執筆活動―3-2

骨髄移植2

骨髄移植を受ける前に、ドナーの免疫力を受け入れやすくするために、自分の免疫力を低下させる措置として、抗がん剤治療、放射線治療をしました。この時、生殖機能にも影響を受けるので、精子の冷凍保存があるという説明を受けましたが、すでに、神戸の病院で数回抗がん剤治療を受けていましたし、仮に、私が命を落とすことがあったら、誰が子供の世話をすることになるのかを考えると、一般の夫婦でも子供を授からない夫婦がいるので、たまたま、子供を授からない夫婦と考えたらいいと納得して、精子の冷凍保存は行いませんでした。

骨髄移植前の抗がん剤治療で、膀胱炎になりましたが、腎臓の機能に自信があったので、カテーテル(排尿を自動的に行うために、尿道から膀胱に直接入れる管)を挿入するより頻繁に尿を排出することによって、膀胱炎を治すことにしました。私の予想通り、数日経つと膀胱炎も治り、大便・小便をしても痛みがないので、快適になりました。痛みがないということだけで、これだけ憂鬱な気分がなくなるとは思いませんでした。

 無菌室では、治療のために食欲が低下してしまうので、出された食事を全部食べられない人が殆どと聞いていました。以前、口内の粘膜が剥がれて何も食べられなくなった状態から、食べられるようになった時、胃が食べ物を受けつけず、お腹が空いているにもかかわらず、食べたら気分が悪くなった記憶があるので、無菌室では、痛みはなく気分悪い程度なら全部食べてやると決意していました。だから、薬の影響で味覚がなくなった時も、以前の味を想像して食べていました。そのかいあって、無菌室では食事を全て完食しました。また、無菌室での生活は、動きが制限されるために筋力低下が著しく、無菌室を出る頃には、歩けなくなる人もいると聞いていたので、ベッド脇でしんどくない程度でスクワットをしていました。だから、無菌室から移植病棟へ移る時は、比較的元気な方だったと思います。大阪大学医学部附属病院の無菌室からは、万博公園の壮大な景色が見えて、落ち込む心を少しは慰めてくれました。患者の心を考慮して設計されていると思いました。