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サッカーのピリオダイゼーション パート1 日本語翻訳版完成!

いろいろとここに書きたいことはしょっちゅう思いつくんですが、結局後回しになってしまいますね。

最後に更新した2月以降、いろんなことがありました。

サッカーについて言えば、昨シーズンまで所属していたアイセルメアフォーヘルスでは、6月に3部以下(トップクラス以下)で行われるカップ戦で、全国優勝を果たしました。これで、僕が活動させてもらっていた5年間で取れるタイトルを全て経験させてもらいました。
このクラブでは非常に多くの経験をさせてもらい、本当に感謝しています。

その後、以前から話をさせてもらっていたスパルタ・ロッテルダムという2部(ジュピラーリーグ)のクラブと契約し、今シーズンからスパルタ・ロッテルダムのトップチームのフィジオセラピスととして活動しています。

スパルタロッテルダムはオランダ最古のプロクラブで、ここ5年間はジュピラリーグでプレーしていますが、本来はエールディビジでプレーできるだけの力を持っているはずのクラブです。
今シーズンはスタッフ陣を強化して、本気でエールディビジへの昇格を目指しています。

現在、17節を終えて首位にたち、昨日ライバルチームのNACが負けたことにより、第2ピリオドのチャンピオンというタイトルを取りました。これで、たとえ優勝を逃しても昇格をかけたプレーオフへ進出する権利を得たことになります。

また、昨日勝利したことで、ウィンターストップ前最後の試合を残して、首位のまま折り返せることが決まりました。

ここまでのプロセスはかなりうまくいっていて、テクニカルスタッフ、特に監督のアレックス・パストールのチームビルディングの進め方はとても勉強になります。
非常に緻密で、鋭い観察力を持っており、選手やスタッフに対するプレゼンは常に一貫しています。

このチームでこのプロセスに関わらせてもらえることは、本当に幸せなことだと思っています。

ただ、日々自分自身の力のなさを感じるのも事実で、まだまだ毎日改善しなくてはならないことだらけであることを痛感しています。このチームで仕事が出来る喜びを味わいながら、日々成長できるように努力を続けていこうと思います。


そして、日本でセミナーをさせてもらっている「サッカーのピリオダイゼーション」ですが、遂に日本語翻訳版が完成しました。

この本については、1月5日に今年完成したばかりの市立吹田サッカースタジアムで行われる「サッカーのピリオダイゼーション」エキスパートコースで完成イベントを行います。

この本の日本語翻訳版を出版したいといのは、2009年からの僕の希望で、ようやく叶う形になります。

実は、2011年から行われている「サッカーのピリオダイゼーション」セミナーも、もともとはこの本を日本で出版してもらいたいというところから始まりました。

ただ、本の内容がサッカー関係の本にしてはあまりに理論的過ぎ、なかなか出版に踏み切ってもらえませんでした。

確かに本屋に並んでいるサッカーの本と比べると、明らかに異質な本かもしれないです。また、図や写真を見ただけで練習メニューが分かるといった類いの本でもありません。

ただ、サッカーに関わる方にはどうしても知ってもらいたい理論です。


この本は、まず「サッカー論」という章から始まります。

僕が日本で発売されている本を読んだり、メディアに出て来る記事やインタビューを見て思うことは、日本にはまず、サッカーの指導についての「共通認識」が無い、ということです。

サッカーにはサッカーが持つ根本的性質があり、それに基づいてパフォーマンスが分析されます。
この根本的性質は、人によって捉え方が異なるものであってはいけません。

サッカーについて議論をしようにも、そもそも「サッカーとはこういう競技です」という根本的な部分の捉え方が人によって異なっているのでは、その時点で議論が成立しなくなるからです。

