ほろ酔い気味で朝通った道のりをバスの1番前に乗り、走っている。 でも、来たときとは違って胸に抱えている銀色に輝く刺繍に包まれた箱の中は重くなっている。 酔っているせいか、帰りの道のりは朝より短く感じた。 


 家に着くとすぐに来て頂いた方々に感謝を伝え そして 家に帰りさっそくお金の計算を叔父さんと手分けして行ったが、たくさんの現金を数えるのは不慣れなので大変に苦労した。 次の予定である土人衆たちへの精進落としを行う近くにある日本料理屋の送迎バスの到着時間が迫っていることもあって お金を数えるのは途中でやめ 後にすることにした。 

 日本料理屋のご主人ともバイト先で行われていたお料理研究会(日本料理、フレンチ、イタリアン、ホテルの料理人が集って新作を発表、試食)で面識があったので無理を聞いて頂いて予約した。 当然ですが、初めて経験するお葬式ですから、次から次へと解らんことばかりで、この土人衆たちへの精進落としも 2日間に渡り、お世話をかけたことに対するお礼の意味も有り、遺族側がホストになり労うらしい。 叔父や叔母たちに混じり、女房の両親まで、ホスト役に徹してくれていた。



精進落とし  気の良い、気が知れた組の人たちとは、双子の叔父も以前から面識があり、、、サービス精神の高い我が血統ですから、異常に盛り上がった。 ちょっと先のことになりますが、その後行われた、父の3回忌には焼津のホテルを予約して親戚が集ったんですが、最初のうちは、ご献杯で始まりましたが、30分もしないうちに大カラオケ大会に早代わり。 舞台付の大広間を借りていたのでみんなでフィーバーしてました。 不謹慎だと思われますが、宴会ではいつも親分肌であったカラオケ好きの父は間違いなくあの世で喜んでいたと思います。

 この精進落としというものは、組長からのお終いの言葉をもらうまでは延々と続けるらしい。 とは、云うものの2時間を過ぎた頃には、合図があり、お開きとなった。 普通、こんなとき写真を撮っていいのか?ですが、組の皆さんに心から感謝し記念撮影を撮って終わった。

 


お葬式終了  そして、家に戻ってから、もう一度お金の計算をして書面と金額が無事に一致しているのを確認してから返礼品の残りを数えた。 葬儀は済んだもののまだ当分は訪れる人がいるようなので葬祭会社の担当者に返礼品の追加を頼んだ。

 長い1日だったと云うか、父が亡くなってからの2日間は 悲しむ暇もなくアッという間に過ぎてしまったが、長い2日間だったようにも感じた。 叔父たちはネクタイを緩め、女性人は着替え始め、それぞれに肩の力を抜き、ホッとしているようだった。 今までは親戚の中でいつもまとめ役をしてきていた父無しにお葬式という大イベントを無事に終えることができた。 皆が帰り、静かになってから しばらく見ていなかったテレビの電源を入れ、父の好きだったウイスキーの水割りを片手に、深くため息をついた。