このネタは以前momoさんが紹介した ので、実は2番煎じなのですが、それを承知で敢えて触れたいと思います。


 国道19号を名古屋方面に南下し、トラス橋の「伊奈川橋」を渡る手前を左に折れてIHIターボの工場を右手に見ながら進むと、うぐいす色に塗られたアーチ橋に差し掛かります。この橋がご紹介する方の「伊奈川橋」。

木曽路名水探検隊のブログ-伊奈川橋1


 土木学会の「歴史的鋼橋集覧」によれば、橋のタイプは「上路2ヒンジソリッドリブアーチ」と呼ばれるもので、昭和7年(1932年)に開通しています。現在は県道の橋になっていますが、昭和43年(1968年)に県に移管されるまでは国道19号でした。もとをただせば、中山道のルートでもあったようです。

木曽路名水探検隊のブログ-伊奈川橋2


 この橋越しに岩出観音を狙った写真がこれ。

木曽路名水探検隊のブログ-伊奈川橋遠景


 ところで、この2つを題材に描かれた浮世絵があります。江戸時代後期の浮世絵師「渓斎英泉」の筆になる「木曽街道六十九次」シリーズの中の「木曾路驛野尻伊奈川橋遠景 」がそれ。伊奈川の急流に架かる木橋を渡る旅人を手前に配し、遠くに霞む観音堂が描かれています。写真とは配置が異なりますが、かつて中山道を旅した人たちもこのようにして観音堂を眺めたのでしょうか。


 浮世絵に描かれた伊奈川橋は、「刎橋」と呼ばれる形式で架橋されていました。浮世絵は現代のアーチ橋を彷彿とさせるような描き方をしていますが、刎橋の構造はアーチ橋とは異なります。百聞は一見に如かず。唯一現存する刎橋である山梨県の猿橋 を見ていただいた方が分かりやすいでしょう。(もっとも、この橋もメンテナンスの理由から鉄骨が使われているようですが。)現代の橋とは異なる、なかなか興味深い構造です。(aki