「創造の法」第3章には、「難局を打開する逆発想」という節がありますが、今回は東宝映画が世界に誇る「逆発想」映画をご紹介しましょう。

その名は「妖星ゴラス」!



(以下、Twitter総集編です)

「妖星ゴラス」のDVDを買いました! 東宝特撮映画DVDコレクション19です。
これだけは買おうと思って待っていました。
で、今見終わったところです。

1962年の東宝作品で、監督は本多猪四郎、特技監督はもちろん円谷英二。
ジャンルはデザスター・ムービーです。

「妖星ゴラス」は、「地球の6000倍の質量の黒色矮星が地球に激突することになりました。どうしましょう」という、まあ定番のお話です。
そういえばそんなのいくつかありましたよねえ。

ところが、「妖星ゴラス」に惚れちゃうと、「アルマゲドン」も「ディープ・インパクト」も「さよならジュピター」もいまひとつ楽しめない。
だって「妖星ゴラス」は、もっと壮大なお話なんですもの。

地球と激突するコースにある天体から人類を守るために、核爆弾で吹っ飛ばしたり、木星ぶつけてみたり、まあ波動砲でもいいけど、「あっち側をどうにかする」というのはまあアイデアとしては「よくある話」。

ところが「妖星ゴラス」というのはね、質量が地球の6000倍もある。
だから核爆弾を使ってもどうにもならない。
じゃあどうする? 「大ピンチってことですよね」

ここで前代未聞の逆発想が登場! 
なんと、南極に重水素原子力ジェット・パイプを1089本建設して、660億メガトンの推力を発生させ、地球の軌道を変えてしまおうとするのです!

南極に建設されるジェット・パイプ群の描写は、「工場フェチ」の方ならちょっと戦慄する光景ですし、そこに核融合の火が入って、地球の軌道が変化していくスケールを越えるものは、現在に至るまでほぼ見たことがない映像的快感でもあります。
最近の映画だと、「エヴァンゲリヲン新劇場版・序」のヤシマ作戦の感じ。

そのジェット・パイプの群れに核融合の火が入って、それを宇宙空間から見ている絵があるんだけど、これがいいんだ!
もう無理矢理やってるって感じで。
ほら、「トップをねらえ!2」でも地球を動かすドゥーズミーユってのが出てくるけど、あんなオシャレじゃない。
原始人が腕力で地球を動かす感じがいい!

まあただ「妖星ゴラス」は1962年の作品なので、今見ると厳しいところがいっぱいあるんだけど、このジェットパイプで地球を動かすシーンの映像的快感は、他にちょっとない。
SFマインドの根源的なところを揺さぶってくる感じなんだなあ。

セリフもマニアックなところがあって、推力が660億メガトンとか、加速度が1.10×10-6Gとか言ってるけど、「東宝特撮……」によれば、監督が東京大学理工学部天文科に通って設定の科学的考証を得た、のだそうです。
こういう専門用語が飛び交う快感って、やっぱいいよねえ。

・・・・・・・・・・(Twitter総集編 ここまで)



この作品の根底に流れる発想が、僕はとても好きなのです。

「相手をどうにかする、のではなく、自分をどうにかする」ことで対処する、という考え方ですよね。

またこの「地球の軌道を動かしてしまう」という発想そのものが壮大なので、まるで「プロジェクトX」みたいな感動がある。

「発想そのものに酔う」というタイプの作品が、もっと映画にもあっていいと思うのです。

「妖星ゴラス」を樋口真嗣監督で、リ・イマジネーションする、なんてどうかなあ。
実現するといいな、なんて思っています。


石黒久人


By: Twitter Buttons