夏の暑さは嫌いだけど、
夏の色は好きなんだよ。

ヴィヴィッドで、
すごくプリミティヴな感動を覚えちゃう。

外の色がいつもこんな感じで、
そこそこ気もちいい気候だったら、
本当に毎日が楽しくて仕方ねえだろうな。

今日はそんな夏のヴィヴィッドな色でありながら、
包み込むような優しさを持つ音楽を朝から聴いているんだな。

かといってマヌケなソフトロックの、
薄っぺらさみたいなもんとは全然違う。

背後にあるのは魔物。

夏川りみが2002年に発表した、
『南風』というミニアルバムだよ。

まあミニアルバムとはいっても、
初期ビーチ・ボーイズのフル・アルバムよりも、
トータルタイムは長いんだけど。

おそらくこの夏川りみの『南風』は、
僕が好きな音楽アルバムの中でも、
結構上位に入るんじゃないかな?

ほぼアコギだけで構成された、
非常に簡素な音で、
夏川が沖縄民謡を中心に歌い込んでいるんだよ。

ようするに夏川の無垢で伸びやかな声が、
一個の独立した楽器と化しているのがミソ。

一聴するとアクのなさを感じるかもしれないけど、
何しろバックボーンが、
あの魔物の秘境沖縄だから、
濃厚なチイリチーのコクを持っているんだよな。

しかも沖縄民謡とはいっても、
天才にしてマッドサイエンティスト登川誠仁先生のような、
ディープで、
より琉球に向かって、
大和に排他的になるんじゃなくって、
夏川の持つポップな面が、
沖縄民謡が琉球という島から、
外に向かうことに成功しているんだよ。

これは民謡というもので考えても、
極めて異例なことだと思う。

『南部牛追い唄』なんかは、
やっぱりコンビニの香りじゃなく、
地元の山川商店の臭いなんだよ。

地元じゃポピュラーなのかもしれないけど、
他所ではマイナー極まりない。

そのマイナーの魅力だけで成り立つのが民謡ってなところがあるけど、
夏川は『比嘉商店』を見事にコンビニ化しちゃったわけ。

ある意味夏川は、
登川先生と同じぐらい沖縄民謡のマッド・サイエンティストかもしれない。

そのマッドな魔物ぶりと、
てぃだの美しさと無垢さが共存している、
このアルバムは、
本当に驚きに満ちた1枚なんだよね。

スパリゾート井上の魔性の火山


収録曲の『黄金の花』を楽しんでちょうだいな。