スマイルサービス裁判の和解条項を公開 密室で終わることになった裁判について考える | 悪徳不動産会社スマイルサービスとの闘い   blog版

スマイルサービス裁判の和解条項を公開 密室で終わることになった裁判について考える

この文責はsinoです。


いくらかの人の示唆といくらかの方のご要望にお応えして、スマイルサービス裁判の和解条項をここに公開します。


まず、断っておかねばならないことは、訴訟記録は事件番号を伝えて、印鑑を持参し身分証明書を見せれば誰でも見ることができます。(追記:念のためさらに断っておくと、これは自分で裁判所に行って閲覧したもので、原告や弁護団から知りえた情報ではありません。)


事件番号は「平成20年(ワ)28439」と「平成20年(ワ)36961」で、民事24部が扱っています。当初は併合されなかった事件ですが、和解直前になって、併合申立によって併合されています。


これらの和解条項の交渉はすべてFAXで行われ、和解にいたる経緯やどういう交渉が行われたのか、社会的になんら公開されていません。裁判所に行けば誰もがみることはできるけれども、そのやり取りは密室で行われ、まして、和解条項自体も秘密条項が入ったことで内容を第三者に知らされていません。
当日の報道も和解したという内容だけで、他には一切触れていない。


これではなんのことやらわかりません。


そうではなく、どのような条件だから和解して、なぜ秘密条項を飲んだのか、相手はなぜ秘密条項を入れる和解にこだわったのか、を誰もが検討して評価できるようにならなければならない。あるいは原告や弁護団はそのことに対して説明しなければならない責任があるのです。


そのためにはなにより、具体的な和解条項を知らなければなりません。


社会的注目を集めた事件であるのなら、密室でのやり取りではなく、社会的に開かれた形で誰もが分かるように進められなければならなかった。

しかし、そうはならなかった。それはなぜなのか。密室で進められることで誰の利益になったのか。誰が得をしたのか。なぜ密室で終わらせる形を選ばねばならなかったのか。
そのことをみなさんと一緒に考えることができれば、と思います。


以下が平成21年4月15日に交わされた和解条項です。


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和解条項

1.(1)~(9)
各原告への支払い。(省略)


2.被告らは、各原告に対し、本日、本和解席上において、前項の各金員(総額3439万1793円)を支払い、各原告はこれを受領した。


3.原告らは、被告らが反省し謝罪したことに鑑み被告らを宥恕し、本件に関し捜査機関に対し、被告らの刑事処罰を求めない。
原告らは、既になされている被告らに対する告訴については、本日、取り下げる。
原告らと被告らは、本件の被告らの法的責任について、民事責任、刑事責任とも全て解決したことを相互に確認する。


4.原告ら及び被告らは、本和解条項の内容を第三者に口外しないことを確認する。


5.原告らと被告らとの間には、本件に関し、本和解条項に定めるものの外、債権債務がないことを相互に確認する。ただし、原告〇〇とスマイルサービスとの間の賃貸借契約は従前の通りとする。


6.原告らは、その余の請求を放棄する。


7.訴訟費用は各自の負担とする。

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各条項について個別に検討します。若干トーンは抑えています。


1.は各原告について○〇円支払うという項目なので省略。


2.についてですが、原告側が求めていた請求額は2事件(原告9名)を合わせて、約3471万円でした。なので、支払額(約3439万円)と若干の差額はあるものの、ほぼ請求金額そのままを被告は支払ったといえるでしょう。
判決を出させることになっても届かない金額であることは間違いないでしょう。そして、相手にこれだけの金額をださせることで、スマイル経営に打撃を与えることになったことも間違いないでしょう。
第1次訴訟の5名は、精神的な苦痛を負わされ、かけがえのない時間や労力を費やして訴訟を行い、あるいは、第2次訴訟の原告2組は荷物をすべて処分され、取り返しのつかない被害を負った。これらの被害についてはいくら相手に金銭を支払わせても割にあうものではないでしょう。
しかし、この3439万円も、きつい言い方をすれば、他の被害者から得た利益を被告から奪い取っていることにしか過ぎません。しかも他の被害者の被害回復にはなんら寄与しない形で、密室で終結させることの見返りとしての受け取った金額であれば、それはどのような意味をもつのか。何のための裁判だったのか。このことが問われなければなりません。


