「あれが欲しいとかこれが欲しいとか、なんかないんかいな」
「いや、っていうかそれを私に聞かれても困るんですが」
「困らへんやろ。お前の欲しいもんが知りたいねん、こっちは」
「いやだから、それを聞くなって意味なんですが」
「っつーか、なんでさっきからそんな言葉遣いやねん。気取ったってブッサイクな顔は変わらへんぞ」
「うるさい!黙れこのアホ南!お前なんかカリメロて呼ばれてアホにされとったらええねん!」
「なんやとこのアマ!」
「やれるもんならやってみ!」
机を叩いて勢い良く立ち上がる南。それを座ったまま見上げる私。
教室の中には、あぁまたあのふたりか、みたいな空気が漂っている。
誰も、気にとめていない。岸本だけが深いため息を吐いた。
「・・・・・・・・・・できるかアホ」
大人しく座り直し、私のジュースをずずずと音を立てて飲み干す。
残り少なかったので許してやろう、と思った。あとでちゃんと買い直させよう、とも。
「もうええ、お前に勝てる訳ないわ」
「・・・・・・・・・私も良い過ぎた、ゴメン」
南がちらりと私を上目遣いに見る。笑って見せると、ようやくいつもの顔に戻った。
いつもの顔、と言ってもちょっとだけ無愛想なあの顔だ。
「ほんでや」
「ん?」
「何がええねん、お前。オカエシは」
「なんでもええよ。南からもらえるんやったらなんでも」
「マジやな?」
「マジマジ。そやから、自分で考えてや・・・・・・だいたい、見返り求めて本命チョコ挙げたんちゃうし」
ため息を吐くと、南が少しだけ目を丸くした。
そんな意外そうな顔するな、と言ってやりたかったけれど、自分で言っておいて恥ずかしくなってきて、何も言えなくなってしまった。私の真横の席で、また、岸本は大きなため息を吐く。
「聞いたか岸本!コイツ今ものっそい恥ずかしいこと言うたぞ!」
「おー、聞いた聞いた。聞いたったから俺まで巻き込まんといてくれ」
雑誌から目を放さずに岸本が応える。南の耳も、赤くなっていた。
照れ隠しなことなんて岸本も私もとうに分かっているので、なんだか余計に恥ずかしくなってくる。せめて岸本がもっと反応してくれたらもう少し楽になれたのに、最悪だ。
「人がたまに素直になったらこれや!南のアホ!もう知らん!」
立ち上がって、私は入り口まで歩いていく。後ろから南の呼び止める声が聞こえたけれど、無視して、教室を出た。



にたものどうし めいわくなふたり





そもそも南烈ってこんなテンションだったか、と。
2009/03/04
テスト勉強がいっこうに捗らないというか、現実逃避というか。