主観的要素を取り除いたうえでの「サッカーの論理的構造」を共通の認識としてもっていれば、サッカーについての議論はより具体的で深いものになります。

これが、欧州の指導者が行うサッカーの議論と、表面的な部分でしか行われない日本のサッカーの議論の違いだと思っています。

「心・技・体」という分類の仕方は、様々なスポーツの「論理的構造」として用いられますが、これではサッカーを厳密に分析することができません。

「あの選手のメンタルは弱い」
とか
「あの選手はフィジカルが強いけどテクニックがない」

では、サッカー選手の能力を分析したことには全くなりません。

ですので、まずサッカーの根本的性質に基づいた「サッカーの論理的構造」をサッカーに関わる誰もが知っておかなければなりません。

こうした根本的性質に基づいた論理的構造がないというのは、例えば、

「私は人間の膝はこういう風にできていると思う。」という医者Aに対して、
「そうですか、でも私は人間の膝はそうじゃなくてこうだと思います。」という医者Bがいる。
Aは、「私は膝はこうだと思うので、こういう手術をします。」といい、Bは「そうですか。では、私は膝はこういう風にできているので、こういう手術をします。」

と言っている様なものです。

実際は、膝の解剖は医者であれば誰もが持っている共通の知識です。
それを基に、いろんな議論が進みます。

しかし、そもそもある膝の構造の認識が主観的なものであれば、それ以降の議論は成立しませんし、それ以上発展もしません。


ですので、この本では、まずはその競技がもつ論理的構造を理解したうえで、より具体的なサッカーフィットネスの話を進めていきます。

あと、もう一つ気になることがあります。

まず、「ピリオダイゼーション」というのは、なにか特別なトレーニングの名前をいうものではありません。これは「期分け」とも言われますが、簡単に言い換えると、いつ、どんなトレーニングを行うのかという「トレーニングの計画の仕方」です。

時々、「あのチームはピリオダイゼーションとりいれているから...」という言い方を聞くのですが、それは、「あのチームはトレーニング計画立ててるから...」ということです。

ピリオダイゼーションをしていない、というのは、「いつ、どんなトレーニングを行うか」というトレーニングの計画を立てていない、あるいは、計画の仕方を知らない、ということです。

なので、ピリオダイゼーションというのは、戦術トレーニング、テクニックトレーニングなどと同様に、非常に一般的な言葉です。

そして、「サッカーのピリオダイゼーション」というのは、先ほど書いた、サッカーの根本的性質に基づく論理的構造を原点とした、サッカーに特化したピリオダイゼーションのことです。

これを僕は「ベーシックコース」で紹介させて頂きます。
東京でのセミナーは、有り難いことにすでに定員に達したため締め切ったということですが、福岡、広島、大阪、京都ではまだまだ申込を受け付けておりますので、興味のある方はぜひどうぞ!

そして、それよりも聞いて欲しいのがレイモンド・フェルハイエンの話です。
学生の方には1月4日に学生向けの3時間のセミナー(受講費1000円)があるので、ぜひ聴きに来てもらいたいです。

また、フェルハイエンはアドバンスコース以降、全ての「サッカーのピリオダイゼーション」セミナーで講師をしますので、多くの方に聞いてもらいたいです。

彼は、世界一流のサッカー指導者であると同時に、世界一流の教育者でもあります。
ここまでサッカーを緻密に分析し、そして情熱を持って語れる人に会うことは中々ないと思います。


最後は宣伝になってしまいましたが、興味のあるかたは以下のサイトをご覧下さい。

http://worldfootballacademy.jp/calendar/


まずは来週末のウィンターストップ前最後の試合に向けてまずは全力を尽くします。

そして日本では、多くの方達といろんな話をさせて頂けることを楽しみにしいます!

文化を守るか、サッカーを向上させるか

すでに3週間も前になってしまいますが、今年も無事にワールドフットボールアカデミージャパンのセミナーを終える事が出来ました。

多くの方々に聞いて頂くことが出来て、本当に嬉しい限りです。

特に今回は、ピリオダイゼーションセミナーの「スペシャリストコースレベル3」という、最後のコースまで行うことが出来、同時に日本でも80名以上の方にここまでの全てのコースを受講して頂く事が出来ました。

当初、レイモンド・フェルハイエンを日本に招いて「サッカーのピリオダイゼーション」の話をしてもらおう、その理論を日本の指導者の皆さんに知ってもらおうと思い、2011年のイントロダクションセミナーを企画したときは、多くの日本のサッカー関係者の方から「その理論は日本では受け入れられない」という話をされました。

