僕が日本酒の世界に浸かるようになったのは、去年会津のお酒めぐりを友人とやったのが契機になっているんですよね。
『飛露喜』などといった銘酒にその真髄を見て、以降は独自に色々な日本酒を飲むようになり……
ですが、そのなかでも特に影響が大きかったお酒のひとつは『飛露喜』もそうですが、今回の『会津中将』もそのひとつです。
アルコール分 15度
精米歩合 55%
日本酒度 +2
酸度 1.5
会津中将とは、江戸時代前期の会津藩において名君と謳われた保科正之の通称ですね。会津中将を表す左近衛権中将の位はのちの会津松平家にも受け継がれ、戊辰戦争で佐幕派として戦った最後の藩主松平容保の代まで藩主のことを指すものでもありました。
保科正之は世界的にも珍しい落胤――高貴な出自の者の隠し子――であることが正式に証明された人物でしたっけ。2代将軍徳川秀忠の落胤ということで。
政治家としては勿論優秀で、末期養子の禁の緩和や殉死の禁止も彼の政策によるもの。玉川上水を開き、明暦の大火でも救助に貢献するなどその活躍の数たるや枚挙にいとまがありません。
徳川幕府の文治政治の基礎を固め、合理的な政策の数々で以後徳川幕府250年の安寧を約束させた日本史上でも希に見るスーパー官僚。兄である三代将軍徳川家光の最大の功績はこの極めて優秀な弟である保科正之を重用したことだと僕は思うほどです。
そして、『会津中将』を醸す鶴乃江酒造様は、会津御用達頭取を勤めていた永宝屋一族による蔵元です。『永寳屋』の銘柄はここに由来していますね。蔵元の名前も鶴ヶ城と猪苗代湖のことを指します。
『会津中将』の銘酒は、すべて会津産の原材料で造られているとのこと。蔵元の由緒も含め、まさにその名の如く会津の誇りを背負っていると言っていいでしょう。
さて、飲んでみます。
最後は辛味でスッキリとキレていくタイプながら、飲み進めるごとにフィギュア世界選手権レベルの演技が口のなかで美しくステップシークエンスを舞うが如し。
そう、これだよこれ!この表面ツルッツルなクリアネス。去年『会津中将』飲んだとき、この透明感と滑らかさに虜となったんだわ。そうだそうだ。
去年はこれを白ワインのようと形容してはいましたが、冷静に考えるとワインほど渋味があるわけでも無いですからね。甘味と辛味と酸味による三次元的な球体型の立体構造ですし。
夢の香って芳醇なタイプだったはずなのに、作り手次第ではここまでクリアになるんだなぁ、と感嘆するのみ。
つい飲みすぎてしまうなぁ。でもそれだけ完成度は高いと言えます。淡麗系速醸日本酒の理想像は間違いなくこれだよこれ!
でも、よしんばこの『会津中将』の山廃とかあったらどうなるんだろ……今年は鶴乃江酒造様のお酒も注目してみますかね。