アッシュの涙 | ピースメーカーコウヘイの日記

アッシュの涙

ピースメーカー コウヘイの日記-アッシュ

先日、イラク帰還兵のアッシュ・ウールソンさん(27才)の話を聴く機会がありました。残念ながら、講演内容をメモした紙を紛失してしまったので、記憶を元にみんなに伝えたいことを書きます。

アッシュは学資を得るため州兵に入隊。2003年5月からイラクに派遣され1年間従軍しました。戦地で見た現実は悲惨で、彼は「戦争は人間性を破壊する」と訴えました。あるときアッシュの乗った軍用車がイラクの少女を轢き殺してしまいました。そのことを話すアッシュはとても辛そうで、うつむきながら話したのが僕には印象的でした。後日犠牲になった少女の家に謝罪に行ったとき、家の中からは母親の悲鳴のような泣き声が聞こえたそうです。後から日本人のジャーナリストの方が話してくれたんですが、アッシュにとってイラクでの経験を語ることは本当に辛いことで、できれば記憶を消し去ってしまいたいと思っている、と語ってくれました。
彼がそんなつらい体験を日本で語るのは理由があります。それは「戦争を放棄した日本の憲法9条こそ世界の希望」で、現在日本政府によって憲法改悪の企てがあることに危機感を持ち、日本人に「9条を守って欲しい」という思いからです。

アッシュの印象は、僕らと同世代のふつうの青年でとても明るく、僕のタトゥー「ARTICLE9」(憲法9条)を見て「NICE!TATTOO」と言った後、おどけた感じで笑ながら「ユーヤクザ?」と言いました。

講演会の後イラクの子のどもたちが書いた絵を見ている時、アッシュはうつむいて涙を流していた。その涙を、僕は忘れられない。

2003年彼は戦場へ行った。
日本の青年で軍隊に所属して戦場へ行った人はほとんどいない。
それは憲法9条があったからです。
もし憲法9条がなかったら、第2次世界大戦後の朝鮮戦争、ベトナム戦争、湾岸戦争などの戦争に日本人も参加していたでしょう。
憲法9条が僕たちを戦争に巻き込まれるのを守ってくれているのです。

僕たちはアッシュの涙を100%理解することは難しいと思います。なぜなら僕たちは戦場を知らないからです。それでも彼の苦しみを想像力を駆使して理解し、彼の苦しみを共有しようと努力することはできると思います。アッシュの涙だけではなく、少女を失った家族の涙、今まで人類が起こした戦争で流れた涙を、僕たちは理解し共有しなければいけない。そんな思いを新たにした講演会でした。

追記 僕はタトゥーを彫ろうと思ったとき龍を入れようと思っていました。それは何となく僕の守り神になってくれそうだったからです。熟慮した結果、憲法9条こそ僕の守り神だと思い「ARTICLE9」を彫りました。

21世紀こそ戦争を根絶する時代にするために僕たちにはやらなければいけないことがある。それは憲法9条を守り、そして活かしていくことだと思います。