まずフィジカルトレーニングとして素走りをやめる、2部練をやめる、トレーニングの量を減らすetc。

こういったことは日本の指導者には受け入れられないだろうということだったのですが、結果的にはこれまでの約3年間で本当に多くのサッカー関係者の皆さんに聞いて頂く事が出来ました。

環境の違いがあるため、理論通りにいかないことはあっても、アマチュアチームからプロクラブまで、そして様々な年代で実践していただいているお話を聞かせて頂きました。

やはり、日本人の勤勉さはすごいんだなと改めて思い知らされましたし、情報を発信させて頂く側としても、立ち止まってはいられないと、改めて身の引き締まる思いになりました。


さて、そんななかで、それでもやはり、講習を受けて頂いた方からも、「理論としては納得できるが、日本で実践するには無理があるだろう。」「日本に合ったやり方が必要だろう。」という感想を頂く事があります。


これは、「サッカーのピリオダイゼーション」理論以外に関しても言えると思うのですが、僕は今後の日本のサッカーが発展して行くかどうかは、ここが一つの大きなポイントだと思っています。


それは、考え方として、①「サッカーを文化に適応させる」か、②「文化をサッカーに適応させる」かという選択です。

極端にいうと、
①はつまり、一番重要な事が文化/伝統であり、それに勝るものはない。という考え。

②は、サッカーの質が最も重要であり、そのためになにが最適かを考える。

となります。

例を挙げると、例えば、「日本で実践するには無理がある」というのは以下のような意見です。

「サッカーのピリオダイゼーション」理論の中で、例えば「試合後に重要なのはリカバリーです。まず前の試合から回復した状態で次のトレーニングで再び100%の力を発揮出来るようにします...」という話をしています。

ですが、「日本では週末の土曜、日曜に連戦になることが普通です。場合によっては1日2試合になることもあります。」
だから、日本ではそもそも100%回復してからトレーニング、あるいは試合を行うというのが難しい状況が非常に多いのだということです。

ならばそれに合ったトレーニングの仕方にしなければならないのではないか、という考えです。


これが、①の「サッカーを文化に適応させる」状態です。

しかし、こうすると、結果的にサッカーはどうなるでしょうか。

プロの選手が中2日では回復できないという研究はすでにあるので、どんなレベルの話であっても土曜の試合の疲労が日曜に100%回復しているということは考えられません。

つまり、日曜の試合のサッカーのテンポは必ず下がります。
ローテンポのサッカーになり、プレーの質も下がります。判断力も落ちます。
これはすでに科学的に証明された客観的事実です。

1日に2試合行えばこれがもっとひどい状態になります。

結果的に、このチームのサッカーのテンポはローテンポになります。もっというと、この地域のサッカーがローテンポになるでしょう。

それでも、日本は土曜と日曜に試合があるのだから、2日で2試合できるようにトレーニングされるべきだという考えもあるようです。

ところが、今と10年前のサッカーを映像で見ただけでもわかりますし、データを見ても明らかですが、世界のサッカーの強度、テンポは時代を追うごとに上がっています。

量をこなせばこなす程、強度は下がるので、このように土曜、日曜の連戦を続ける事は、サッカーのレベルを上げるためにはならない事が分かります。

また、戦術的にも、必然的に連戦を勝ち抜くための戦術になります。
サッカーを見ている方なら、それがどういうサッカーかが想像できるはずです。

ところが、そのサッカーも時代とは逆行しています。
さらに、そのように連戦を戦うのは小学校、中学校、高校のみで、その後は連戦を戦うサッカーにはなりません。

なのにどうして育成年代でそうした日程にしなければならないのでしょうか?

