児童相談所が犯した過ち 序 | 侑斗のブログ

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児童虐待をなくすために考える。
一人でも多くの人に知ってもらいたい
考えてもらいたい事  児童相談所の問題点
児童虐待を減らすために 児童相談所の組織改編を目指して
今 自分自身で何が出来るのかを考えるためのブログです。

今のネット社会に於いて児童相談所の事を検索すれば、児童相談所に対して
批判的な意見を持つ人が沢山いる事がわかるだろう。

それが児童相談所にとってどれほど悪影響なのか容易に想像できる。

そして 俺もまた 児童相談所が「おかしい」と思う一人だ。

では 何が悪影響なのか?

それは 子供を一時保護された親が このような情報に接した
場合に「児童相談所は悪い所」という先入観を持つからに他ならない。

この先入観によって児童相談所の親への対応は難しくなる。

「子供が一時保護されて薬漬けにされる」なんて情報に触れたら
なにがなんでも子供を取り戻したい そう思うのは当然である。
それらの情報の出所がどこであるか?とか、信憑性などを
精査できれば良いが、万人にそれは望めない。

情報に触れれば触れるほど 絶望感と児童相談所への不信感が募る。

児童相談所にとって何も良いことは無い。

さらに言及すれば一時保護された親にとっても悪影響だということだ。

そして それは子供達にとって不幸なことだ。



なぜ児童相談所はそのような批判をされるのか?

これが 単に根拠のない中傷なのか?

今回はその辺の話をしようかな・・・





何故このような事態になっているのか?

それには 一時保護のあり方を知る必要がある。

児童相談所を批判する人を批判するならば最低限理解しておくべきことだ。

それでは 厚生労働省の「児童相談所運営指針」及び
「児童虐待等に関する児童福祉法の適切な運用について」「子ども虐待対応の手引き」
を見てみよう。

児童相談所運営指針 
第5章 一時保護
第1節 一時保護の目的と性格
法第33条の規定に基づき児童相談所長又は都道府県知事等が必要と認める場合には、
子どもを一時保護所に一時保護し、又は警察署、福祉事務所、児童福祉施設、
里親その他児童福祉に深い理解と経験を有する適当な者(機関、法人、私人)に
一時保護を委託する(以下「委託一時保護」という。)ことができる。
一時保護は行政処分であり、保護者等に対する教示については、第4章第1節に示すところによる。

以下省略

と書いてある。
では、第4章第1節には何が書いてあるかと言うと

児童相談所運営指針
第1節 援助の種類
(1) 児童相談所が子どもや保護者等に対して行う援助には表-4に掲げるものがある。
  援助を行う場合には、子どもや保護者等に、その理由、方法等について十分説明し、
  子どもや保護者等の意見も聴き行う。


以下 (2)(3)(4)省略

次に
 
児童相談所運営指針 第5章 一時保護 第1節 一時保護の目的と性格

2. 一時保護の期間、援助の基本
(1) 一時保護は子どもの行動を制限するので、その期間は一時保護の目的を達成するために要する必要最小限の期間とする。

以下 (2)(3)省略

3.一時保護の強行性

(1) 一時保護は原則として子どもや保護者の同意を得て行う必要があるが、
  子どもをそのまま放置することが子どもの福祉を害すると認められる場合には、この限りでない。

以下 (2)~(7) 省略



次に「児童虐待等に関する児童福祉法の適切な運用について」


4 児童の一時保護等(法第33条関係)について

虐待等は児童の心身に重大な影響を与える行為であり、児童相談所の職員等の児童福
祉関係者において、虐待等を受けている児童やその家庭等の状況を早期に把握したうえ
で、必要に応じ児童相談所等の一時保護ないしは一時保護委託(以下、「一時保護等」
という。)を積極的に活用することにより、児童の迅速な保護が図られるよう万全を期
されたい。
なお、一時保護等に当たっては、特に以下の点に留意しつつ、児童相談所運営指針等
に従い、その適切な運用を期するとともに、その旨児童福祉施設等の一時保護受託者に
対する指導・連絡を徹底されたい。

