こどもと、生きていくための、本。 あの、チェルノブイリは今どうなっているのだろう?そして、この福島はどうなるのだろう?


そんな疑問を抱えて、借りてきたのがこの本です。著者はウクライナ系アメリカ人。チェルノブイリの原発事故を知り、いてもたってもいられなくなり、仕事を辞め、「チェルノブイリマニア」となって今も情報を探し続けているそうです。


自然というものは、人間が思うほど「やわ」ではありません。しかし、目に見えない放射能の、被害を見ることも難しいものです。

事故後、チェルノブイリ周辺では、人間がいなくなったことにより、自然がみるみる広がっていきました。森は何世紀も前の姿に戻ったと著者は言います。今では野生動物のパラダイスと呼べるほどで、絶滅危惧種の動物も確認されるようになっています。


もちろん全てを一括りに論じることはできません。放射能が蓄積し、伸び方が歪んだ植物もあります。しかしそれでも生え続け、増え続けているとのことです。放射能があることを知っているのは人間だけなんですよね・・・。


意外なのはそれだけではありません。放射能と聞くと、生物に深刻なダメージを与えるという印象がありますが、これまでのところ奇形の動物は見つかっていないそうです。事故で遺伝子に影響を受けた動物は、その遺伝子を子孫に引き継ぐ前に死に、あるいは生まれたとしてもすぐに死んで、他の野生動物に跡形もなく食べられているということが考えられます。


チェルノブイリは、草木一本生えない不毛の土地になったのではなく、人間の知りえないことが進行する土地になったのでした。


人間が「放射能を知っている」とは言っても、手元の測定器を頼りにしているだけのことです。そういうものを作り出してしまったのも、また人間なんですよね。割り切れない、後味の悪さが残る本でした。息子は表紙を見て、「シカさんだ~!」と喜んでいましたが・・・。


福島の原発の周りはこれからどうなっていくのでしょうか?10年20年、あるいは100年単位で考える力が欲しいものです。