No.68 第8章 法隆寺の玉虫厨子の謎を解く | 「聖徳太子はいなかった」という嘘

No.68 第8章 法隆寺の玉虫厨子の謎を解く

●かごめ歌は、玉虫厨子の歌だったのか?(1)


 古代探偵による玉虫厨子(たまむしのずし)の説明も、この絵で最後になる。今まで7枚の絵を見てきた。これが8枚目の最後の絵だ。


「この絵が最後になったね。下段の、うしろの正面の絵だ。


ネット小説 桃太郎は誰だったのか                         ――聖徳太子のダ・ヴィンチ・コード-法隆寺の玉虫厨子の須弥座背面


 ここにもC型モチーフが使われている。この絵は、須弥山(しゅみさん)をあらわしているらしい。須弥山というのは、インドから見たヒマラヤ山脈ではないか、という話だ。


 模写(もしゃ)を見たほうがわかりやすいよ。


ネット小説 桃太郎は誰だったのか                         ――聖徳太子のダ・ヴィンチ・コード-法隆寺の玉虫厨子のうしろの正面


 捨身飼虎(しゃしんしこ)の絵と同じC型モチーフが使われている。やっぱり骨を強調したいのかな?」


「先生、いま、うしろの正面と、言いましたね」


「うん、言った」


「うしろの正面だあれ? という歌がありましたね。あれと関係ないですか」


「童謡のかごめ歌だろ。まさか、そんなことはないだろう。でも、ちょっと歌ってごらん」


「かごめ、かごめ、籠(かご)の中の鳥は、いついつ出やる。夜明けの晩に、鶴と亀がすべった。うしろの正面、だあれ?」


「だれでも知っている歌だ。これが、玉虫厨子と関係あるっていうのか? 面白いことをいう娘だ。


 でも、ものは試し、ちょっと試してみるか。山背大兄王と関係があるのじゃないかという前提で、推理を進めてみよう。


 2人で、ブレーンストーミングというアイデア発想法をやってみよう。脳の嵐という名前だ。企業で、商品開発のためによくやってる。


 思いついたことを自由にしゃべっていって、いいアイデアにたどり着くという方法だ。では、やってみるぞ。桃ちゃん、君からどうぞ」


「私からですか? いいですよ。では、もう1度、歌ってみますね。


 かごめ、かごめ、籠の中の鳥は、いついつ出やる。夜明けの晩に、鶴と亀がすべった。うしろの正面、だあれ?


 うしろの正面、というのは、この絵を示しています。


 「誰?」というのは、ある人物が隠れているからです。それを、当ててごらん、という意味です。ゲームですね。

 山背大兄王(やましろのおおえのみこ)が隠されていれば、いいのですが……うーん……山背大兄王の名前は「背」という漢字が使われています。


 「背」という漢字の意味は何でしょうか? 「背中」の意味ですが、「うしろ」とも読めます。


 だから「うしろ」は山背大兄王なんです……どうですか、先生」


「ほー、山背の「背」の字を「うしろ」と読むわけか。面白いことを考えるね。これは、理屈にあってる。いいね、僕は、こういうの好きだね。


 そうすると、かごめ歌の最後で、「うしろの正面だーれ?」って聞かれると、「それは山背大兄王です」と答えるんだな。筋は通っているな……しかし、筋が通りすぎてるぞ、これは……うーん」


「先生、そんなに、うなってないで、次は先生の番よ。難しくなかったわ。簡単だったわ。さあ、どうぞ」


「やってみようか……籠(かご)の中にいる鳥は、鶴と亀なんだな。亀は鳥じゃないな。おかしいぞ。でも、まあ、いいや……鶴と亀がいつ出てくるか待っているわけだ。


 鳥かごは、昔だったら木か竹で編んでいるだろう、木を組んで作ってある籠(かご)か……あったぞ、そんな籠が。ここは法隆寺だ。五重塔がある。あれって籠にみえないかな? 塔は、木を縦横に組んで作っている。籠と見なしてもよいだろう。


……塔といえば、山背大兄王は、法隆寺の塔に入って、そこで首つりをしたらしいので、太子一族が塔の中に籠もった(こもった)のを、「籠の中の鳥は、いついつ出やる」と言っているのかも。


……「籠(かご)」というのは、動詞にすると、「籠もる(こもる)」になる。立て籠もるだ。だから、塔の中に立て籠もったのを、籠の中の鳥と言っているのかもしれないな。どうだい、今の論理も筋が通っているだろう」


「そうですね。それに「出やる」というのは、京都弁で言うと、「出はる」という尊敬語よね、たぶん。

 だったら皇子と王たちには尊敬語をつかって当然ね。これで、「籠の中の鳥は、いついつ出やる」まで意味がわかってきたわ。


 それから、蘇我入鹿の兵が、山背大兄王が入った塔を囲んだ時に「囲め、囲め」と言ったと思います。兵隊がとり囲んで、最初は「かこめ、かこめ」だったのが、すぐ後に「かご」がでてくるので、にごって「かごめ、かごめ」になったんだわ」


「冴えているね。すごいね。でも論理的だ。冴えている上に論理的というのが、すごい。さあ、どんどんいこう」


「あっ、「とり囲む」は、「鳥かこむ」かもしれませんね」


「面白いな……」


「残りは、「夜明けの晩に鶴と亀がすべった」だけね。これを上手に解けたら、千年の謎が解けたことになるわ」


「ちがうよ、千年以上だ。1300年の謎だ」


「夜明けの晩というのは、もうすぐ夜が明けてくる朝がた近くの時間ね。

 もうすぐ朝になるぞ、攻めてくる前に最後の決断をしなくてはいけない……。でも「鶴と亀がすべった」が、わからないわ」


「有名な柳田国男さんの本では、ある地方では鶴と亀じゃなく、「つるつる、すべった」と歌っているって、そう書いてあったな」


「鶴、鶴、すべった……ね、じゃ、それで、やってみましょう。鶴鶴のほうが、「籠の鳥」だから、ふさわしいわね……あっ……わ・か・っ・た・わ……」


「わかったのか、さあ言ってごらん」


「山背大兄王と一族は、合計23人が、イスの上に乗りました。


 イスに乗ってから、塔の中の天井の梁(はり)に紐(ひも)をかけて……紐を結んで輪を作り、首を輪の中に入れました。


 それから、イスの上で、ツルっ、ツルっと、滑り(すべり)ました。イスは倒れて、首が輪の中にしまっていきます。


 全員で首を吊って死にました。


てるてる坊主です。てるてる坊主が23個です。


 鶴、鶴というのは、1つ目の鶴は、ツルっと滑るという意味です。


 2つ目の鶴は、首を吊るという意味です……可愛そう(かわいそう)、可愛そうだし、ひどすぎるわ」


「確かに、すさまじいな。一体、誰が、かごめ歌を作ったんだろう。恐ろしい歌だ。よっぽど頭のいい人なんだな。そして、それを子供たちに普及させた。おそろしい才能だ」


 桃ちゃんは自分で正解を出したのに、だいぶショックを受けたみたいだった。桃ちゃんが、ひと言ポツリと言った。


「ひどすぎるわ」



注 玉虫厨子の、下段のうしろの正面図は、『国宝への旅第 20巻』NHKから引用した。模写図は『法隆寺の至宝 第6巻』小学館から引用した。




ここを

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