失われた尻を求めて
「THE BODY BEAUTIFUL」 -美しき死体肢体-
ってなワケで、行ってきました「大英博物館古代ギリシャ展」、ヘレニズムからギリシア、
ローマへと続く「美しい裸体こそ至上主義」信者のマダムです。行かないワケにはいきません。
「尻をっ！肉体美を誇る最高の尻を、この目で！」と鼻息も荒く、1人でふんふん興奮しながら
貪るように鑑賞して参りました。
ギリシア文明は、今現在のEUの全ての基礎になった非常に重要な文明である。
美術、哲学、物理（物理用語及び記号はギリシア文字だ）、そして強靭な肉体のためのスポーツ。
これらは全て繋がっている。「美」という、唯一で絶対的な点に於いて。
哲学や物理も、更なる「美」のためのアイテムだ。人生を更に「美くしく」するための哲学、
自然界にも規則正しい「美」が存在することを証明する物理。（ほらね？「美」に繋がるでしょ？）
もうひとつ、重要なのがギリシア神話。人間くさい神々と英雄が活躍する神話だ。
マダムの幼少の頃の愛読書は、「愛のギリシア神話（挿絵：武部本一郎）」であった。
絶世の美女アンドロメダを助ける、これまた超絶美男のペルセウスの挿絵に、子供心に興奮したものだ。
（そんで、将来、ペルセウスのような男が、自分を奪いに来るに違いないと夢想したものだが、自分は
どっかの姫でもない上、アンドロメダとは程遠い超日本人ということは、いまだに棚に上げ続けている）
土着信仰から始まる神話は、どこでも同じ内容だと言われるが、確かに日本書紀との共通項が数多ある。
では、作品群を見ていこうか。紹介する作品は、例によって例のごとくマダムの独断と偏見により抜粋した。
入ってすぐ出迎えてくれるのは、「擬人化された葡萄の精とデュオニソス」。
デュオニソスは葡萄酒とヨッパライの神で、オリュンポス十二神の中では、マダムの最も好む男神だ。
女性のようなたおやかな顔立ち、筋肉のないトルソ、股間の間にアレがなければ女性だと思うだろう。
擬人化された葡萄の精に、優しく微笑んでいる。既に酩酊状態なのであろうか。
「ゼウス小像」。誰がなんといおうと大神ゼウス以外の何者でもない、一目で分かる大神感はさすが。
哲学者のように蓄えられた髭、冠、笏杖、雷発生装置（？）、堂々たる玉座。佇まいはゼウス100％だ。
こんなに偉いのに、しかも大神なのに、ヘラがいるのに、なぜ彼はいつも女の尻を追っかけているのか？
「ヘラクレス頭部」。これは第14代ローマ皇帝、ハドリアヌス帝が注文して作らせたらしい。
きっとハドリアヌス好みの男を彫らせたんだろうな～・・・等と、下世話な考えが頭をよぎる。
「スフィンクス像」。説明はいらないだろう。それほど有名な怪物だ。クールだ。
絵画では、ギュスターヴ･モロー描くスフィンクスが一番好きだ。
「ニケ小像」。ニケ彫像は、不完全体で発見されたサモトラケのニケが有名だ。
ニケをローマ字で書くとNIKE。ナイキの元ネタであり、勝利の女神である。
「BACK TO THE FUTURE 3」では、主人公がNIKEを履いたまま過去へ飛び、ウエスタン時代のビフと対面、
ビフはNIKEを見て「ニケ？なんだこりゃ」と笑うシーンで、ニケを知らないビフの無教養が分かる、という
高度な構造になっていた。（当時のマダムもニケが何であるか知らなかった）
そしてそして「円盤投げ」！この彫像のために一部屋あてがってあり、しかも360度から拝見出来る。
そりゃもうかぶりつきで見ましたとも！尻を！ただただ尻を！尻を我らに！
・・・・と興奮しましたけれども、あまり凹凸もなくどちらかというとツルツルしていて、
ちょっとマダムの好みとははずれてました、とゆーか、もっと尻の窪みとか欲しかったというか、
ツルツルしてんのは、長年撫でられてきたせいだろうかとか、マダムの友人は「尻より腕の血管だ！」と
力説してまして、確かにこの円盤投げてる人のウリは尻より血管だな、とか思い直したりして、えーっと、
とにかく全体的な調和は素晴らしかったです。
「円盤投げ」はローマンコピーというもので、オリジナルのギリシア彫刻ではなく、ギリシア彫刻を
ローマ時代にコピーしたものだそうだ。それでも2世紀の作品である。
オリジナルの原型は前2世紀くらいに作成されたそうで、今では残っていない（発見されてない？）という。
