今回のお酒は『七本鎗』(冨田酒造)
 滋賀県長浜市(旧木之本町)のお酒です。


 
 僕は大学生のころ考古学を専攻しており、長期休暇の時期には長浜市で発掘に従事していました。
 僕が発掘していたのは戦国時代の遺構ですね。考古学と言うと縄文~弥生時代の遺跡や古墳を発掘するイメージがありますが、考古学はあらゆる時代の遺跡や遺構を研究します。戦国時代なら城廓や館跡を発掘することがありますが、これもジャンルは考古学なのです。
 戦国時代の遺構では古瀬戸に明や李氏朝鮮からの磁器が見つかるものだったり。
 
 なお、長浜は戦国ロマンの詰まった地です。浅井家の本拠地である小谷城があり、姉川の合戦の舞台でもあり、石田三成の生まれ故郷であり、秀吉が初めて城を持った地であり、秀吉や山内一豊らが城主だった長浜城があり、堺と並ぶ鉄砲の産地である国友の所在地であり、そして賤ケ岳の合戦があった地でもあります。

 実は去年も長浜に行きまして……



 黒壁スクエアのような観光スポットもありますし



 夕陽も綺麗なところです。


 そんな長浜の地で合宿していたころ、みんなで飲もうと大学の先輩が持ってきてくれたのがこの『七本鎗』。
 そのころ僕はまだ20歳ちょっと過ぎくらいであり、『七本鎗』は僕が生まれて初めて飲んだ日本酒でもあります。それゆえ特別な思い入れのあるお酒です。
 ラベルは芸術家の北大路魯山人の篆刻から。美食家としても有名な魯山人は長浜に滞在していた時期があり、『七本鎗』を愛飲していたことでも知られています。美食家のお墨付きということですかね。
 銘の由来は賤ケ岳の七本槍からです。賤ケ岳の合戦のときに武勲をあげた秀吉の子飼いの武将7名のことであり、糟屋武則、片桐且元、加藤清正、加藤嘉明、平野長泰、福島正則、脇坂安治です。
 「槍」ではなく「鎗」なのは、調べてみたところ酒の入れる器のことも指しているからだとか。そういうダブルミーニングなんですかね。




 黒壁スクエアに直営店がありまして、こちらの『純米吟醸 長濱』(写真左)も飲んでみましたがとても美味しかったです。鮒寿司やえび豆と合わせて湖北の味を堪能しました。

 では話を戻しましょうか。





 『七本鎗』はこのキャップの紋章がかっこいいんですよねぇ。




アルコール分 17度
酒米 滋賀県産玉栄100%使用
精米歩合 麹米 玉栄60%精米
     掛米 玉栄60%精米
酵母 協会1401号
製造年数 2016年12月

 玉栄という酒米は滋賀県を代表する酒造好適米のひとつですね。固めの辛口になるのが特徴とか。
 というわけで飲んでみます。 
 
 やっぱりええポン酒やんすなぁ(似非江州弁)
 生原酒によくあるセメ○インのような香りは控えめ。すっきりとした鋭く入ってくる雑味のない辛口。梨のようなニュアンスもあります。
 17度の度数にも関わらず非常に飲みやすいです。四合瓶が一瞬で空に……こりゃ危ないわ((゚□゚;))
 でもこのお酒、やっぱり槍だ。
 この鋭くも野太い辛口……槍を構えて敵陣に向かう侍そのものだ。そして油断してると貫かれてしまう。
 武功を立てることを「槍働き」といい、戦いの口火を切ることを「一番槍」といいます。槍というのは戦国の足軽らの主武装であり、戦場で闘う者の象徴でもあるのです。
 ……ああそうだ。このお酒は一番槍なんだよな。28BYにおける初しぼりだもんなぁ。
 
 ブルゴーニュのボジョレー地区のガメイを使った初物のワインが解禁日になるとやたら騒ぐ問屋も多いですけれども、一番早くやってきた初物だから有り難がるんですよね。というか、「一番早く」に拘るのは昔も今も日本人は変わらないのかなって。
 
 そういや僕も仕事じゃノルマを一番早くに終わらせたいと躍起になることあるなぁ……
 そう思う時点で大学にいたころとはだいぶ違いますけれども、また長浜行きたいなぁ。

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