(1) 一時保護等に当たってはできるだけ児童及び保護者等の同意を得て行うことが
望ましいが、虐待等の場合には保護者等の同意が得られないことも多く、この場合には
状況に応じ、引き続き保護者の理解を得る努力を行いつつ、並行して児童の一時保護等
を採るなど、児童の福祉を最優先した対応を図ること。また、一時保護等を採るに当た
っては、保護者等に対し、文書をもって通知し、併せて行政不服審査法第57条の規定
に基づき不服申立ての方法等について教示することを原則とするが、緊急を要する場合
などやむを得ない場合には、口頭で当該通知及び教示を行い、一時保護等を採った後、
速やかに文書にて当該通知及び教示を行うことも許されること。
また、例えば現に保護者等が児童に著しい身体的暴力を加えている場合など、児童の
保護の緊急性や保護者の違法行為の蓋然性の程度からみて警察の対応が相当と認められ
る時には、警察に対する事前協議を行い、これに基づく連携による児童の迅速な保護に
努めること。なお、警察において一時保護等を行う場合については、「警察が行う児童
の一時保護について」(昭和26年1月17日児発第12号厚生省児童局長通知)によら
れたい。

(2) 保護者等の同意が得られずに行った一時保護等について、保護者等が児童の弓1
き取りを求めてきた場合には、これを拒むこと。また、一時保護等を採った後の家庭環
境の改善状況等に鑑み、家庭等に戻すことが相当と考えられる場合であっても、一時保
護等の処分権者(都道府県知事又は児童相談所長)の解除を要件とし、一時保護部門の
長ないしは一時保護委託を受託した者の判断で家庭に戻すことのないよう徹底するこ
と。
なお、保護者等の強引な引き取りに対しては、必要に応じ、児童又は担当者に対する
保護者等の加害行為等に対して迅速な援助が得られるよう、警察に対する事前協議を行
い、これに基づく連携をとりつつ、毅然とした対応に努めること。

(3) 虐待等を受けている児童の一時保護等はあくまでも緊急避難的な措置である。
したがって、その期間が必要最小限のものとなるよう、速やかに施設入所措置等の必要
な措置を採ること。また、一時保護等の期間中においては、児童の心身の状態に特に留
意し、医師、保健婦、看護婦等との十分な連携を図ること。


全文読むのが面倒になってきたと思うが次に「子ども虐待対応の手引き」
ここが 具体的な説明がされている部分なので長くなるが・・・


第5章  一時保護

1. 一時保護の目的は何か
 一時保護の第一の目的は子どもの生命の安全を確保することである。
 単に生命の危険にとどまらず、現在の環境におくことが子どものウェルビーイング
 (子どもの権利の尊重・自己実現)にとって明らかに看過できないと判断されるときは、
 まず一時保護を行うべきである。
 一時保護を行い、子どもの安全を確保した方が、子どもへの危険を心配することなく
 虐待を行っている保護者への調査や指導を進めることができ、
 また、一時的に子どもから離れることで、保護者も落ち着くことができたり、
 援助を開始する動機付けにつながる場合もある。
 子どもの観察や意見聴取においても、一時保護による安全な生活環境下におくことで、
 より本質的な情報収集を行うことが期待できる。
 以上の目的から必要とされる場合は、まず一時保護を行い、
 虐待の事実・根拠はそれから立証するという方が子どもの最善の利益の確保につながりやすい。


2. 一時保護の速やかな実施                省略
3. 虐待が疑われる事例への対応の流れ           省略
4. リスクアセスメントシートによる一時保護の要否判断   省略

5. 職権による一時保護の留意点は何か
(1)  基本的留意事項
 職権による一時保護をするに当たって、まず留意すべきは、それが非常に強力な行政権限である
 という認識を踏まえて適切に運用しなければならない、ということである。
 児童福祉法においては、従来一時保護の期間は定められていなかったが、児童虐待防止法において、
 児童福祉法に基づく一時保護の期間を原則として2月に限ることとされた。
 もっとも、施設入所のように児童福祉法第27条第4項のような保護者の同意を要する旨の規定はなく
 (すなわち職権で実施できる)、(児童福祉法第27条の3の規定からして、子どもの行動の自由を制限できると解されるので)
 子どもの意思にも反して実施できる。関係者の意思に反して行う強制的な制度は、通常は裁判所の判断を必要とするが、
 児童福祉法の一時保護については裁判所の事前事後の許可も不要である。
 このような強力な行政権限を認めた制度は、諸外国の虐待に関する制度としても珍しく、日本にも類似の制度は見当たらない。

