ぼっかけ裏話 | 神戸長田鉄板の鬼~燃えるそばめし魂~B級グルメ王~

ぼっかけ裏話

現在長田の町を歩けば、多くのお好み焼きやさんなどで「ぼっかけ」の旗がなびいている。

このぼっかけについて

私の店でもぼっかけというのはなんですかというのをよくきかれる。

結構メジャーになった言葉だと思っているが、まだ知らない方は多数おられるようなので解説する。


 ぼっかけとは 牛スジ肉とコンニャクを甘辛く煮込んだもので、別名スジコンともいう。

すなわち、ぼっかけはスジコンであり、

長田区では、これを主にうどんに、ぼっかけて(ぶっかけて)食べることから

いわゆる「ぼっかけうどん」がメジャーなものとしてあった。


このぼっかけは、長年、長田区ではお好み焼き店の人気トッピングとしてメジャー中のメジャーであるわけだが

実は長田では地の長田の人間の中で「ぼっかけ」などとはいわず単に「スジ」と呼ぶのが本流である。


 つまり「ぼっかけお好み」ではなく「スジのお好み」というのが

正しい言い方である。なぜなら、お好み焼きに、スジコンを「入れる」事はするが「ぼっかけ」ることはしないからである。


 では、なぜ、「ぼっかけ」なのか。長田区民でありながら、しかも生業としてお好み焼きやを営んでながら

 そのあたりの成り立ちが私自身いまいちわからなかった。

震災後、復興から立ち上がる足がかりとしてこの「ぼっかけ」という言葉が長田を急激に席巻し

お好み焼きだけでなく、コロッケやパンやカレーにまで大々的に入れられるようになった。当時は漠然と

 なんでぼっかけをこんなに前面に押し出そうとしているのかがわからなかった。ま、長田の名物を全国に発信していこうという新たな試みなのかなくらいにしか思わなかった。

何かの見えざる力がそこにはあるのだろうかとは思ったが、その因果はわからなかった。

いつからお好み焼きのスジはぼっかけになったのか


しかし先日、このぼっかけの旗を無償提供してくれている、ながたTMOさんの方とお話しする機会があり、

この謎の一つがついに解けた。


 漫才師の和泉修氏か誰かが出ている、とあるテレビ番組で、神戸の商店街の食べ物で対決する番組が企画されたとき、商店街の名物として出されたのが、このスジのお好み焼だったそうだ。

 その際、スジのお好み焼といってもテレビの画的にインパクトがないので、局のほうからなんかないかと促されたときに、長田のうどん屋で使ってた「ぼっかけ」という言葉を苦肉の策で使ったことがきっかけとなった。このとき長田の商店街の「ぼっかけ」は勝ってしまった。これについて、もしコレを見た視聴者の人たちが「ぼっかけお好み」なるものを長田のお好み焼店に来て「ぼっかけお好み焼」といっても地元の人は?となるだろう。


 コレを受けて放映後の反響を受け止める受け皿として

「ぼっかけ」というキーワードの言い方を、地元に普及するため、当時から震災後の長田の商店の活性化を推進していたTMOさんが、ぼっかけ旗を無償配布し、お好み焼やさんだけでなく、牛スジをつかっていた関係のお店、カレー屋やパン屋さんにまで頼み込んで、それをおいてもらったのがきっかけで、今に至ったそうである。


 したがって脈々とつづいてきた長田の牛スジ文化とは別に「ぼっかけ」という言葉自体は、うどんに限定的に使われていた言葉であったが、震災後、そのテレビ番組とTMOさんの活動によって、長田の名物として世に改めて公開されるようになったものであり、うどんだけでなくあらゆるものに「ぼっかけ」として使ってもよしとなった追義的な言葉であるといえるかもしれない。


 現在では、ぼっかけラーメンやぼっかけコロッケなども企画商品でだされ地元でも根付きだしているが。

そこにいたるまで長田を盛り上げようとする人々の色々な知恵と苦労があったものと思われる。


「ぼっかけ」という記号は震災後約10年で「そばめし」とともに全国区になりつつあり

長田復興の一つの象徴となった。

 私の店でも当初スジという言葉を使用していたが、牛スジぼっかけという言葉に変えており、これにより、長田のお客様だけでなく、観光で訪れたお客様がコレをよく頼んでくれるようになった。


また、お好み焼きを除き、そばめし、や、そば焼きについては、

このぼっかけという言葉の真の意味を尊重し、私の店である三宮の「長田タンク筋」では、そば焼き、そばめしに限り、ぼっかけはお客さんの目の前で「ぼっかけて」だしており、これが非常に好評となっていて人気ナンバー1メニューにもなっている。またぼっかけについては、非常に時間と手間をかけているので当店ではぼっかけ丼までつくっている。これもこれだけをわざわざ食べに来てくれる常連様が多数おり大好評だ。


機会があれば、ぼっかけについて、そのこだわりと作り方の一部を紹介したい。


いまだ、地盤沈下の激しい長田にあって、瓦礫の中に咲く花のように

ぼっかけとそばめしは多くの可能性を秘めている。


私は、このぼっかけとそばめしについて、日頃常々恩返しがしたいと考えている。

この二つが、もっともっと全国区になること

そしてもう「ぼっかけ」ってなんですかと聞かれなくなる日がくるまで努力精進していきたい。


そのためにいつでも「最高のぼっかけ」を仕込み、さらにその上を目指せるよう日々研究していく覚悟でいる。

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