その理由が先ほどの①の理由です。


もしも、サッカーの質が重要なのであれば、少なくとも同じ選手が2日連続で公式戦を戦うという状況はなくすべきです。


指導者の声を聞き、こうした理由からすでに新人戦を無くした地域があるようです。
また、同じ理由で、公式戦が土曜、日曜と続かないようにしたという地域もあるようです。

つまり、こうした日程の改善が、日本でも不可能ではないということがすでに事実としてあるわけです。

今後、どれだけの地域が①であり、どれだけの地域が②であるのかというのは、これからの日本サッカーの発展にとって非常に大きなポイントになります。

日本でも不可能ではない、ということが分かった限り、これは「怪我人を減らし、サッカーの質を上げる」ために、地域レベル、国レベルで取り組むかどうかの「選択」になります。

僕自身もこうした事に関してもっと多くの方と議論が出来るように、勉強し、またいろんな方の意見を聞いていきたいと思います。

フィジカルコンディションと判断力

スポーツの世界でなければすでに常識的なことでも、なぜかスポーツの世界ではそうでないことってあるかと思います。

それが、サッカーの世界は「保守的」だと言われる理由の一つです。

「フィジカルコンディションが悪いので、頭のキレ、判断力で勝負する」というのは、読んだ人はフィジカルコンディションと判断力は関係のないもの、と解釈してしまわないでしょうか?

試合中に判断をしているのは「脳」であり、当然「脳」は身体の一部です。
つまり、フィジカルの一部です。

フィジカルコンディションが悪いという事は、筋力、心肺機能等の他に、脳の活動ももちろん低下していることになります。

例えば、サッカーの試合をしていて、試合のはじめはフレッシュな状態であり、良い判断が出来ていても、後半になり、「疲れ」を感じだすと、判断力も鈍ります。

逆に、筋肉を動かしているのも脳からの刺激によるものですから、脳の活動が低下するということは、身体のキレも低下するはずです。

そう考えても、脳とフィジカルコンディションは相互に影響しあっていて、独立させて考えられるものではないです。

身体が疲労している方が判断力が鈍る事、あるいは感情をコントロールしずらくなる事はすでに知られている事です。

ですので、フィジカルコンディションが悪いということは、判断力も鈍ると考えられるわけです。なぜなら、「脳」は身体の一部なのですから。

90分に渡って筋肉、心臓、肺等と同じように、脳も働かせ続けなければならないサッカーでは、出来るだけコンディションのいい状態、できるだけフレッシュな状態でトレーニングすることで、正しい判断をする能力も磨かれます。

実はこれも、「フットボールブレイニング」というワールドフットボールアカデミーの講習会で勉強したことの一部ですが、それ以降、自分がチームのコンディションを把握する中でより気を使うようになりました。

話を聞いていると、言っている事自体はとてもシンプルなのですが、実際に現場でこのことがどれくらい考えられているかというと、そんなに多くはないんじゃないでしょうか?

なぜ現場に応用されていないかというと、それは、こういったことが、感覚的にはなんとなくわかっていても、サッカーの中ではまだはっきりと具体的に言葉にして表現されていないからじゃないかなと思っています。

サッカーが90分間判断の連続を要求されるスポーツだとすると、脳の活動とコンディショニング、あるいは脳の疲労、さらには脳の疲労回復などなど、サッカーには欠かせないのに現場に使われていない理論というのがまだまだあるなと思いましたし、そういったことが間違った内容で伝わるのはとても危険なことなんじゃないかなと思っています。

もちろん代表チーム自体はそういった部分も配慮をしていると思うのですが、あまりにも記事になっていたので気になってしまいました。

もうすぐ始まるW杯も、怪我あけの選手、直前までチャンピオンズリーグを戦っていた選手、気候の変化、移動、などなどコンディションはとても重要なポイントだと思うので、その辺もぜひ注目してみたいです。

ちなみに土曜日にガーナと親善試合を行なったオランダ代表は、コンディションを測定するためにLPM3Dシステムを使っていましたね。GPSよりも遥かに正確に測定出来るシステムですが、選手がそれ専用のビブスを着なければならず、さらにピッチ周辺にそれようの機器を設置しなければならないこともあり、公式戦では使用されていないですね。

これは、ファン・ハール監督がオランダのAZ時代、そしてバイエルン時代に使用していた測定システムです。

テレビで見ていると、選手がそれようのビブスをつけていて、ピッチ周辺にその機械が設置されていました。

いよいよ開幕が迫ってきましたが、ここに来て怪我人も出て来ています。
コンディション面での戦略も各国どのようにしているか、ほんと様々で面白いですね。