労働基準局の労働相談、さらに裁判所の労働調停について説明し、今回は労働裁判についてです。
今回は、筆が鈍りました。解雇や労働条件についての訴訟が多いことは報道されています。
それ以上の中身の概説が難しい理由を考えると、労働契約の種類が多く、その種類の中の境界がはっきりしているといえず、さらに時間の経過とともに変化するという複雑さにあるようです。
まず、労働契約の種類と割合は次のようになっています。
平成24年雇用統計(厚労省) |
(万人) |
% | |
正規雇用 |
3340 |
65 | |
非正規雇用 |
パート・アルバイト |
1241 |
24 |
派遣社員 |
90 |
2 | |
契約社員・嘱託 |
354 |
7 | |
その他 |
128 |
2 |
どちらから訴えるかについて、労基署の相談は被傭者側からが3分の2、雇用側からが3分の1のようです。裁判では被傭者側からの比率がもっと多いと思います。
事件の種類では、労働審判段階で、地位確認が48%、賃金等が33%となっているので、裁判でもこの二つが多いと思われます。その他ではこのところ「いじめ、嫌がらせ」に関するものが増加しているとされています。
裁判所の調停になった事件の70%が調停、8%がその後の審判で終了し、10%が訴訟に移行するようです。
労働問題が難しい理由として、①契約書を交わさない、労働時間も一定でない、実際の期間が5年~10年と長くなることも珍しくないなど、契約の内容について明確と言えないことも多く、②契約の理解について思惑が異なったり、それも変化していくことも多いこと、③さらに期間雇用社員(契約社員)について、労働契約法で3年を超えたときは正規雇用とすることになったことが典型ですが、時間の経過によって契約形態が変わることもあることが上げられるようです。雇用契約法に対応して、2年10か月で契約を打ち切り、ある程度の時間をおいて再採用しても良い……という方法を考える人も当然出てきます。
対外的な影響を考えることも双方に共通でしょう。
相談件数が全国で年25万件という件数は交通事故の問題に次ぐ件数と思います。法令も大量、複雑で、変化があります。労働事件は、予め枠組みを勉強し、そこに当てはめるというような対応ではカバーしきれないように思います。
私も、労働法、派遣法、非正規社員関係など、この5年くらいで分厚い本を5冊くらい供え、更に裁判動向に関する本を弁護士会の図書館から借りてきてようやく対応している状態です。
基礎知識の他は、具体的な事件にあたってから調べていくことで止むをえないのではないかと思います。