最終セット、ジュースの末にアルゼンチンを振り切り16年ぶりの五輪出場を決めると、山本の顔に満面の笑みが浮かんだ。「4年前のメンバーの気持ちを受け継いで切符を取れた」。前回の最終予選で戦犯扱いされた主砲が、呪縛(じゅばく)から解き放たれた瞬間だった。4年前、大一番だった中国戦の最終セット16-17で、強打を相手ブロックにかけるなど勝負どころで決めきれず、ついたあだ名は“ガラスのエース”。敗戦の責任を一身に背負った悪夢は、いつまでもついて回った。

 「もう日の丸のユニホームを着てはいけない」とまで思い詰めた。しかし結論は、逃げではなく攻め。「最後の25点目を決められる選手になってみせる」。あえて自身に重圧をかけ、最終予選の舞台に戻ってきた。

 その姿から、ひ弱さは消えていた。アルゼンチン戦では、徹底マークされながら、チーム最多の28点を記録。大会を通しての得点も全選手で最多の125と、大黒柱に恥じない働きである。

 自宅の壁には一昨年の世界選手権のユニホームが飾られている。隣に、もう1着分のスペース。五輪のユニホームを飾ることに決めている。

 「今大会でも、チームが本当に必要としているときに決められたとは思っていない。夏には必ず決めてきます」。悔し涙の染みこんだユニホームを飾るつもりはない
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