家裁の調停委員が募集制になっていることは以前に書きました。東京家裁の場合ですが、応募するときには応募の動機についての2枚くらいのレポートを出すようです。それから、テーブルに5人位が座って討論をし、試験官がそれを聞いている。最後は裁判官と書記官、5人位の面接を受けます。質問するのは書記官の場合が多いようです。

 基準は、それまでの経験、社会の常識、法律の知識、問題調整の能力などと思われます。公表されている基準というものはないでしょうが、話す力よりも聞く力の方が重視されているかもしれません。

 

 書記官OBなどは選考基準にも詳しいでしょう。民間から応募する場合には、どのような質問をされてどのような発言がポイントになるかなどについて、経験者から事前に情報を集めた方が良いでしょう。企業社会でのような積極性はここではマイナスかもしれず、向き不向きもあるでしょうから選考から漏れた人も気にする必要はないでしょう。

 

 法律家以外の人が家裁の調停委員になった場合、どんな感覚で調停にあたっているのかが気になります。漏れ伝え聞いたところによりますと、「必携(家事)」や「ハンドブック」「手引き」などを基本にして、調停協会主催で自由参加の勉強会、その他の自主研修会、同期会なども企画して法律知識や実務の研さんをされているようです。こちらは都の近県の調停委員の方の話です。

 

 調停委員会は裁判官1名、調停委員男女1名ずつという組み合わせが基本のようです。振り返ってみると確かにそうです。単純な感想として、女性裁判官は労力を惜しんだ手抜きの傾向を感じるときがありますが、女性調停委員は個人の意見を交えずにストレートに聞いてもらえる分かり易さがあると思うときがあります。


                        目黒川の桜   

 

 「調停手続きは家事審判官(裁判官)の指揮下に進める」という規定と「ただし重要事項については,構成員の意見が分かれた場合は調停委員の多数決による」という規定があるわけですが、実際には裁判官以外の2人で多数決の決定をするようなことは想定もされていないようです。

 

 京都に行ったときに裁判官が調停をしてくれて手早かったことがありました。しかし、通常は調停委員が期日の殆どの進行を担当するようです。弁護士(の場合もそうでしょうが特にそれ)以外の調停委員は法律的なことは裁判官の意見を聞いて進めるということになるようです。そうすると裁判官のいないときの調停の席では法律論よりも円満な解決をというような説得調になり、感情的なことが前面になることが多いと感じるのはこの辺に原因があるかも知れません。

 以前に、市役所に勤めながら夫婦で広い農地を守った家の相続問題が東京家裁で争われ、家をもたない相続人(妹)は農地を宅地化できることを無視した分割案を強引に進められて困ったことがありました。
 審判に移ってからは裁判官にある程度の主張が認められました。男性の調停委員は弁護士でしたが、強引で不快な印象が今でも残っています。

 

 家裁の調査官が平気で不公平なことをすることもあることを知った(長男とは会うこともなく奇妙な報告書を作った)のもこのときの経験でした。

 

 調停委員の方(かた)も個人的な予断をもたないように注意しているでしょうし、今度調停があったときにはこちらが法律以外のことについてはどのように考えているかなどを丁寧に伝えるしかないかと思うのが現状です。

 もう一つ、調停1回で2時間くらいを要することは証人尋問に匹敵し、大きな負担であることを理解していただければというところです。