まちがいさがし【ふしぎな老人】 | ルーツ探して今日もゆく~(日本語版)

まちがいさがし【ふしぎな老人】

あんにょんはせよ~
miryonです★


だいぶ遅いご報告となりましたが、
朝鮮新報社が発行している
月刊이어(イオ)という雑誌の
12月号まちがいさがしイラストを
描かせて頂きました

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テーマは『朝鮮の民話』で
12月号のお話は「ふしぎな老人」



昔むかしのある夜のこと、
旅の途中の若者が
夜道を歩いていると
一人の老人に声をかけられました。

「もし、お若いの。
どこへ行きなさる?」


宿を探している、と
答えた若者に

「わしもそうじゃよ。
夜道は物騒だし、どうじゃ?
次の村まで一緒に行かんかね?」
…と、言いながら
老人は歩き始めました。

若者は怪しいと思いましたが、
悪い人間には見えなかったので
黙ってその後ろをついてゆきました。



しばらく歩いていくと
明かりが灯る宿に着きました。
中へ入ると気怠そうに
たばこの煙をくゆらせた女将が
「いらっしゃい」と出迎えました。

一晩泊めてほしい、と言った
老人と若者をじろりと一瞥したあと
「金はあるんだろうね?」と
女将が尋ねました。

若者がふところから財布を
出そうとした時、
老人がそれを止めながら
こう言いました。


「おっと、金を払うのは
あなたの方じゃよ」

「 「はぁ?」 」


老人が突然奇妙なことを
言い出したので
女将も若者も眉根をひそめました。

「はっ!もしや強盗?!
そそそそっちがその気なら!!」


怯えた女将は護身用なのか
刃物を手に取り
老人を睨みつけました。
老人は落ち着いた様子で
なおも続けます。

「まさか!違うとも!
旅人相手に強盗を繰り返してきたのは
あなたの方じゃろうに…」


若者は意味がわかりませんでしたが
女将はびっくりして
刃物を落としてしまいました。


老人はにっこり笑って
女将に話しかけました。

「もし、あなたが我々に今まで
盗んでためた金百万を
すべて渡すというのなら、
明日あなたが死をまぬがれる方法を
教えてやろうと思うのじゃが…
どうかね?」

「ななななんて不吉なことを!
なんて気味の悪いことを!!
一体あんたは何者だいっ?!」

「己の愚行を認めるんじゃな?」と
静かに問う老人の前に、
ついに女将はわっと泣き崩れました。


「人の苦労も知らずに…
偉そうに…わかったような口を…」

両手で顔を覆いながら
むせび泣く女将に
老人はあたたかな眼差しで
こう言いました。

「うむ…だがな、その苦労も
もうじき終わるんじゃよ。
何故なら明け方近くに
あなたの夫が帰ってくるからのお。」


「 「えっ?!」 」


二人のやりとりを
茫然と眺めていた若者も
うつむきうなだれていた女将も
びっくりして老人の顔を
見上げました。


なぜ?どうして?本当に?
あの人が本当に?どうして?
…と繰り返す女将を制し、

「まぁとにかくまず金を払いなされ」と
老人はにっこりと微笑みました。


女将はのろのろと立ち上がり、
部屋の奥から大金が入った袋を
持ってきました。

「お若いの、すまんが
受け取ってくれんかのお。」


若者は無言で女将から
ずっしりと重い袋を受け取りました。


「さて女将。
急いで愛人に
明日は来ないようにと伝えなされ。

そうすれば逆上した夫に殴られ
打ち所悪く命を落とすこともないじゃろう。
よいな!」


そう告げると老人は
もう用はないとばかりに
出て行ってしまいました。
若者も慌てて老人を追いかけ、
あとには狐につままれたような顔をした
女将だけが残されたのでした。



二人が宿を出てみると、
東の空が白んでいました。
寝ていない上に奇妙な場に
居合わせた若者は
疲れて座り込んでしまいました。

「おぉ、もう夜明けじゃな。
わしは行かねば…」


老人の言葉に振り返ってみると、
そこには誰もおらず
静かに朝日が昇っていたのでした。


あの老人はどこへ消えたのか…
昨夜のことは全部夢だったのか…
でも金は間違いなく腕の中にある…



大金が入った袋を抱えながら
若者がぼんやり歩いていると、
小さなお地蔵さまの前で
必死に祈りながら泣いている
少女に出会いました。

少女の祈りに耳を傾けると…


「お地蔵さま…お願いです…
どうか罪のない父をお救いください…
あぁ…借金さえ返せれば
父は牢屋から出してもらえるのに…」



その時、ふと目に入った
お地蔵さまの顔を見て
若者は直感しました。
なんのことはない、
さっきまで一緒にいた老人に
そっくりだったのです。


「お嬢さん!
このお金はあなたのだ!
天の助けと思って
これで父親を救いなさい!!」


少女は若者に何度もお礼を言い、
父親を助けるべく走り去りました。
残された若者は
お地蔵さまにそっと話かけました。

「これでよかったのですね。」


お地蔵さまはただ
にっこりと微笑んだまま
何も語りませんでした。



…というお話です



これで1年続いたまちがいさがし
「朝鮮の民話」は終わり…
のはずだったのですが、
ありがたいことに2016年も
引き続き担当させて
頂けることになりました!!
カムサハムニダ~


来年はテーマがガラッと変わります!
引き続きどうぞ宜しく
お願いいたします!!