少年院を見学して感じたこと | 御用聞き、世界を渡る

少年院を見学して感じたこと

ケニアでの私の配属先はマリンディという海沿いの街にある「リマンドホーム」という児童保護矯正施設です。


ちょっと普通ではなさそうな施設に配属になったにも関わらず、私には保護教育や矯正教育を学んだ経験もなければ、そのような施設に足を踏み入れたことすらありません。
果たしてそんな私に教官としての役割が務まるのか?
とりあえず、実際に矯正施設を見学して日本ではどのようなことが行われているか知りたいということで本日多摩少年院を見学させていただきました。


見学するにあたっても、当初、私のような日本で何かの役職を担っているわけでもない個人に施設を見学させていただけるのかという心配がありました。
しかし、電話で直接少年院に問い合わせ、事情をお話ししたところ快く受け入れてくださり、今日も丁寧な説明と施設内見学、質疑応答を(しかも、マンツーマンで!)してくださいました。


今日案内してくださった庶務課のSさん曰く、「多くの人に見ていただき、少年院がどのような場所か知ってほしい。1番怖いのは少年が出院した時に少年院にいたというラベルを張ってみられること」とのことでした。

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多摩少年院は主に16~20歳の少年を標準で1年弱収容し、生活指導や職業訓練、特別活動(クラブ活動や行事など)を行いながら矯正教育を行う施設です。
収容人数は160名前後。
少年をどのような授業や活動に参加させるかは担任が1人1人の特性を見ながら個別に考えるそうです。


見学してみての感想としては、「考えていたよりも特別な施設ではない」ということが分かり、「私にも何かできるのではないか」という気持ちになりました。
何人か少年たちが活動している様子も見ることができましたが、まったく普通の子と変わりませんでした。
地域の人たちに施設を開放したり、地域の少年を招いて剣道大会や盆踊り大会をやるなど地域交流が行われていることが知れたこともケニアでの活動のヒントになりそうです。


庶務課のSさんからは、「鎧を着てつっぱりながら入所してくる子どもたちも信頼関係を作れば接し方や振る舞いはふつうの子どもたちと変わらない。誰でもその環境だったらグレてしまうだろうなという環境で育ってきた子もいる。信頼関係を築くためには、少年たちが安心して生活できる環境を作ることが大切。そのために、上下関係やいじめなど1人1人が安心できない環境になっていないかどうかには注意を払っている」という話がありました。


私の前職である公文式でも「悪いのは子どもではない」という言葉があり、一見問題のある子どもたちも他の子どもたちと同じ自学自習の学習方法で伸ばすことができるという考え方や実践例があります。
安心できる環境をつくるというについては前回のブログで書いたPAの考え方も活かせるでしょう。


私のこれまでの経験と児童保護矯正施設でのこれからの活動が関連したものとして捉えられる実感が生まれたことが今日の1番の収穫です。

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以下、備忘録(ケニアでの活動から見えてきたことを修士論文にまとめるつもりでいます)として今日知ったことを公開できる範囲で書かせていただきます。
興味のある方はお読みください。

・少年院は国の施設。多摩少年院は日本で最初の矯正院であり建て替えをしたいが予算がない。
・少年院の収容人数は160名前後で横ばい。多摩少年院の定員は174名だが、平成20年の収容人数は184名。
「少子化の中でも少年院はいっぱい、いっぱいな状態が続いている」
・全国的に窃盗で少年院に入る子が4割と1番多い。
・行動傾向としては、「疎外感・愛情飢餓感が強い」「自己イメージが低い」「せつな的な生き方」「共感性・表現力・罪障感(悪いことを悪いと思う力)・自制力が希薄」
・担任がその子の特性に応じて個人別教育目標を3項目考える。
・基礎学力向上として毎月国数の学力テストを行っている。ドリル学習中心。とりあえず目指しているのは中学レベルの学力。
・「人の役に立つ→ありがとうと言われる→気持ちがいい」の経験を積ませるために老人ホームの掃除などにも行っている。
・現在力を入れていることとしては、「被害者の視点を取り入れた教育(少年たちにとってはできれば忘れたい被害者の存在だが忘れさせない)」「就労支援活動(出院後の進路の目途を立ててから出院させる)」「保護者に対する働きかけ(少年が少年院にいる時は保護者が落ち着ける時。保護者会などを行う。)」
・教育の効果として考えていることは「絆の認識(自分には支えてくれる人がいるんだという認識を少年が持てるように)」「自尊感情の高揚(自分を大事にできるように。Sさん「自分を大事にできれば他人も大事にできる」)」「具体的な目標(夢)の設定」「コミュニケーション能力の向上」
・再非行率は6%程。Sさん「再非行の成績が送られてくると担任は落ち込む」
・少年院の職員は法務教官(国家2種試験)
・30人の集団寮を6人の教官で見ている。
・ケニアでは貧しい子どもと、罪を犯した子どもを同じ施設に入れていることについて
 Sさん「貧しい子どもは衣食住をしっかりさせれば普通の生活が送れる。非行性の進んでいる子と同じ施設にいることで悪風感染することが懸念される」