山岸憲司日弁連会長が、弁護士会の海外関連のセミナーへの若手弁護士の参加者など、海外への意欲を持つ人が増えていると最近のビジネス法務の雑誌に書いている。
 20年ほど前の「渉外(海外)弁護士ブーム」の時は欧米志向だったのに対して、今はアジア諸国が中心になり、かかわり方も企業内部に入ったり、中小企業を依頼者とすることも多いという特徴を挙げている。
 そのために必要なこととして、朴訥(ぼくとつ)でもしっかりした英語の専門用語を駆使して交渉に当たる能力、一方的な主張をするような相手に対応できるタフさ、地元の国の文化・商慣習などに深い造詣を持つことなどをあげている。
 日弁連は海外に展開する中小企業を支援するために弁護士を紹介する制度もはじめたという。
 20年前の渉外弁護士は、英語に堪能で、アメリカやイギリスに1年か2年の留学をすることが条件というイメージで、そのための能力、時間と費用が必要だった。一流の渉外弁護士はピカピカのオフィスを作り、「ニュヨーク州弁護士の資格を持っています」、「報酬は1時間8万円です」などとというのが普通だった。州弁護士資格は日本の司法試験ほどむずかしいものではないが。
 トップ級の商事会社の法務部長は、別のところで、東南アジアなどでの法律実務へのかかわり方として、外国においても法律の基本用語は世界共通のものが多く、相手が英語の契約書を作ってきても決まった書式に手を加えていることがほとんどだから難しいということはない、むしろ現地でのビジネス感覚が必要条件になると書いている。
 町の中小企業の厳しさ、非正規雇用の増加などに伴う息苦しさのようなものは、弁護士の世界にも反映している。少し離れて、英語や外国法を数年勉強してアジアを目指すことも若い人の選択肢の一つと思う。優雅という時代は去ったと思うが。


    弁護士のKnowとHow(ノウとハウ)の記


 20年前でいうと、弁護士はビジネスの世界と距離を置き、弱い人(とは何か考えなければいけないのですが、それはともかく)に寄り添うのが基本であるという空気もあった。渉外弁護士というと非主流派扱いしているように感じるときもあった。時代は変わったと痛感する。
 今春(平成23年)の日弁連会長選挙。山岸現会長と、宇都宮健児前会長が厳しい選挙を繰り広げ、3回目の投票で決着した。宇都宮氏は2年任期の2期目への立候補。宇都宮氏の側近代表は社民党の福島党首の夫君(夫婦別姓)。最終的に支持弁護士会の数では3分の1プラスアルファーにとどまった山岸氏が、支持弁護士数で過半数を占めてようやく決着がついた。都会地の支持が多かったことによる計算となる。
 今、日弁連執行部から、3回も投票をくりかえすような選挙方法を変えるという提案が出され、反対の側からは人数の少ない県の弁護士会を軽視するものだという批判がされている。自分の党や支持グループに有利なように選挙制度に変えてしまうことは、いわゆる「ゲリマンダー」といいます。国会と違って、山岸日弁連会長に自分の党というものもありませんが、とにかく、この変更は実現しませんでした。
 山岸会長は主張の際立たない協調派という報道もされたが、冒頭で挙げた文章などをみてもキレのある整然とした文章を書かれる人だった。私が昨年まで所属した、600人くらいの「派閥」に属している。他方の宇都宮氏は今度は都会中の都会である東京の都知事選挙に立候補しています。