 このような強力な制度であるがゆえに、職権一時保護は虐待を受けている子どもの救出のためには非常に有効であり、
 必要な場合には積極的に活用することが期待されているのであるが、
 同時にあまりに強力であるがゆえに保護者の反発も大きいことは避けられない。
 これまではややもすると、保護者の反発を怖れるあまり、職権一時保護を控える傾向があったことは否定できないが
 (例えば、職権一時保護は警察からの身柄を伴った通告の場合に限る、という運用をしていた児童相談所もあった)、
 それは誤りであって、あくまでも子どもの保護を重視しつつ、具体的な運用に配慮する、という姿勢が重要である。
 子どもが保護者と離れて学校や保育所にいる時に保護することもできるが、できれば敷地外で保護する等の配慮が必要なこともあり、
 また保護者への告知も速やかに(同時である必要はないであろう)行う必要がある。

(2)  一時保護の期間
 従来、期間の定めがないことから、保護者は「いつまで保護されるのかわからず、児童相談所に聞いても答えてくれない」
 と反発することが多かった。
 また保護者の不安を緩和するとともに、子どもとその保護者を引き離すという強制力を伴う措置を行う際に人権に配慮する必要があった。
 このため、一時保護の具体的期間については、原則として2月という期間が設けられた。
 このような背景を踏まえ、児童相談所としても短期の目標を設定し、それを保護者に告知するような運用が望ましい。



6. 一時保護について子ども、保護者にどう説明するか
 一時保護の判断は、子ども自身の意思に反しても、あるいは保護者の同意が得られない場合にもこの処置は可能であるとされている。
 しかし、虐待事例が一時保護だけで解決することはまずなく、その後の保護者との関係を考えれば、
 当然同意を得るよう最大限の努力をすべきである。また、子ども自身も、親子分離の局面に立たされて明確に意思表示ができなかったり、
 同意しようとしない場合もあり、一時保護に当たって子どもおよび保護者にどう説明するかということは、
 その後の援助に大きな影響を及ぼす重要なポイントである。

(1)  子どもへの説明
[1]  子ども本人が、帰宅を拒否し保護を求めている場合
 子どもに対して虐待の事実関係や状況等を確認することはもちろんのことであるが、まず、子どもの話や言葉を十分に傾聴し、
 子どもに安心感を与えることが大切である。
 保護者の同意がなくても安全に生活できる場があることを伝え、一時保護所のパンフレットやアルバムなどを見せて具体的な情報を提供する。
 併設されている場合は、見学させてもよい。「少し親と離れて生活しながら、これからのことをいっしょに考えよう」などと話し、
 ひとりで問題に立ち向かうのではないということを伝え、不安な気持ちを少しでも取り除くような配慮が必要である。
 また、面会や引取りについても、子どもの意向を聞いて判断するということを説明し、児童相談所として「親には引き渡さない」という保証をする必要がある。

[2]  子ども本人が、家には帰りたくないが一時保護も躊躇している場合
 虐待を受けた子どもは、人間に対する不信感を抱いており、心を開いて本当の気持ちを表現できないことが多い。
 保護者の前では萎縮して保護者の意向にそった返事しかできないこともある。また、悪いのは自分だから仕方がないと思い込んでいたり、
 家を出ることで親から見捨てられるのではないかという不安から、自分からはなかなか判断できないでいるような場合もある。
 このような場合、子ども自身に決断を求めることは、保護者との分離を子ども自身が決定したという心理的負担を強いることになり、
 追い詰めてしまうことにもなりかねない。
 したがって、虐待の事実があり、保護者からの分離が必要と判断される事例で、子ども本人が一時保護を躊躇したり、拒否する場合は、
 児童相談所として「子どもの身の安全を確保するために、保護者には引き渡せない」という判断をしていることを伝える必要がある。
 「このまま家にいては、安心して生活できないと思う」「あなたが悪いから暴力を振るわれるのではない」などと話し、
 虐待を受けている子どもに対して、その原因が子ども自身にあるのではないということを分かりやすく説明する。
 その上で、[1]と同様に一時保護所について具体的な紹介をして、少しでも不安感の除去に努める。実際に見学などをして、
 自分より年少の子どもが生活しているのを見て安心する場合もある。
 いずれにせよ、子どもが同意している場合であっても、基本的には「あなたが帰りたくないと言うから保護する」のではなく、
 「子どもの最善の利益を守るために、児童相談所として保護者には引き渡せないという判断をした」という説明をすることが重要である。