ちなみに、これも裁判記録を読めばわかるのですが、相手はなぜか現金での支払いのこだわり、支払は4月15日に裁判所内に相手側が紙幣カウンターを持ち込んだ上で、現金を持参しその場で数えて受け渡しがされた模様です。


3.は、刑事告訴の扱いについてです。この和解条件が相手から提示されたのは3月中旬とみられ、3月9日にされた刑事告訴を受けて相手が和解への動いたのは明らかです。つまり、被告側の和解意図は、刑事処分をなによりも恐れ、原告側の請求通りの金を積むことを条件にして、刑事告訴を取り下げさせる、これからの刑事告訴を防ぐことを主眼としていたと考えられます。裁判記録でも、被告側の4月13日付FAXで「被告らとしては、告訴の取り下げがなければ全体での和解をすることはできないと考えております。」としていることからも、被告が刑事告訴の扱いに固執していたことが分かります。


①金を支払うことで刑事的な責任の追及をやめさせたい。

あるいは、

②金を受け取ることで刑事的な責任の追及を諦めた。


刑事告訴とはなんなのか。また、それを取り下げるとはどのような意味を持つのか。


①については、改めて言うまでもないでしょう。声明にも書きましたが、「法的知識や交渉力がなく、多くは金銭に困窮している貧困層につけ入り、出来得る限りの収奪を行い、取れるものがなくなると追い出し、いざ追及されると札束で横つらを殴り口を封じる。」こういった相手のやり方は一貫して卑劣です。
パクられるのが嫌だから、金をいくら積んでもいいからやめさせたい。金を支払うことで警察に入られるのを阻止したい。
これが相手の意図でしょう。往生際の悪い、悪徳業者の考えそうなことです。


では②についてはどうでしょうか。
いったん刑事告訴をしておきながら、金を受け取ることで刑事的な責任追及をあきらめる。
結果として責任追及が最後まで徹底できなかったのならまだしも、相手から金を受け取ることで自分からあきらめてしまう。
このことの意味はちょっと言葉を窮します。はっきりいって致命的です。
どうしてこのようなことになったのか、私を含めた自分たちでもっと考えていかねばならないでしょう。

はっきりしていることは、相手がやった犯罪行為はいまなお裁かれないまま放置され続けているということです。


被告の「反省と謝罪」の言葉が入っていることがぎりぎり評価できる点ではありますが、それも次の秘密条項が入っていることでほとんど意味がありません。「反省と謝罪」をさせることは当然ですが、何度もいうようですが、被害者は原告だけではなく、単に自分だけに謝ってもらえればそれでいいというわけではないからです。


4.が秘密条項です。和解内容を秘密にすることでどのような意味があるのか。これを考えることは、逆にいえば、和解条項を公開されることで誰にどのような不利益があるのかを考えることと同義です。
まず、多額の金銭の支払いに応じたことを公開されることは被告にとって、大きなダメージです。なぜなら他の被害者が同様に金銭の支払いを求めてくる場合が今後もあるかもしれないからです。
また、和解とはいえ、自分たちの非を認め、「反省と謝罪」をしたというのも、相手にとってはダメージです。自分たちがこれまでやってきたことについて、違法行為を組織的に業務として行ったことを認め、謝罪することは、「施設付鍵利用契約」などというふざけたシステムが借家人の利益のために行ったのだと訴訟上でも主張していたスマイルにとって、大きな転換点になったことは間違いありません。


しかし、それもこれも、公開されずに密室で交わされた条項なのであれば、なにも意味がありません。
秘密条項とすることにより、利益を得たのは被告であり、原告側にとってはメリットはないといっていいでしょう。
その条件を原告側は多額の金を受け取ることで受け入れた。あるいは、自分たちの被害回復を第一に優先した結果として、秘密条項については考えるまでもないということなのでしょうか。


5.6.7.については定型文といえるもので、改めて論じる点はありません。


○裁判闘争とはなにか?


裁判とは、単に原告の被害回復を求めるだけではなく、事実を明らかにすることで、相手の違法行為を裁判で裁くことに意味があります。その上で、これまではっきりとしなかった責任の所在を明確にし、社会的に相手の責任を追及していくことが求められたのです。
自己の利益追求と社会的な利益追求とは必ずしも一致しません。その利益追求は相克する場合もあるのです。
そのとき、原告、弁護団、支援者はどのように考え、方針を立てていくのか。
そのことをスマイル訴訟は示唆しているように思います。


もっと自分自身も含め、スマイル裁判とは何だったのか、を考えねばなりません。