「TPPは中国包囲網だ」という妄言は、安倍信者の間に意外と根強く蔓延っている。
 
“TPPは世界最先端の条約であり、今後の世界標準を先導する協定内容だ。特に知財管理が厳しいから、中国は逆立ちしても入れない”というのが中国包囲網論者の言い草だ。
 
そんな彼らの梯子を見事に外したのは、当の安倍ちゃん自身であり、下記の記事のとおり、中国のTPP加盟を大歓迎している。
 
『中国のTPP参加「歓迎」 答弁書で条件付き容認』(2016/11/4 日経新聞)
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDE04H06_U6A101C1PP8000/
「政府は4日の持ち回り閣議で、環太平洋経済連携協定(TPP)を巡り、中国が協定の求める高い水準を満たす用意があることを示し、正式に参加表明すれば「歓迎したい」とする答弁書を決定した」
 
中国包囲網どころか、中国へ摺り寄る気満々だ。
 
そもそも、知財管理がいい加減なくらいでTPPに加盟できないと考えるのは、大甘のドシロウトでしかない。
 
TPP加盟国には、ベトナム、インドネシア、ペルー、メキシコといった“非法治国家”がゴロゴロあり、公務員の汚職や朝令暮改の法運用などといった問題が後を絶たない。
 
トランスペアレンシー・インターナショナル(TI)が1995年以来毎年公開している「腐敗認識指数」という、公務員と政治家がどの程度腐敗していると認識されるか、その度合を国際比較し、国別にランキングした調査がある。
 
この腐敗認識指数ランキングでは、ペルー88位、インドネシア88位、メキシコ95位、ベトナム112位(ちなみに日本は18位)であり、何と、知財管理がザルだらけの腐敗帝国「中国(83位)」よりも、さらにランクが下という結果である。
 
オメデタイ中国包囲網論者の言い分が本当なら、ベトナムやメキシコのような如何わしい国はTPPに加盟できないはずだが??
 
東南アジア辺りの如何わしい国は、いかなる貿易協定で縛ろうとしても、現実には効力を発揮できそうにない。
なにせ、法律とか契約、協定のような約束事、信義則という概念すら存在しないから、律儀に法律や協定を守ろうとする日本企業が一方的にリスクを抱えることになるだろう。
 
『インドネシアの民事訴訟 その危険性と対応策』
(西村あさひ法律事務所 弁護士・ニューヨーク州弁護士 宇野 伸太郎)
http://judiciary.asahi.com/outlook/2016031500001.html
「インドネシアの裁判所には汚職が多いと言われている。2013年にはインドネシアの裁判官のトップである憲法裁判所長官(日本でいう最高裁判所長官に当たる)が収賄罪で訴追され、終身刑の判決を受けるなど、裁判官が収賄で逮捕されるというニュースは珍しくない。どの程度汚職が蔓延しているのか統計的なデータがあるわけではないが、インドネシアの弁護士に聞けば、「賄賂には請求金額に応じた相場がある」「訴訟の途中で裁判官が身につけているものが急に豪華になった」といった話がたくさん出てくる。
また、裁判所に汚職が蔓延しているということは、贈賄する側の弁護士も存在するわけであり、アメリカのFCPAなど外国公務員贈賄規制との関係でも、インドネシアで訴訟弁護士を起用する場合は、贈賄を行うような弁護士かどうかを事前にチェックすることが肝要である。」
 
役人どころか、裁判官トップが汚職で逮捕されるような非法治国家との完全なる自由貿易なんてあり得ない。
おまけに、味方であるはずの弁護士ですら汚職塗れという実態だから、クライアントを裏切る利益相反行為など朝飯前だろう。
 
東南アジアの賄賂文化は社会のあちこちに太く根を張っている。
 
『東南アジアのわいろ文化』
http://pinoyintern.hatenablog.com/entry/2015/10/15/101606
「ベトナム人実習生事業でも同じだ。推薦された候補者を採用しようとするとなぜか出国前の健康診断で引っかかることがある。送り出し機関に通常候補者が支払うべきわいろをわたしていないからだ。」
 
TPPを推進派の田舎者が、「アジアの内需を取り込むはずが、現地の盗人公務員に資産を取り込まれて敗走する」という失笑ものの未来予想図が目に浮かぶ。