき、
合弁相手もしくは買収対象会社と、議論を重ねることです。
このコミュニケーションの過程で、
瓦解してしまうことが良くあります。
典型的なのは、
スケジュール感の違いです。
韓国側は「一刻も早く立ち上げたいから、早く出資してくれ」といいます。
日本側は「そのスキームは本当に可能なのか」など、不明瞭な部分があり、きちんと検討した上で進めましょうと考えます。
このような時間軸の違いにより、
立ち上げ前から、双方、交渉に消耗してしまうことが良くあります。
だいたい1ヶ月に1−2件は、そのような相談があり、
そのうち半数は、白紙に戻るようなイメージでしょうか。
日本側は、海外でのビジネスのため、どうしても法的安定性と会社運営の透明性を重視します。
一方、韓国側は、自分の領域でビジネスをすることから、感覚的に「これで大丈夫だ」というものを持っています。
そのような認識の差から、どうしても溝が埋まらないケースが発生します。
また、一般的に日本は「石橋を叩いて渡る」、韓国は「まず渡ってみる」というビジネス文化の差異によるものなのかもしれません。
韓国では、前もって計画してもどっちにしろ想定外のことは起こるのだから、いったん始めてみて問題が発生したら、その都度つぶしていけば良い、と考える経営者が多いです。「もぐらたたき経営」と呼ぶ人もいます。
叩くのは、石橋ではなく、モグラです。
このような価値観のズレをもった当事者同士が合意に至るためには、
緊密なコミュニケーションと忍耐が必要になります。
石橋を叩きすぎて壊れるケースも多く見てきました。
一方、「彼は長い付き合いで信用できる」と言うがままに出資して痛い目に合うケースもたくさん見てきました。
このようなことにならないためにも、
許容できるリスクと許容できないリスクの峻別。
認識したリスクに対応するコントロールの設定。
このコントロール設定に関する双方間のコミュニケーション。
こういうことが重要だと思っています。