火の花~ひのはな~
『どないしよ一?』
青年は静かに、ただ静かにそうつぶやいた。
彼の働く職場は1月9日から2月末まで全面改装工事を行うのだ。
彼は今日それを知った。
事前に知らされるべき内容を知らされていなかったのだ。
『俺が自分から聞かなきゃずっと知らないままじゃん!』
彼の心には怒りと悲しみが交錯していた。
『約2ヶ月って軽く失業でしょ?』
彼にできる選択は2つ。
1:辞める。新しい仕事をこの冬に探す。
2:別の店に移動する(改装期間中は移れるらしい)ただし週4日勤務と1日少なくなる、そして夜10時までなので電車は終電ちょっと前とかになる。
どうやら彼は人生の分岐点にいるらしい。
『転職しようかな。今の仕事は3月までで辞めるって決めてたし、それがちょっと早くなるだけのことだよな。でもな一、社会保険入ったばかりなんだけど。ほほほ一。』
あまりの混乱からか奇声を発する彼。
『ドラクエじゃあるまいしそうコロコロ転職したくないよな。遊び人に転職!なんてのはありですか!王様。』
いよいよ現実と幻想が入り乱れ始めた。
『あ、でも遊び人からじゃ勇者になれないよな一。う~ん、魔法使いがいいなぁ。メラ!ギカンテ!パルプンテ一』
彼の頭上にはそれはそれは大きな花火が上がっていた。
つづく。