[3]  子どもが一時保護を拒否している場合
 子どもに対し、児童相談所の考え方を分かりやすく説明し、家を離れて生活することの必要性を理解してもらうよう努める。
 自分の状況がある程度理解できても、年少の子どもは一人で外泊する経験も乏しく、特に夜間になると、保護者と離れていることへの不安などから、
 帰宅を求める言動が現れることが予測される。
 その際には、職員ができるだけ生活場面や遊びの場面での緊密な関わりを持ち、少しでも不安を除去し、
 子どもが安心して生活できることを感じるような対応が求められる。

(2)  保護者への説明
[1]  保護者自ら、子どもを預かってほしいと希望する場合
 「イライラして子どもを叩いてしまう」「このままでは殺してしまいそう」など、養育に疲れ、「預かってほしい」と、
 保護者自身が電話や相談をしてくる事例がある。
 このような場合は、子どもや保護者の心身の状態を見極め、必要であれば、速やかに一時保護を行う。保護者の言いなりになって、
 簡単に預かっていいのだろうかと躊躇して判断のタイミングを逸すると、実際に虐待につながってしまったり、
 その後の援助の展開が難しくなることもあるので、迅速に対応することが重要である。
 「子育てに疲れておられるようだから、とりあえずお預かりしましょう」「しばらく離れて体や気持ちを休めてください」などと伝え、
 保護者の大変な気持ちを受容する。
 ただし、現に重大な虐待が発生しているため、一時保護が必要と判断されるケースでは、保護者の意を汲んだ形での対応をしてしまうと、
 保護者が「もう大丈夫だから子どもを引き取らせて欲しい」と要求してきた際に、
 時期尚早であると思われても保護者の要求を拒む理由がなくなってしまう可能性がある。
 このような事態を避けるためには、保護者の気持ちを受容しつつも、保護者や子どもの状況等が改善されるまでは、
 引き渡すことは難しい旨明言するとともに、引き取れるようになるためには保護者として何をすべきか、
 児童相談所としてはどのような援助が可能であるのかをはっきり伝えることが重要である。

[2]  関係機関からの通告で、調査の結果により一時保護が必要と判断した場合
 「これからのことをじっくり考えるためには、いったんお子さんをお預かりして、いっしょに相談していきましょう」
 「しばらくこちらで子どもの気持ちを聴きながら、親御さんの気持ちも伝えていきたいと思います」
 「子どもさんにも育てにくいところがあるようですから、行動を観察したりいろいろな検査もしてみようと思いますが」などと、
 まずは、保護者の気持ちを酌み取りながら説明する。
 すでに援助の過程にあり、保護者との関係ができている場合は、その時の状況や保護者の心情を踏まえて、説明する。
 保護者が自分でも養育態度が不適切だとわかっているはずだと思って、そのことを指摘したりするとそれまでの援助関係が切れてしまい、
 子どもの保護ができなくなる。
 「子どもさんにも育てにくさがありそうですし、親御さんのやりかたとうまく噛み合っていないように思われます。
 少し離れてみて、お互いにこれからのことを考えてみる時期にきているように思います」
 「集団生活をすれば、子どもさんにとってもいろいろ考える機会になるかもしれませんよ」など、
 保護者に抵抗の少ない形で保護につなげられるように説得する。
 保護者は「どのくらいの期間、入所するのか?」「その後はどうなるのか?」など尋ねてくるので、
 「子どもの様子を観察して、どういう援助がよいかを検討するには、おおむね3週間ぐらいかかると思います」
 「その間に今後のことをいっしょに考えましょう」「面会についても、子どもの気持ちを聴きながら考えます」など、一応の見通しを伝えておく。
 保護者の中には、先の見通しが持てず、いつまで経っても子どもを返してもらえないのではないかとの不安から、一時保護に反対する場合も多い。
 この点に留意し、先の見通しを伝えておくことが肝要である。
 法的には同意を必要としないからといって、強引に保護をしてしまうと保護者とは敵対関係になってしまい、その後の援助が非常に困難になってしまう。
 したがって、保護者を説得することが基本になる。
 「児童相談所としては、あなたの意図がどうであれ、これは児童虐待に当たり、保護が必要と判断しています」などと、
 毅然とした態度で伝え、とにかく一定の期間は保護が必要であることを、保護者に理解してもらうよう説得する。
 しかし、それでも納得しない時は、児童相談所長は保護者の同意がなくとも、職権で一時保護ができること、
 この決定に不服がある場合は行政不服審査法に基づき不服申立をすることができることを伝え、一時保護する。
 また、他の関係機関ですでに関わりがあり、一時保護を勧められるような関係が持てている場合は、協力を依頼してもよい。
 しかし、そのことでその機関と保護者との援助関係が切れてしまう危惧がある場合は差し控えなければならない。
 保護者や家族の状況がよくわからない場合、あるいは保護者が同意しそうにないと思われる場合は、
 関係機関の協力を得て子どもの安全の確認を早急に行わなければならない。
 緊急に保護が必要と判断される場合は、いずれにしても、関係機関の協力を得て、先に子どもの安全を確保した上で、保護者に伝えるようにする。
 連絡が遅れると、「なぜ連絡をしなかったのか」と攻撃されて説明がより困難になることもあるので、できるだけ早く連絡することが望ましい。


