Lenovoの日本法人であるレノボは,2013年3月12日,Lenovoが展開するゲーマー向けPCブランド「Erazer」(イレイザー)を日本市場で展開すると発表した。第1弾となるのは,ミドルタワーPC「Erazer X700」で,メーカー想定売価は17万円前後だ。


 Lenovoといえば「ThinkPad」でよく知られたメーカーで,価格対スペック比を追求した「IdeaPad」も最近では知名度が上がってきているが,いずれにせよ,ゲームPCとは縁遠い存在だと思っていた人が多いのではなかろうか。それだけに,そんなLenovoがなぜ突然ゲーマー向けPCを? と思うかもしれないが,Lenovoは2011年にドイツの家電メーカー「Medion」(メディオン)を買収している。そしてErazerというのは,このMedionが手がけていたブランドなのだ。
 MedionはもともとErazerを欧州市場で展開していたが,Lenovoによる買収後は中国市場でも展開するようになり,今回,3つめの市場として,日本が選ばれたのだという。Lenovoは現在,「守りつつ攻める」というスタンスで事業を展開しており,日本では,ThinkPadやIdeaPadなどの事業をしっかりと守りつつ,Erazerで攻勢に打って出るというスタンスになるそうだ。

LEDの配置を示すスライド
 以下,Erazer X700を順に見ていこう。まずは外観だが,フロントパネルは「西洋の甲冑をイメージした」(レノボ)デザインになっているという。甲冑というより,どちらかといえば鉄仮面的なイメージだが,西洋的といえば確かにそうかもしれない。
 “鉄仮面”の隙間から覗く目線風に,ミラー加工された本体前面上部カバー部の下側から青色LEDの光が漏れ,また,本体前面最下部に複数の「点」として用意される青色LEDもアクセントになっているのが,外観上のポイントといえるだろう。なお,LEDの色は青で固定であり,別の色に変えたり,光り方を変えたりといった機能はない。

 フロントパネルのカバーを開けると現れる前面ドライブベイには,上から順に,29種類のメモリカードへの対応を謳うカードリーダー,DVDスーパーマルチドライブ,前面から取り出し可能な3.5インチHDDベイが2段分並ぶ。HDDベイの下にも5インチベイが2つある。

 本体上部,電源ボタンの上には「オーバークロックボタン」と呼ばれるボタンがある。これはErazer X700の特徴である,「ワンキーオーバークロッキング」の始動ボタンとなっている。
 CPUが定格で動作中にこのボタンを押すと,クロックアップ動作が「解禁」される。その状態で,クロックアップ設定を行う「Erazerコントロールセンター」というユーティリティを使い,CPUのクロック倍率を選ぶと,PCの再起動を促すメッセージが表示される。そこで再起動すると,ようやく選択した倍率でのクロックアップ動作が可能になる。クロックアップをオフにする場合も同様で,再起動が必要になる。

「ワンキーオーバークロッキング」の説明スライド。クロック倍率を幅広く変えられるが,ベースクロックは変更できない。

 本体上部前方側には,上下に稼動するパネルがあり,パネルを下に動かすと周辺機器を装着するベイが現れる。ベイの前側には,キャップに覆われたUSB 3.0のタイプBコネクタが用意されており,周辺機器との接続に使われる。欧州ではここに装着する専用周辺機器が販売されているとのことだが,残念ながら日本では,現状で発売の予定はない。
 本体の右側面パネルには,大きなメッシュの開口部がある。ここは排気口として機能するほか,内部に設けられた青色LEDの光が漏れて,ケース内を外からでもぼんやりと光らせる仕掛けになっている。


 側面パネルは,後端で手回し式のネジ2本を使って固定されているだけなので,内部へのアクセスは容易だ。本体内部では,前面側に外からアクセスできる5インチベイと,3.5インチHDD用の内部ベイが4基並んでいる。HDDベイはドライバーを使わずにHDDを交換できるツールフリー構造を採用。HDDの付け外しが簡単にできる。


液冷システムの「レノボリキッドクーリングシステム」。冷やす対象はCPUのみ
 マザーボード上には,Sandy Bridge世代のCPUであるが搭載されており,その上に「レノボリキッドクーリングシステム」と呼ばれる液冷システムが装着されている。この液冷システムの冷却効果により,クロック倍率は定格動作の36倍に対して,「Erazerコントロールセンター」によってメーカー保証の範囲内で,ドラクエ10 RMT,最大43倍の4.3GHzまで引き上げられる。

 少々残念な点は,Core i7-3820は4チャネルのメモリチャンネルをサポートするのに対して,Erazer X700に装着されているメモリモジュールは2枚(4GB×2)だけである点だ。CPU性能を最大限に発揮するには,4スロットすべてにメモリを装着する必要があるので,できれば4GB×4の16GBを搭載してほしかった。

 気になるグラフィックスカードは,小売市場向けとは異なる仕様のOEM向け「GeForce GTX 660」を搭載したモデルとなっている。組み合わされるグラフィックスメモリの容量は1.5GBである,DQ10 RMT

 なお,Erazer X700は販売時のパーツ構成が固定されており,BTOによる注文時のパーツ変更には対応していない。一方,メーカー製PCとしては珍しい特徴として,Erazer X700にはキーボードやマウスが付属しない。ゲーマー向けPCを求める消費者は,自分の気に入ったキーボード?マウスがすでにあるものだ,という考えによるものという。

 独特のルックスを持つボディと液冷システムという特徴はあるものの,スペック面から見ると,17万円前後という想定売価はいささか高く思える。レノボ?ジャパンでコンシューマーデスクトップ製品を担当する藤井宏明氏は,Erazer X700のターゲットとなる客層について,「レノボのPCユーザーが第1のターゲット」と述べる。ゲーマー向けPCを買い慣れた,あるいは自作し慣れた消費者ではなく,レノボ製品のユーザーが,ハイスペックなデスクトップPCを選ぶときの選択肢として位置付けているとのことだ。


Erazer X700の主な仕様


    「バイオハザード6」の推奨PCにも認定

    PCの高性能を生かした表示やゲームモードも追加


     Erazer X700はやの推奨PCにも選ばれている。製品発表に先立って行われたレノボ?ジャパンによる事前説明会では,PC版バイオハザード6のプロデューサーである平林良章氏が講演を行い,PC版ならではの特徴について解説した。
     平林氏によれば,PC版は最大の画面解像度が2560×1600ドットの高解像度まで対応するほか,アンチエイリアシングの有無や影品伲匹攻隶闫焚を調整する画面調整メニューを用意。PCのパワー次第で,ゲーム機版よりも優れた品伽斡诚瘠驅g現できるという。
     また,多くの敵を表示してもパフォーマンスが落ちない利点を生かして,ゲーム機版のゲームモード「ザ?マーセナリーズ」よりも大量の敵が襲いかかってくるPC版専用モード「ザ?マーセナリーズ アンリミテッド」を追加。そのほかにも,ゲーム機版では有料DLCとして提供されていた7ステージのエクストラコンテンツをすべて収録するなど,PC版ならではのメリットを多数用意しているとのことだ。


     レノボではErazer X700の発売を記念して,購入者先着100名に,PC版バイオハザード6と容量1TBのポータブルHDDがもらえるキャンペーンを実施するという。キャンペーン期間は3月15日から,商品がなくなるまでの予定である。


     スペックに対して想定売価が高めな点は気になるものの,大手PCメーカーからゲーマー向けPCの新ブランドが登場すること自体が珍しいだけに,Erazerのラインナップ拡充に期待したい。


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