「弁護士は玉石混交」という言葉はこの仕事をしているとつきもののようになっている。 自分自身の若いころ、裁判官や検察官の人との交流があった後に弁護士と話すと、弁護士は何か俗物的でつまらないという印象はぬぐえなかった(直接指導の方々は尊敬していたが)。この5年くらい、若い弁護士と話す機会があると、そういう感覚が自分にも向けられているのではないかと不安にもなります。いろいろ考えるとそのように思われることには根拠もある。
 私が修習生のころ、先輩の弁護士からで本当に役に立ちそうな話題は、いまどんな依頼者の仕事をしているか、どんな会社のどんな仕事をしているか、依頼者や会社はどんな人の紹介やきっかけで始まったのか、というようなことになると思う。
 しかし、そういうことを気軽に口にする人はいない。そういう場で、私がよく聞いた記憶があるのは、「小さな仕事でも一生懸命やっていれば必ず依頼者はついてくるものですよ。」、「小さな人間関係を大切にしていればかならず後につながりますよ。ただ、飲み屋で依頼者を探すようじゃさみしいですけどね。」というようなこと。最後のところは反論したいところもあるが、とにかく、いま若い方々を前にしたと仮定しても、とりあえずはそんな話になるという気がする

      弁護士のKnowとHow(ノウとハウ)の記

もう少しレベルを上げて、「税法とか特許法関係とか得意分野を身につけるのも大切です。」、「これからは何人かが協力して早めの独立を考える方法もあります。」、「弁護士法人というものはデスネ。」・・ということになる。「この仕事をしていると必ず怪しい者が狙ってくることに出会うから注意が必要です。」というのも定番中の定番。最近では、弁護士会設立の地方の弁護士公設事務所の話題もあるのかもしれない。
 このような話題を何回も何回も聞いていると、みんな同じ話ですか、とか、弁護士は社会正義の擁護が目的だったのに、ずいぶん俗物的ですね、という反発になると思われる。
 30年近く仕事をして振り返ると、これは単純な誤解ではないかと思う。弁護士は日々の仕事のことをいつも考えているもので、弁護士倫理とか本旨はその人の骨格になっている。日常的には口にするようなことではなくなっている。権威的と言われるよりは俗物的と言われた方が嬉しい。
 20年位前に、尊敬できる弁護士と、弁護士の会社経営禁止はおかしいかどうかを議論したことがあった。当時は他業禁止が基本で、その後原則的許可になった。高い倫理と経営を両立するほかないという単純な結論です。