7. 保護者への一時保護告知について
 一時保護は施設入所と異なり、保護者の意思は要件とはなっていない。すなわち児童相談所の職権で実施することができる。
 したがって、意思を確かめ、同意を求めた上で、一時保護を行うことが原則であるが、法的には保護者の意思を確かめる必要はない。
 他方で一時保護は行政処分として行政不服申立ての対象となり、保護者には不服申立権があるので、
 児童相談所としては、保護者に一時保護の事実を告知する必要がある。その場合には、一時保護所の具体的な所在地までも記載するのが原則である。
 (平成10年3月31日付児発第247号厚生省児童家庭局長通知「児童相談所運営指針の改定について」告知書面のひな型参照)
 他方で、実際問題として、職権一時保護をしたような時は、保護者も興奮しており、一時保護所から子どもを取り戻そうという気配を示すことも多い。
 取戻しの危険について言えば、一時保護所は福祉施設に比して閉鎖的な構造になっているところが多く、かつ公の施設であるという点で、
 保護者としても容易には取戻しに踏み切れない。しかし、小規模な一時保護所の場合には宿直体制も弱く、危険がないとは言えない。
 したがって、取り戻す危険が大きい時には、一時保護を決定した児童相談所所在地以外にある一時保護所に保護した上、
 告知事項から一時保護所の所在地を省略する、という扱いもありえよう。 
 また、遠方の福祉施設に一時保護委託をした上、同様に施設所在地を告知事項から省略する、という扱いも許されるであろう。
 一定の場合には具体的所在場所を告知しないことも許容されるべきとした判決も出ており、この判決は確定している
 (平成11年2月22日大阪地方裁判所第17民事部)。
  平成11年2月22日大阪地方裁判所第17民事部判決
 一時保護は児童を緊急に保護する必要性の観点から親権者の監護教育権を合理的限度で制限するものであるから、
 一時保護の原因となった事情や児童の意向その他の事情に鑑みて児童の福祉のためにその所在場所を知らせることが相当でないと判断される場合には、
 親権者に対して(児童)養護施設に一時保護委託をしている旨を告知するのみでその具体的所在場所を告知しないことも許容されるべきであり、
 それが適正手続ないし児童福祉法の精神に反するということはできない。

 以下省略


ここまで 読んで一時保護の目的が理解できた人はどれくらいいるだろうか?

児童相談所運営指針のなかにかいてある

2.一時保護の期間、援助の基本

(1) 一時保護は子どもの行動を制限するので、その期間は一時保護の目的を達成するために要する必要最小限の期間とする。

という表現と

一時保護の第一の目的は子どもの生命の安全を確保することである。

この文面 何か違和感を感じないだろうか?

一次保護はそれ自体が目的なのか、それとも目的の為の手段なのか?

その事を説明していると思われる「子ども虐待対応の手引き」を見ていこう。


子ども虐待対応の手引き

第1章 子ども虐待の援助に関する基本事項


2. 子ども虐待防止対策の基本的考え方
 1(2)で述べたように、子ども虐待は、子どもに対する最も重大な権利侵害であり、
この点は、児童虐待防止法の目的にも明示されている。そして、その取り組みを推進するに当たっては、
常に「子どもの最善の利益」への配慮を基本理念とし、平成16年児童虐待防止法改正法や
平成16年児童福祉法改正法の趣旨を踏まえ、以下の視点を基本に据えて施策を展開することが必要である。

