美味しい料理はサイエンスであり、いい料理人はサイエン

ティストである。年末にこの事を実感させてくれたのが

ミシェラン2つ星、フグ料理喜太八であった。


年末恒例の同期会で6名で店は貸切。今年1月から予約

という幹事の熱意もすごかった。南海岸和田駅から迷い

ながら到着。しばらくフグ博物館を見学させてもらった。



現当主2代目北濱喜一氏は現在88歳でありながら毎日

調理場に立っている。その完璧な調理は全く年齢を感じ

させない素晴らしいもの。当主の親戚の店長も83歳。

いつ何があってもおかしくない状態だ。何とか間に合って

ラッキーだった。写真はフグ博物館内にある。




喜多八に戻って2階に案内される。

店長は83歳なので階段昇降できず。故に3代目就任予定

の北濱氏のお孫さん(38歳)が給仕。


骨煎餅、昆布、銀杏。骨は素焼きされている。

パリパリとした食感をフグの骨で味わうのは珍しい。



皮、胃、腹壁。


皮。梅肉和え。


腹壁の博多和え。腹壁を明太子で和えてある。


胃梅マヨ和え。


ヒレ酒。
私は普段お酒は飲まないが、私同様飲まない常連のU氏

が注文しているのを見て、急遽注文。濃厚ヒレスープ。



琥珀流し。フグ由来の煮凝りの中に皮、身、オクラ、金箔等

を入れたもの。具財が宙に浮いた状態になっている。

83歳店長の力作。3Dプリンターの要領で作るらしい。



福錦。白子の含め煮。炊けば溶けてしまう白子にどのように

味を付けるのか。一子相伝の手法らしいが、最近17年勤続

の3代目が制作過程を見ることを許されたらしい。良かった。


さえずり。フグの口から食道の部分。

わけぎとともに酢味噌和え。


てっさ。尾の近くの繊維と並行に引いた身。これはトロの

はがしと通じるものがある。すっと口の中で溶けて美味い。

堺で別注した包丁で身を引くらしい。身の湯引き。


背と腹の針を取った表皮。体側線上の表皮。

フグの皮は5層に分けて調理するらしい。包丁は役に立

たず、爪で剥すことも。3代目が担当しているらしい。




てっちりが運ばれてくる。


新鮮な泉州の野菜と。


たっぷりな身とあら。テンション上がるなあ。


調理のポイントはこの鍋。70年以上使われており、湯を

いれて炊くだけでフグ出汁がリアルにできるらしい。2代目

当主がこの店を継いだ時には、もう既に店にあったという

伝統のあるもの。夏季の休業中もこの鍋の手入れは欠か

さないらしい。京都のすっぽんの店、大市を連想させる。


3代目が丁寧に鍋に具財を入れていき、てっちりが完成。

この時のポイントは決して鍋を沸騰させない事。沸騰させ

るとアクが出るが、これが旨味たっぷりのコラーゲン。

従って火加減には細心の注意を払う。
ポン酢は日本マルテン醤油の醤油で作ったポン酢。



あまりに美味しいのであっと言う間に完食。
残った出汁で雑炊を作る。米は炊き立てのユメピリカ。



とてつもなく美味しい雑炊。


ここで冷たいお茶が出て火照った体を冷ます。

気が利くなあ。


デザートその1。イチゴは甘さだけでなく酸っぱさもないと

駄目と言うのが2代目当主の考え。


デザートその2。アイスクリームのリキュール掛け。


温かいほうじ茶で終了。




決まりきったコースメニューでは無く、フグ料理をゼロ

ベースで見直し、鯨料理で見られるさえずりや内臓。

おこぜ料理で見られる骨煎餅。鱧料理での煮凝り。

さらには鍋から出汁が出る大市の手法を取り入れ、

極めつけは、フグ白子の含め煮という一子相伝の

独自料理。


次元の違う料理の数々にただ感動。多古安や今は亡き

幸鶴にも何度か行ったが、ここが一番美味しいと思う。

新種のフグ4種を発見したサイエンティスト北濱氏の

フグ創作料理の数々。まさに今のうちに味わうべき料理。


最高に美味しかった。ごちそうさま。















喜太八ふぐ / 岸和田駅蛸地蔵駅
夜総合点★★★★ 4.2