女滝が注ぎ込む女埵(めたる)川を渡ると、存在感たっぷりの勇壮な滝が現れます。


 これが男滝(おだき)です。


木曽路名水探検隊のブログ-男滝1


 この滝は、歩道のすぐ脇にありながら、高さが15メートルもあり、水しぶきが漂う周辺は、恐怖感すら覚える荒々しさに包まれています。


 この日は雨が降っており、予想に違わぬ男っぷり。


 普通の滝は、縦に長くちょろちょろと、あるいはどばーっと流れ落ちるのが我々のイメージですが、この滝は幅広にバシャバシャバシャーンと滝壺に注ぎ込みます。


 滝壺に落ちた水は、それほど勢いがないのだけれど、滝から落ちる瞬間は、相当に荒々しい。


 そして、男埵(おたる)川に注ぎ込んだこの水は、女埵川の水と合流し、めでたく女男(めおと)となるわけです。


木曽路名水探検隊のブログ-男滝2


 この滝には、有名な 「金のにわとり」 伝説があります。


<金のにわとり>


 むかし松本の長者倉科七郎右衛門という人が、京都に宝比べがあると聞いて出かけることになり木曽路を通りました。


 そして泊りを重ねて、木曽路も南の端の妻籠宿のある旅籠屋へ泊ることとなりました。


 ……宿の主人は、お客より先に間道を駆けて、雄滝の附近の草むらに隠れて、お客の来るのをおそしと待ちうけ、一刀を浴びせて宝物を奪ってころしてしまいました。


                                              - 「金のにわとり」 より-


 先日、木曽地方事務所のブログ、 「是より木曽路 」 にも、金のにわとりについて記載されましたが、そちらでは、倉科様が上洛したのは、豊臣秀吉の関白就任のお祝いに金の鶏を持って行くため、とされていたり、襲ったのは地元の豪族とされていたり、様々な点で食い違いがあります。


 旅籠屋の主人が犯人では、地元の伝説としてまずかったとは思いますが、伝わり方はいろいろとあるようですね。


 旧中山道はこの左岸を通っていたとか、上だ下だと、様々な説がありますが、実際は、何度か付け替えられたのだとか。


 旧中山道の名所として旅人に親しまれ、憩いの場であった男滝と女滝は、洪水などにより少しずつ形を変えながら、現在もなお、古の伝説を我々に伝え続けています。(momo)


(追記)


 妻籠宿からすぐのところにあるこの滝、意外に立ち寄る方は少ないようですが、ちょっと足を伸ばすだけで、これだけ豪快な滝を見ることができるのですから、妻籠宿周辺を通られる際には、ぜひ、お立ち寄りいただきたいと思います。有名な滝ですが、穴場だと思います。