(1)  発生予防から虐待を受けた子どもの自立に至るまでの切れ目のない支援
 子ども虐待防止対策の目標は、虐待という重大な権利侵害から子どもを守り、子どもが心身ともに健全に成長し、
 ひいては社会的自立に至るまでを支援することにある。
 早期発見・対応のみならず、発生予防から虐待を受けた子どもの自立に至るまでの各段階において、
 こうした「子どもの権利擁護」という理念に立脚した多様な関係機関による切れ目のない支援体制が必要である。
 この点に関連して、平成16年児童虐待防止法改正法において、国及び地方公共団体は、
 子ども虐待の発生予防から虐待を受けた子どもの自立の支援に至るまでの各段階において責務を有している旨が明記された。
 特に、子ども虐待の特性(家庭(地域)内で発生、虐待と認めない親が多いなど)にかんがみ、その解決に向け、
 親の意向や個人のプライバシ-には最大限配慮しつつも、幅広い関係機関が、積極的に親・子にアプロ-チする形での支援、
 すなわち、待ちの支援から要支援家庭への積極的なアプロ-チによる支援が必要である。

(2)  親子の再統合の促進への配慮その他の虐待を受けた子どもが良好な家庭的環境で生活するために
     必要な配慮をした、子どものみならず親を含めた家庭への支援
 子どもがその保護者から虐待を受けた場合、必要に応じて子どもを保護者から一時的に引き離すことがあるが、
 保護者が虐待の事実と真摯に向き合い、再び子どもとともに生活できるようになる(「親子の再統合」)のであれば、
 それは子どもの福祉にとって最も望ましい。

 しかしながら、深刻な虐待事例の中には、子どもが再び保護者と生活をともにすることが、
 子どもの福祉にとって必ずしも望ましいとは考えられない事例もある。このような場合まで親子の再統合を促進するものではない。
 いずれの場合であっても、子どもの健全育成には、良好な家庭的環境で生活することが望ましいものである。
 このため、良好な家庭的環境での生活の実現をめざし、幅広い関係機関が連携を図りつつ、
 子どもに対する支援はもとより親(里親を含む。)も含めた家族を支援していくことが必要である。
 この点については、平成16年児童虐待防止法改正法においても確認されており、虐待を行った保護者に対する指導については、
 親子の再統合への配慮その他の虐待を受けた子どもが良好な家庭的環境で生活するために必要な配慮の下に行われなければならないとされた。

(3)  虐待の発生予防・早期発見からその後の見守りやケア、親子の再統合の支援に至る関係機関の連携による支援
 虐待を受けている子どもの早期発見や適切な保護を図るためには、関係機関がその子ども等に関する情報や考え方を共有し、
 適切な連携の下で対応していくことが重要である。
 このため、平成16年児童福祉法改正法において、虐待を受けた子どもを始めとする要保護児童等に関し、
 関係者間で情報の交換と支援の協議を行う機関として「要保護児童対策地域協議会」を法的に位置づけるとともに、
 その運営の中核となる調整機関を置くことや、地域協議会の構成員に守秘義務を課すこととされた。
 各市町村において、要保護児童対策地域協議会を設置するなど、関係機関が適切な連携の下で、
 虐待の発生予防・早期発見からその後の見守りやケア、親子の再統合の支援に至る取り組みを進めていくことが期待されている。


3. 虐待事例への援助の特質
(1)  保護者の意に反する介入の必要性
 虐待を受けた子どもに対しては、単に保護するだけでなく、心理的治療が不可欠となる。しかも、虐待事例においては、
 保護者が心配して来所する一般の相談とは異なり、保護者は虐待の事実を認めなかったり、否定したり、気付いていなかったりすることも多く、
 相談や子どもへのサービスを実施しにくい。虐待の場合には、子どもの生命や健全な成長・発達、ウェルビーイングを守るため、
 保護者の求めがなくとも、あるいは保護者の意に反しても、介入していかなければならない場合が少なくない。

(2)  諸機関(専門家)の連携の必要性
 このように保護者の同意が得られにくいこと、そしてそのような家庭には多くの困難な要因(条件)が複雑に関与しているために、
 一機関、一専門家では対応が困難で、相互の連携が不可欠といえる。例えば、保護者が子どもの施設入所に同意しない場合には、
 弁護士の関与により法的に対応する必要も出てくる。家庭が貧困であったり、病人を抱えていたり、保護者に精神的な問題があれば、
 福祉事務所や保健所、医療機関等との連携が必要となろう。

