テレビなどでときどき耳にする言葉でどうしても気になる言葉があります。数えてみると六つくらいはあります。今回はその内の三つ。

 最初に「なかなか」。政府の人が国会の答弁やマスコミのインタビューで「なかなか難しい問題です」などと頻繁に言っています。最近はあまり見かけない印象ですが、裁判官が薄笑いをしながら「なかなか難しいですね」などと言うこともあって気になっているのかもしれません。

 国語辞典をみると、「なかなか」という言葉には、肯定と否定の両方の意味があります。

 「デザインもなかなかだ」というような形容詞、「なかなか難しい問題」という副詞、それに「なかなか!」という感動詞は肯定の場合です。

 逆に、形容詞に「具体化までにはなかなかだ」という否定の用法、副詞にも「電車がなかなか来ない」という否定の用法があります。

 大臣や裁判官が「なかなか難しいところです」などという場合に、聞く側としては、否定の意味という気はするものの具体的な意味が分からずに、惑わされているような気分になります。

 裁判官が記録を読み込み、結論を確認したうえでこのような上から目線のあいまい語を使う場合はまだいいのですが、これまでの経験では、そのような努力や能力を欠く場合に使われることの方が多いようです。「なかなか」が出てきたときには心の中で眉に唾することになります。

 経験を積んでいない若手法曹などが「なかなか」などという用語を好んで使う様子が見えたときには心の中でグッと距離を置くことにしています。

                           

 次に「難しい」。これは、普通は手間がかかるとか、厄介だという単純な意味のようです。これを使うのは主に自分にとって難しいという場合です。

それがどうして気になるのか考えてみると、難しいの逆は、簡単にできることや何とかなることになります。簡単には何とかなりそうもないことを、難しいの一言で片づけようとすることに疑問を持つのかもしれません。

民間会社などでは難しいという理由で片づけられるテーマはなく、全部が難しく、成功の見通しがはっきりしない中で敢えて試みるということが日常のように思います。

 難しいという言葉を安易に使うときは、やる気がないことや、手抜きをしたい気持の言い訳に使われている気がします。

 経験の浅い世界で、与えられたテーマに「難しい」などと簡単に言うようでは意欲の有無を疑われます。

 三つ目として、政府の答弁などで耳にする「~ところです」について。なんでもない言葉のようでいて、多義的なようです。

 「ところ」は、場所や時点を示す場合、動作について始まるとか終わった状態を示す場合、それに接続詞的な用法があるようです。

 しかし、「今帰ってきたところ」という用法はありますが、「思うところ」「検討したところです」というような用法は見当たりません。一部の世界でどうして頻繁に使われるのかがわかりません。

 上場会社の記者会見などでも「と考えているところです」などと言っているのを目にします。部下が上司に対して「と思うところです」と言うことは考えられないので、やはり上から目線の言葉です。通常の用法を離れた、上から目線であいまいな言葉遣いは如何なものかと思う。私が目上だ、君たちは黙っていなさいということになります。

 このような、ごまかしのための上から目線の言葉は、少なくとも注意しながら聞くことにしたいところです。