お昼を食べに出た帰り、やけに寒いなぁと思っていたら雪が降っていた。
思わず入口で立ち尽くしていると後ろから、みっちゃんが迷惑そうなにてきた。私は空を指さす。みっちゃんは出た顔のまま見上げて、ぽかんと口を開けた。
「……………………寒ぃなぁ」
「え、感想それだけ」
「なんだよ。他になんかあるか?」
「……………無いけど」
お尻のポケットにお財布を入れながら、だろ?とみっちゃんが言う。あぁ、始めからこの人に少しでもロマンチックな答えを期待した、私が間違いだった。
お互いにフードを被って体を丸める。寒い寒いと言いながら歩くせいで口の中に雪が入って、余計に冷たかった。吐く息も、真っ白に浮かんで消える。急に現れた真冬の空気は張り詰めたように静かで、不自然な位に空が高く見えた。
「………………おい、何やってんだ」
数歩進んだところで、みっちゃんが振り向く。私は立ち止まって、薄い灰色に色付いた空を、見上げていた。
雪はとても小さくて頼りなく、私達の上に降っては消えて行く。
「………………………ねぇ、みっちゃん」
「あんだよ。いいからはやく来いって」
「………………来年もさぁ」
「…………………………………おぉ」
「…………一緒に、いられたらいいよね」
みっちゃんを、見た。笑って見せると眉間に皺を寄せたまま、唇を尖らせる。
「……お前な、そのために今、頑張ってんだろーが」
呆れたようなため息まで、吐かれてしまった。
「あは。だよね」
「いいからはやく帰っぞ。寒ぃんだよ」
「はいはい。ごめんね」
走って隣りを見上げると、細められた目が私を見下ろす。ニヤッと口角をあげたかと思うと、眉間の皺が一瞬だけ消えた。
小さくて頼りない真っ白な雪は私達の上に降っては消えて行く。暖かい感触は一瞬だけ触れてすぐに離れたのに、まだしばらく残って消えそうにない。
「コンビニでなんか買って帰っか」
「……最近、夜食のせいで太ってる気がする」
「じゃ、今日はまっすぐ帰宅」
「えー……………」
みっちゃんが真っ白な息を吐いて笑った。両手をポケットに入れたまま、私は体ごとぶつかる。お返しにまたぶつかられ、何度も繰り返しがら、ふたりして笑ってしまった。

センター試験まで、あと少し。




みちのとちゅう、ふたりのはじまり





2009/01/11
みっちーの進路を確かめれば良かった…