金八みかんの成長日記 -92ページ目

産地の個性

みかんの出荷が終わり1月に入ると高品質なみかんをつくるためストレスをかけ傷めた樹を回復させる仕事が主になります。


この樹は葉の色が薄く弱っています。



こちらは昨年の水不足で枯れてしまっています。



その年の状態によって変わるのですが、今年はまず石灰を与えその後、肥料、堆肥で土壌をつくり栄養を与え樹力を回復させていきます。





450年の歴史と伝統を誇る和歌山有田は気候、地形といった栽培条件がみかんに適しているのですが、土壌もその一つ。

有田は秩父古成層という土壌が多くこの土壌は水はけがよく柑橘栽培に最適なのです。

ちなみに水はけで言うと
戦前からの産地、和歌山、愛媛、静岡と戦後台頭してきた産地の九州を比べると、
前者は急傾斜の立地が多く水はけが良い土壌を持ち、後者は緩い傾斜の立地が多く水はけが悪いのでマルチ栽培など栽培技術が発展するまでは品質面で後れをとってきたと言われています。





自然条件以外にも産地ごとにそれぞれ特長があり、前者の和歌山、愛媛、静岡を比較しても
和歌山、中でも有田は古くからみかんのトップブランドで農家の収入が多く、一軒や少ない軒数でも十分設備投資が可能だったため大型化、集約化が進んでいないという特長があります。

一方、特に愛媛は大消費地から遠いという地理的条件もあり輸送上の必要性からも早くから大型化が進んでいます。

個の力の和歌山と組織力の愛媛という対比です。

最近は量販など小売の大型化により、対応のためにも和歌山有田でも大型化、集約化の必要性が叫ばれていますが、おそらく金八みかんのような採算性が悪くても個性的な品種が残っていたのも農家の自立性が高い有田ならでは。

多様性がある有田らしさを残しながら発展していって欲しいと思っています。

秘湯へ

毎日数百キロを積下ろしするみかんの出荷で体がボロボロになった私は温泉へと向かいました。

あ、ちなみに2016年から「金八みかんの成長日記」は「金八みかんの秘湯めぐり」に変わります。
(嘘)



向かったのは栃木県の北温泉。

映画「テルマエ・ロマエ」のロケ地になったことでも有名だそう。


電車、バスを乗り継いでいったのですが辿りつくのがとても大変でした。


山の上にあるので途中の道は雪が積もっています。





車で行けるのは温泉の手前400mまで。ここからは徒歩で温泉に向かいます


普通であればあっと言う間につく距離だと思うのですが雪が降り積もりすごい状態。


柵にかけてあるこの縄はすべらないよう靴に巻くためのモノ。



温暖な和歌山は雪が積もることは数十年に一度で、雪道を歩いた経験がない私はとても不安に。

しかも道はかなり急な坂。しかも柵の外は崖なのでまさに命がけ。






雪まみれになりながらなんとか転ばないよう進んでいきます。






すると、、、宿がやっと見えてきました。助かった。






中に入るとおどろおどろしい怪しい雰囲気がまた気分を盛り上げます。












人懐っこい猫もいます。







肝心のお風呂はと言うと、たくさんあるのですが私が入ったお風呂は、、、脱衣所が凍っていました。。






服を脱ぐ時間だけでも足の裏が凍えて痛くなってきます。棚も凍っているので着替えもお風呂から出る頃にはすっかり冷やされています。。。

しかし、凍えたおかげか、お風呂につかると天国のような気持ちよさ!
長時間お風呂に入るのは苦手な私もずっと浸かっていられました。


外には大きな温泉プールもあります。




部屋には炬燵とストーブがありましたが結構寒いです。


そして、食事も冷たいのですが、、、種類が豊富でした!


道のりの過酷さ、部屋の寒さ、料理の冷たさはありますが、温泉の魅力がこれらの要素をチャームポイント変えるほどの宿でオススメです。
http://www.kitaonsen.com/


翌朝宿を出て、帰りはバスの時間の都合で40分程かけてバス停まで歩きます。
さすがに寒さにも慣れてきてピクニック気分♪


温泉にゆっくり浸かったおかげかすっかり疲れも吹っ飛び、最後は宇都宮で一旦下車し、名物の餃子もお腹いっぱい食べ大満足の旅となりました。


おわり

新年のご挨拶

新年明けましておめでとうございます。

ご注文頂いていた金八みかんの発送も全て終了しました。

お買い上げ頂いた皆様ありがとうございました。


2015年はかつてないような極端な天候に振り回された年でした。


夏以降台風の影響を全く受けず雨もほとんど降らないコンディションでいつも以上に糖度が上がりました。

異常な雨の少なさで枯れる木も出てきた程でした。




しかし収穫期に入ると一変、毎日のように雨が続きました。


そして、そこに追い打ちのように異常高温。

例年より10度近く気温が高い日が続き、12月にも関わらず25度近くまで気温が上がり湿度も高いという梅雨のような気候に苦しめられました。

とにかく腐敗がすごいのです。



みかんが腐敗する原因は大きく分けて二つ考えられます。

一つは風や葉の擦れで果皮についた治り切っていない生傷から菌が繁殖し腐敗するもの。
(早い段階でついた傷は人間の皮膚のように塞がって治るか、収穫前に腐ってしまうので影響ありません)


もう一つは運送中に衝撃が加わり傷が入ったり割れたりしてそこから腐敗するものです。


運送時のものは難しいですが、人の眼に見える大きさの生傷であれば選別時に発見でき完全ではないもののある程度腐敗果の発生は防げます。



しかし2015年はこの気温のせいか生傷もなく夜なんともなかったものが翌朝には腐敗するという今まで経験したことのない凄まじい状況。




地元の新聞でも「有田始まって以来の惨事」と報じられた程でした。


気温が上がると大量に腐敗が発生し、有田中の倉庫の前や畑には大量の腐敗果が積まれていました。



金八もなんとか腐敗果発生を防ぐため、倉庫で例年より長時間置き経過を見て腐らなかったものを丁寧に選別し、通常はブラシで果皮の汚れをとるのを昨年は触れる圧が強くなると即腐敗につながるので布で最小限汚れふき取るという方法を採りました。



時間をかけ最大限丁寧に選別、箱詰めを行ったものの特に気温の高い日は運送中の腐敗果発生を完全に抑えることができないこともあったようで腐敗の報告も頂き誠に申し訳ございませんでした。



極端に皮が薄く糖度も高い金八は腐敗しやすくカビの栄養源も豊富なので出荷期間中は気温が下がることを毎日祈り、全員がその日の気温に一喜一憂するノイローゼのような状態に。

こんな中でも喜びのメールやお手紙をたくさん頂き、それを貼りだし励みに全ての発送を終えることができました。
本当にありがとうございました。



現時点ではこれほどの異常高温時の腐敗に対する完全な対処方法がなく対策の考案を急いでおりますが、今年もお客様に喜んでいただけるようさらに美味しい金八みかんをお届けするべく一同精いっぱい尽力する所存です。


今後ともご愛顧を賜りますようお願い申し上げます。


2016年1月 金八みかん かどや 北野拓