(3)  児童相談所と施設、里親との連携の必要性
 虐待事例では、児童福祉司や心理職員による家庭訪問や通所での相談・指導を行う一般の相談とは異なり、
 親子分離をせざるをえない場合が少なくない。子どもを虐待環境から離し、「安心できる」あるいは「安全である」と感じられる
 乳児院・児童養護施設や里親のもとに保護しなければならない事例も多い。しかし、通常これら親子分離は、援助の一過程にしか過ぎず、
 援助の目標は、基本的には家庭復帰である。このため、施設入所や里親委託後の家庭環境調整や子ども、
 虐待を行った保護者への援助が不可欠であり、入所後の児童相談所と施設の連携が強く求められる。

(4)  虐待をする保護者のリスク
 虐待をする保護者は、子どもにとって、安心できる、情緒的に深いつながりのある大人ではない。
 したがって、施設入所後、子どもの家庭復帰は慎重にすすめなければならない。
 「何と言っても親子だから」、「保護者が引き取りを求めているから」と、いわゆる「親子不分離の原則」に基づき、性急に家庭復帰を目指すのは、
 しばしば危険である。同じように、施設入所後、保護者の面会や自宅への外泊も慎重に計画すべきである。
 安易な面会、外泊により、子どもが虐待を再体験することもあることに十分留意する必要がある。

(5)  在宅での援助を継続する場合
 必ず子どもの安全が確保できる体制を組むべきであり、保健師、民生・児童委員(主任児童委員)、保育所の保育士、
 幼稚園・小学校・中学校等の学校の教諭、民間団体等との連携を図る必要がある。
 このためには、要保護児童対策地域協議会など、関係機関等によるネットワークの構築が必要である。


4. 援助に際しての留意事項
 個々の子ども虐待は極めて多様であるだけでなく、福祉、保健、医療、教育、司法など多岐にわたる問題を抱え、
 かつその背景やメカニズムも複雑である。したがって、援助に際しては個別的特性を十分に酌み取り、
 個々の問題に応じた複合的対処をしなければならないが、以下の事項は基本的なこととして留意することが大切である。

(1)  迅速な対応
 子ども虐待は、事例によっては猶予を許さない緊急な対応が必要であることが少なくない。
 児童相談所や児童福祉施設などの職員は日常業務に追われ多忙を常としていると思われるが、
 虐待の発見や通告がなされたときは他の業務に先んじて対応を行うことを原則としなければならない。
 初期の対応が緩慢であったり手間取ることによって取り返しのつかない事態に至る事例が少なからず生じている。
 このため、児童虐待防止法では、「前2項(第8条第1項及び第2項)の児童の安全の確認、児童相談所への送致又は一時保護を行う者は、
 速やかにこれを行うよう努めなければならない」(児童虐待防止法第8条第3項)と規定されたことに留意すべきである。
 また、夜間や休日に虐待が発生することもよくあり得ることなので、夜間や休日における相談や通告、
 あるいは緊急保護の体制を整備し、関係機関や住民に周知するよう努めなければならない。

(2)  組織的な対応
 子ども虐待への援助は、担当者一人の判断で行うことを避けなければならない。
 発見や通告があれば、即刻受理会議を開いて調査やアプローチの方法、あるいは一定の評価を機関として行わなければならない。
 その後も情報の収集や機関連携、援助の方向などを組織的協議に則って進めていく必要がある。
 特に困難な保護者への対応、ポイントとなる調査や機関協議などは複数の職員で対応することを心がけねばならない。
 担当者一人に負担がかかり過ぎないように組織としてサポートしなければならないし、
 一視点による判断の弱点を組織としてカバーすることに留意しなければならない。
 また、総合的、多面的に問題をとらえ、より的確な評価や判断を行うためにも、個別事例の取扱いを含め都道府県等の
 児童福祉担当部局との連携を密にするほか、児童福祉審議会や要保護児童対策地域協議会などを積極的に活用するよう心がけるべきである。

(3)  機関連携による援助
 多様な複合的問題を抱える家族に対しては、一機関の自己完結的な援助で効果をあげることは困難である。
 したがって、問題に対する対応機能をもった機関との連携が援助にあたっての必須の条件になる。
 しかし、機関連携が効果を発揮するためにはお互いがそれぞれの立場と機能を十分に理解し、
 問題に対する認識と援助目標を共有化させる作業が必要である。
 そのためには、関係機関等の代表者による情報交換や個々の事例に則した担当者レベルによる個別ケース検討会議が必要となる。
 個別ケース検討会議では、相互の役割分担や援助のキーパーソンを定め、随時援助の評価や調整を行っていくことが大切になるが、
 会議に当たっては事前に機関内で十分に検討することや、必要に応じ機関としての決定権をもつ人の参加が重要になる。
 また、日ごろからの機関同士の協力関係の維持や職員の相互面識も大変重要な要素であるので、
 日常的なネットワークの構築や多職種研究会の取り組み等にも積極的に努力すべきである。

