今回は個人的書評というこで、『SHARE〈シェア〉共有からビジネスを生みだす戦略【NHK出版】』について感想を述べたいと思います。
※個人的な感想ですので、色々なご意見があるかと思いますが、寛容な気持ちでご覧頂ければ幸いです。


$東京で働くネット広告屋「kj」のブログ


すでにご覧になられた方も多いと思いますが、つい先日発売された同書。


会社の下のフロアにある書店にも平積みで置いてあり、広告やネットビジネスに関わる人が手に取っている姿を見かけます。


ソーシャルメディアの可能性には注目している僕も前述の如く興味を惹かれて購入しました。



内容をざっくりとお伝えすると、、、



タイトルの通り「シェアビジネス」について、主に米国のベンチャー企業をモデルに挙げながら色々な角度で述べられています。


また、シェアビジネスの紹介だけではなく、シェアビジネスの広げ方や運営方法や創業者の理念・ビジョン、そして認知の広げ方(プロモーション方法)などにも所々触れており、事例も多く、ハードカバーですがサクサク読むことができます。

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感想としては、シェアビジネスの根幹である、消費者の消費意識の変化について共感できる部分があった。特に、車を例に挙げて「人は車がほしいのではなく、移動手段がほしいのだ」という言葉。

つまり、目的を達成するための「サービス」がほしいのであって、「所有」することにそこまで執着を持たないようになったということのようだ。


米国では確かにシェアビジネスが流行しており、合理的に考えれば「確かに!」と頷く点だった。


加えて、経済が不況の時代だからこそ、より合理的な選択をしがちという。この辺りは日本の状況にも当てはまるかもしれない。


また、家の中のあらゆるモノやスペースを有効活用できる(シェアビジネスに転用できる)と指摘している。例として、使っていない部屋や庭、ガレージなどを挙げている。

米国ではベンチャー企業が多いからこそ、そういったスタートアップ企業からすれば場所を借りれることはとても大きなことだと思うため、このビジネスも確かに合理的かつWin-Winのビジネスになっている。

とはいうものの、日本の家にそこまでのスペースはないし、そのまま当てはめることは無理があるが、オフィススペースなどのレンタルビジネス(学校の教室をビジネス用に貸したり)はすでに始まっている。


安全性の面でも、ユーザー同士のチェック機能が効くため、ほとんど問題ないようだ。性善説に立った視点で説明されている。



などなど、頷く部分は大いにあったが、日本に当てはめると、また問題が違ってくるようにも思う。



例えば、米国でシェアビジネスの代表格である「カーシェア」も日本ではそこまで大きな話題にはなっていない(2年前ぐらいからサービスとしては認知され始めてきたが)。


まだ日本人には「所有」に関するこだわりがあるように思う。所謂「ステータス」だ(近年言われている若者の車離れは、地下鉄の発達で車に替わる代替手段がすでにある(しかも安価で!)ことが原因だと思われるが、はたしてそこにシェアが食い込んでくるのかは注目が必要だと思う)



そして、日本人は基本的にはクローズな関係性を好む傾向にあるため、見知らぬ人と同じ空間を共にすることや人が使ったものを使用することに対して心理的ハードルはかなり高いと思う(これはネットの匿名性の議論でよく言われる部分)。




とはいえ、個人的には潜在的な部分で日本にもシェアビジネスが根付く土壌はあると思う。


特に、若者と年配者は人ととのリアルなコミュニケーションについては積極的だ。



今の若者は「所有欲」が少ないと言われている(良くも悪くも)。ネットネイティブでもある彼らはある意味合理的に考えるためシェアビジネスやバーチャルなコミュニケーションへの抵抗感も少ない。マッチングの方法を工夫すれば(趣味嗜好を合わせられる、同郷に区切るなど、何かしらの共通項を見つけてあげるマッチングなど)、シェアを受け入れることは比較的容易ではないかと思う。


年配者、特に定年した方も若者との交流に積極的だ。先日朝のニュースで特集を組んでいたが、子供が巣立った後の空き部屋を学生に貸すという取り組みや、学生に勉強を教えるボランティアなどが盛り上がっているようだ。



日本人は農耕民族であり、村に代表されるコミュニティを大切にする文化である。その意味では、本質的に人との交流には前向きな文化だと言える。



今の若者が消費の中心になる頃には、シェアビジネスが日本で流行になっているかもしれない。