息を呑むほど美しかったのがこちら「運動選手の頭部」。ハチマキをしていることから優勝者だと思われる。
優勝者のくせに憂いを含んだ静かな表情、これは理想主義的な様式に則って無感動な表情ということだ。
これは、日本でいう「勝って兜の緒を締めよ」精神のようではないか。
古代ギリシャでは、オリンピック競技は全裸で行われていた。
驚くべきことに、その全裸オリンピックを再現したVTRが、2分程度ではあるが上映されていたのである。
じっくり見たが、うまい具合に編集されており、局部はまったく映されなかった。尻は見放題だった。
当時のオリンピック競技は全部で5競技である。花形は今と同じ、短距離走だったという。
オリンピックは、優勝しなくとも参加することが名誉であり、開催中は戦争が一時中断された逸話は有名だ。
次いでこちら「ファランクスの兜・鎧・膝あて」。ファランクスとは重装歩兵を指す。
これを身に着けて戦いに挑んでいたのか～、と思うと感慨深い。マダムは古代戦争も好きなのである。
エロスの部屋と名づけられたゾーンには、当時のエロイラストを施した杯、皿、壷などが陳列してあり、
男色行為をしているカップルを覗いているオヤジ、いままさに「挿入」しようとしている場面、乳房型の酒杯、
高級娼婦になるためにダンスの練習をしている少女など、秘宝館テイスト溢れる珍品が勢揃い。
以下の壷は、地面から生えているペニスに、水を与えているイラストである。これが一番コミカルだった。
そしてギリシア展で、マダムが一番感嘆し、微笑ましく思ったのがこちら。「ソクラテス小像」。
ソクラテスは醜男で有名な哲学者だが、30センチ程度の小像さえブサイクであった。爆笑。
一通り見終わったら、いよいよ待ちに待ったミステリーガシャポンへ、れっつらごー。
公式カプセルフィギュア、ガシャポン形式なので何が出てくるか、カプセルを開けるまで分かりません。
フィギュアは全6種類、制作は海洋堂、大英博物館完全監修。一回たったの400円、やんなきゃ後悔するって！
1回だけだぞ！と自分自身に言い聞かせ、両替後（ちゃんと両替機まで設置・・・）400円を投じる。
その場では開けず、おうちに帰ってから開けてみた。
結構精密なアンフォラ（貯蔵のための壺）、ほどよい重みもあり、なかなかよい土産物であった。
図録も購入したのだが、非常に気合の入った図録で、これで2300円とはかなりのお買い得である。
古代ギリシアから古代ローマまでの年表、当時の彫刻制作の説明、作品の詳細説明および美しい写真、
ギリシア彫刻とローマンコピーの関係、オリュンポスの神々の説明（ギリシア語ラテン語英語読み）まで、
いたれりつくせりの図録であった。
さて、この間の密教より、今回のギリシア展にマダムは興奮した。何故だろう？ちょっと考えてみた。
マダムにとって仏教や仏像は身近な存在だった。なぜなら実家が真言密教だからだ。
幼い頃の遊び場は寺の境内であったし、花祭りでは寺をハシゴするほど参加したし、
念仏会（ねんぶつえ）は生活の一部であり、正月には寺主催の「子ども会」を何度か手伝った。
いまではほぼ忘れてしまったが、般若心経もリズムに乗って唱えることもできた。
かように仏教が身近にあったために、「うわ、すげえ」というより「あら、久しぶり」みたいな感じで
空海と密教展では、さほど興奮しなかったのではなかろうか。
反対に「ギリシア展」である。こちらは超興奮していた。それは尻だけのせいではあるまい。
上記のように抹香臭い閉鎖的な山奥で過ごしていた幼少期に、絢爛豪華な挿絵の「ギリシア神話」を
発見したときの驚き、そして喜びを想像してみて欲しい。
「ギリシア神話」は春夏秋冬別の4冊セットになっていて、ギリシア神話と星座を絡めた内容だった。
既に妄想癖を持っていた幼いマダムが、胸躍らせて貪り読むのも分かるだろう？
神と星、英雄と美女、恐ろしい怪物、一冊の本の中で大スペクタクルが繰り広げられるのだから
虜にならない方がおかしいって！仏さまの説教本より、ギリシア神話の方が絶対面白いって！
（そういえば日本神話も好きだったな、因幡の白兎とか）
ギリシア神話を生み、素晴らしい芸術と思想を生み、ローマからも絶大の支持を受けた古代ギリシア、
それなのに今現在のギリシアは一体どうしたことか！！恥ずかしくないのか！
塩漬け状態のマダムのユーロ債、どーすりゃいいんだ！（泣）