梅雨が明けきらず蒸し暑さの漂うとある昼下がり。ふと思い立って、「山村代官屋敷」を訪ねてみることにしました。県の「地域発 元気づくり支援金」を活用して住民団体が山野草庭園を整備したと聞いていたので、どのようなものか確認することも目的の1つ。


 木曽町役場木曽福島支所前の交差点を大手橋方向に歩いていくと、突き当たりに豪壮な門構えが見えてきます。これが目的地「山村代官屋敷」。

木曽路名水探検隊のブログ-山村代官屋敷


 山村代官屋敷については、momoさんのブログ でも紹介されていますが、代官の「山村氏」はもともと当地の豪族木曽氏に仕え、木曽氏が改易となった後は徳川氏に仕えて、福島の関守と木曽代官を兼ねることになります。爾来、明治2年(1869年)に関所が廃止されるまでの274年間、13代にわたってこの地を治めています。


 石段を上り、門をくぐると、左手には山村氏の守護神である稲荷神社の祠堂があり、2体の狐の像が出迎えてくれます。神社入口の脇には岩をくり抜いた手水鉢が置かれ、丸太の木樋から流れ落ちる水が涼を醸し出しています。

木曽路名水探検隊のブログ-山村稲荷神社  木曽路名水探検隊のブログ-山村稲荷神社手水


 屋敷の脇を歩み進むと、正面の一段高いところに「山村山野草公園」と書かれた真新しい看板が見え、その奥に山野草園が設えられています。以前は管理人の住居が置かれていた場所で、建物が撤去された後の空き地を有効利用しようと、地元の住民グループの「代官屋敷あずまや会」が中心となり、約130㎡の山野草園を整備したものです。

木曽路名水探検隊のブログ-山野草園看板


 庭園の造成や、山野草などの苗、クリの木のベンチの購入費用に元気づくり支援金が充てられています。あいにく、この日可憐な花を付けている山野草はほとんどありませんでしたが、庭園にはカタクリやサクラソウ、クリンソウなど46種類、790本もの山野草が植えられているので、冬場を除けば、季節ごとに違った山野草が訪れる者の目を楽しませてくれることでしょう。

木曽路名水探検隊のブログ-山野草園


 公園の手前を折れると代官屋敷へと続くアプローチになるのですが、その傍らにも苔むした竹樋から水が落ちる手水場が設えられていました。暑い季節、訪れる者にとっては一服の清涼剤とも言える、心憎い演出です。

木曽路名水探検隊のブログ-代官屋敷玄関  木曽路名水探検隊のブログ-代官屋敷玄関脇手水


 この日の目的はあくまでも山野草庭園なので、屋敷には入らずに引き上げることにして出口に向かうと、神社の向い側に置かれたちょっとした土産物売場の店員が「お茶はいかがですか」と声を掛けてくれます。暑い日でしたが、折角の申し出に一杯呼ばれていくことにしました。


 ほどなく、一杯のお茶とお茶うけに何種類かの漬物を刻んだ小皿が添えられて出てきました。何でも、あずまや会がボランティアで来場者をもてなしているのだとか。お茶を通じて、地元の方の温かいおもてなしの心に接したひとときでした。

木曽路名水探検隊のブログ-あずまや会のおもてなし


 momoさんのブログ にも出てきますが、駐車場の脇にも水場が設けられています。近くにはいくつも水場が置かれていて、年間降水量が場所によっては3000㎜に達する、水の豊富な木曽谷ならではの風情を感じました。(aki
木曽路名水探検隊のブログ-代官屋敷前の水場