(4)  子どもの安全確保の優先
 我が国の制度においては、児童相談所が介入・保護の役割と後の指導・治療の役割を担うため双方のバランスが難しく、
 できれば保護者と摩擦を起こさないことに注意が注がれることになりがちである。
 しかし、個々の子どもにとっては安全確保こそが最優先課題であることを常に意識しておかなければならない。
 保護者との関係性に配慮が行き過ぎることによって介入や保護の判断が鈍り、
 結果として子どもが犠牲になってしまう事例が少なからず生じていることを援助に関わる者は十分、肝に銘じるべきである。
 関係者との協議や要保護児童対策地域協議会においても、
 危険性を最も懸念している人の判断に立った上で援助を展開していくことを原則とすべきである。
 また、保護者に対し一貫性のある毅然たる対応を採った結果、
 後に保護者との良好な信頼関係が形成されるケースも多いとの指摘があることにも留意する必要がある。

(5)  家族の構造的問題としての把握
 子ども虐待が生じる家族は、保護者の性格、経済、就労、夫婦関係、住居、近隣関係、医療的課題、子どもの特性等々、
 実に多様な問題が複合、連鎖的に作用し、構造的背景を伴っているという理解が大切である。
 したがって、単なる一時的な助言や注意、あるいは経過観察だけでは改善が望みにくいということを常に意識しておかなければならない。
 放置すれば循環的に事態が悪化・膠着化するのが通常であり、積極的介入型の援助を展開していくことが重要との認識が必要である。
 また、家族全体としての問題やメカニズムの把握の視点と、トータルな家族に対する援助が必要不可欠である。

(6)  保護者への援助
 虐待への対応において、これまでは、まず子どもの安全の確保、保護を中心とした対応が進められてきた。そのことは当然のこととして、
 虐待を行った者に対する対応も今後重要となる分野である。援助に際しては、在宅にせよ、親子分離にせよ、
 子どもと保護者の双方の自己実現への支援という観点も踏まえ、適切な親子関係を基本とする親子の再統合
 その他の良好な家庭的環境での生活が援助の際の究極の目標であり、その目標に沿った援助を進めることが必要である。

(7)  基本としてのカウンセリングマインド
 介入と保護とは一見矛盾するが、保護者も往々にして虐待の被害者であったり、様々な困難に直面している者であることが多いので、
 できるかぎり保護者の心情や背景を酌み取った面接や対応に心がけるべきである。
 その意味で保護者のニーズに沿う介入や援助を相手の特性や状況に応じて種々工夫し、
 相手にとってもメリットのある手立てや納得のいく方法をいろいろな角度から検討・吟味すべきである。
 しかし、その効果と全体的な虐待の状況、危険性、家族や保護者の特性などを総合的に勘案・評価し、
 受容的アプローチと介入型アプローチ、行政権限・司法的介入の手法選択を、極力早期に決断すべきである。

(8)  親権の制限と権限の行使
 行政権限による一時保護や家庭裁判所への審判申立てなどの手法は、何らかの形で親権の制限を伴うものであり、
 保護者との信頼関係に基づいて援助活動を展開する従来のソーシャルワークの基本から言えば違和感を感じることがあるかもしれないが、
 子ども虐待の援助においては必要不可欠な援助手法である。特に児童福祉法において唯一法的権限を与えられている児童相談所は、
 他の機関では代替できない権限を持った機関であることを強く認識し、権限発動の社会的使命を担っているとの自覚が必要である。
 したがって、状況に応じた速やかな決断と実行が求められることになるが、早い段階で保護者に仕組み
 (保護者と子どもや機関の意見が異なれば裁判所の判断を仰がなければならない)を伝え、
 かつ裁判所へ審判を申し立てることが事態の打開につながり、子どもにとって望ましい支援につながる場合があることや、
 後のソーシャルワーク関係回復にも良い結果をもたらす場合が多いことを認識すべきである。




長くなったので 次回に続く