※『しんぶん赤旗日曜版』 9月1日号から「ブラック企業連続追及」の記事を紹介します。
ブラック企業徹底追及
ロッテリア元店長語る
私はポケットマネーでバイトの給料を払った
大手ファストフードチェーン「ロッテリア」(東京都新宿区)。「自分を育ててくれた会社を少しでも大きくしたい…」と人一倍愛社精神が強かった元ベテラン店長が会社を辞めざるをえなかった理由は…。
「心も体も限界で、続けることができませんでした」
こう語るのは関東地方在住のロッテリア元店長の男性(30代)。会社から過大な売り上げや利益のノルマを押し付けられるなかでうつ病を発症し、数年前に退社しました。
「会社からは一律に前年比110%の目標を求められ、とにかく利益をあげろ、あげろといわれ続けた」と振り返ります。
この男性がロッテリアに正社員として入社したのは90年代後半。退社するまでの約10年間、北海道から九州まで10店舗近くで店長を務め、店長を統括する役職にもつきました。
利益のノルマ
利益のノルマを達成するためには、売り上げを増やすか、経費を削るかです。
経費削減の最大のターゲットにしたのが人件費です。
1店舗20~30人のスタッフで、社員は店長ともう一人ぐらい。しかも店長は「中間管理職」扱いなので、いくら残業をしても残業代はかかりません。男性は語ります。
「私も店長時代、月300時間ぐらいの残業をしていた。朝6時ぐらいに店に出て、終わるのが夜中の1時とか2時。一切残業代はもらっていなかった。しかも会社の所定労働時間9時間でタイムカードを押さないと、本部から“指導”がとんできた。だから実際の出退勤とは別にタイムカードを押していた」
そのためこの男性も店に泊まり込むことが多く、車に泊まり込んでいた店長もいた、といいます。残業代のかからない店長自らが長時間労働をして人件費を節約していたのです。それだけではありません。
「売り上げが増えない時はアルバイトに休んでもらい、代わりに自分が働く。実際に働いているアルバイトの給料をポケットマネーから出し、それでアルバイトの人件費を消してしまうこともあった」
降格の重圧で
なぜ、自腹まで切ってノルマを達成しようとするのか――。
ノルマが達成できないと降格されたり、グループ他社に飛ばされたりするからです。「そのことが大きなプレッシャーとなってのしかかってきた」と語ります。
さらには売り上げを増やすためにも…。
「売り上げ目標に到達しなかった時、足りない分をポケットマネーで補てんしていた。レジに金を入れるだけだとばれてしまうのでコーヒーチケット(6枚つづりで900円)を買っていた」
アイスケーキなどのノルマがある年末年始はさらに悲惨――。
「事前に商品を買わされて、それを売りさばかないといけなかった。親戚などを頼ったり、行きつけのラーメン屋の店主にも置いてもらったりしていた。それでも売れ残ったら店の冷蔵庫に入れておき、アルバイトのおやつにしていた」
長時間労働にくわえ、ノルマ達成のために自腹まで切っていたこの男性。「ロッテリアのことはいまでも好きです。だからこそ、きちんとしたルールで、人を大事にする労働環境に変えてほしい」と訴えます。
ロッテリアの広報担当者は編集部の取材に「調査中」として回答しませんでした。
ハウス食品
更新20年の契約社員も雇い止め
「バーモントカレー」でおなじみの食品メーカー大手・ハウス食品(東京都千代田区)。同社は3月、「店舗フォロー業務」の契約社員89人に、“今回の契約をもって最終の雇用契約とする。更新しない”と9月末で雇い止めを通知しました。
「店舗フォロー業務」とは、スーパーなどを回って店頭に並ぶ商品を補充したり、店から直接注文を取ったりする仕事。契約社員の多くは十数年以上にわたり、同社と半年ごとの雇用契約を繰り返し更新してきました。
雇い止めにたいして、ハウス食品に雇用されている5人の「店舗フォロー業務」の契約社員は、地域労組ひろしまに加盟。会社側と団体交渉を始めています。勤続20年になる40代の女性は「私たちは入社以来、社員以上に仕事をしてきた。それを一方的に切り捨てるのは絶対に許せない」と訴えます。
有期労働契約は、使用者が更新を拒否したときは、契約期間の満了により雇用が終了します。これがいわゆる「雇い止め」。しかし最高裁判例で一定の場合にこれを無効とする判例上のルール(雇い止め法理)が確立しています。
この「雇い止め法理」を法定化したのが改定労働契約法。同法19条では、有期労働契約が何度も更新され事実上無期労働契約と変わらない状態となっていたケースなどについて契約満了を理由にした雇い止めは認められないとしています。
同労組の大山泰弘副委員長は強調します。
「5人は勤続12年から22年。これまで一度も雇い止めされることなく、事実上、契約は自動的に更新されてきた。今回のようなことは、改定労働契約法で許されないことだ」
編集部の取材にハウス食品の広報担当は「契約更新を期待させるような言動は一切行っていない」「労働契約法19条には抵触しない」と回答しています。
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