今回は、株式会社せんきん様の『仙禽』です。




 『仙禽』は居酒屋で飲んだことがありますが、家飲みは初となります。
 個人的に注目している銘柄のひとつで、毎回々々『仙禽』は飲むたびに驚かされます。以前飲んだのは初しぼりの季節のものでしたが、とんでもない切れ味の酸味に参るしか無かったですからね。
 
 そして、今回は『ナチュール』と呼ばれるものを購入しました。
 

 酒米をドメーヌ化している時点で本気なのはうかがえますが……え?
 百歩譲って「超古代製法」や「木桶仕込み」は拘りの製法なんだなと見ることはできますけど、酵母無添加?精米歩合90%以上??
 
 「酵母に頼った現代の酒造りに対するアンチテーゼ(裏ラベル)」
 とはまた強く出てるなぁ。とんでもないものを造ろうとしているに違いないな。

 
 飲まなきゃ分からんよね。飲んでみます。 
 上立ち香はフルーティながらも、飲んだ瞬間、時が止まりました。
 そして体の奥底から、泡沫夢幻の如くに味が湧いてくる感じ。
 それはブドウのようでもありますが、リンゴのようでもあり、カプロン系の味わいと言うべきか。同時に響くのはヴェールのように全体を纏う米の旨味。これを基点として酸味が放射状に駆け巡り、百花繚乱の複雑味が五臓六腑に染み渡ります。
 しかし全体のストラクチャーは堅実で、余韻はスッキリしているのです。
 
 むむむ、益々わけがわからない。
 製法とか如何にもアヴァンギャルドなのに、何故にこうも飲みやすく、取っつきやすい優等生的な味わいなのか。
 『新政』のようにキッチュ化した日本酒業界にモノ申すかのようなものではなく、革新的ながらも伝統を重んじる『新政』のようなお酒さえも包括して型に嵌まることを良しとしない姿勢が滲み出ているが、いざ飲んでみるときちんとまとまった無駄のない味わい。
 この徹底した構成主義、あたかもロシアアヴァンギャルド芸術の如しだなぁ。
 
 
 ロシアアヴァンギャルドから見るロシア革命の歴史的・思想的な意義を論ずるのはジャンルが異なるので割愛しますがまぁ喩えということでひとつ。
 保守的かつ伝統的なあり方も大事ですが、ある程度の革命は必要なのかもしれませんけどね。時代に合わせた作品の在り方ってのがありますから。
 
 

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