世の中にバラードというのは本当にたくさんある。

 たくさんのアーティストたちがかけがえの無い人を失ったことについて歌にしている。古くはかぐや姫の「マキシーのために」なんかがあったり。さだまさしの「精霊流し」もそうだ。長渕剛がまだ若かった頃(笑)に歌ってた「祈り」なんかも名曲ではある。山崎まさよしの「One more time One more chance」は、たまたまコンビニで買い物をしている時に有線放送で流れていて、”これはすごい曲だ”と思い、歌詞を覚えてそのままCDショップに駆け込んで購入した記憶がある。

 今は歌っていた本人もいなくなってしまったけれど、忌野清志郎の”デイドリームビリーバー”は大好きな曲のひとつだ。もともとはモンキーズのコピーなのかな。

デイドリームビリーバー



 そんな”偲ぶ歌”としてのバラードの中で、もっとも好きな曲がこれ。

グッドバイからはじめよう 佐野元春


 誰かが亡くなった事を知ったとき、ふと思い出すのがこの曲だったりする。私はあまり身近な人の死に直面していない。オヤジが癌で亡くなった時を除けば、実は親戚づきあいのない家庭だったので身内の死というものにほとんど触れてこなかったのだ。

 オヤジが死んだあと、よくこの歌を思い出していた。
 何日も泣きぬれて過ごすという事は私にはなかった。葬儀やなんかの忙しさにまぎれて悲しみなんてものは忘れていたような感じだった。そうこうしているうちに日常が戻ってきた。仕事に行き、家族とご飯を食べて、一緒にテレビを見て。お笑い番組を見ながら笑ったりして、そして眠る。
 悲しみは大きく一気に押し寄せてくるのではなく、寄せては返す波のように、ふとした時にそれはなんの前触れもなく、ふっと思い出されてくる。何気ない日常の中で、ちょっとしたきっかけが記憶を呼び覚ますスイッチになったりする。

 そういう繰り返しをしているうちに、だんだんと思い出すことも少なくなっていくのだけれど。






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