墨汁風呂の話~その①~ | 斎藤栗子BLOG

墨汁風呂の話~その①~


墨汁のにおいがすごく好きで、アナログで絵を描くときにはいつも墨汁を使って背景を塗りつぶしたりしていました。


連載させていただいているトーキングヘッズ叢書で、「モノクローム」がテーマになった時、モノクロといえば墨汁だと思い、墨汁の王者「開明」にルポに行ったのです。








正直私は、開明墨汁工場でダンスをし、その写真をトーキングヘッズ叢書の巻頭カラーに載せてもらおうとたくらんでいました。




なのですが、突然「踊らせてください」と言っても門前払いだと思い(秘宝館は即OKだったけど)、まずはご挨拶&工場の取材をかねて、お仕事モードで訪問。







応対してくだすったのは、まじ~めな雰囲気のWさん。







数ある会社の中から開明墨汁をチョイスし、長きにわたって会社を愛し、数々の教育機関に墨汁を届け続けている人であるから、それはもちろんマジメに決まっている。



私は手持ちのマジメアンテナをびんびんに立てて、Wさんと話をした。
Wさんがセミプロの書家で、作品展もやっていることを知ると、それに食いついてガンガン褒めまくった。


すると





Wさんがちょっとだけ打ち解けてくれた。


「…いける!!!!!」


そう予感した私は、そろーりと、「じつは私ダンサーをやっていて、もし宜しければお着物などを着て工場の中で写真を撮りたいのですが…」と話を持ちかけた。


すると


「あ、大丈夫ですよ。ボク変わったこと好きなんで」


Wさんのセミプロアーティストのハートをツンツンしたことで、無事にOKで・ま・し・た!


しかも、工場を見に行く前にお土産までいただき





このお土産が今回の話の主題なんですが…それはもうすこし後で。








墨汁工場の中は、100年間墨汁だけを作り続けた漆黒の建物。


最高です。最高にフェティッシュで、こんな建物が今なお息づいていることにハッピーを感じました。































なのですが…なにしろあの墨汁のにおいが工場中に充満しています。


「墨汁のにおいっていいよね☆」という寝ぼけたノスタルジーを吹き飛ばす強烈な墨汁のにおい。


作業をしているお兄さんは…ガスマスクをつけています。


ノスタルジーというのは、当の現場から離れている・離れてしまった人たちが思い描く理想郷のようなもので、現場にある生の味わいからは乖離したものなのかもしれないです。









さて。墨汁工場でダンスの約束を取り付けた私は、先日の社会モードから一転、完全ダンスモードで工場を訪れました。






私としては、開明墨汁に最大の敬意を払い、赤と黄色と黒という開明墨汁を象徴するコスチュームで登場したと思っていたのですが


Wさんは





あれ…またもやクローズモード。


若干引いています。







Wさんのドン引きを痛いほど感じた私は、


「時間をかけてはいけない…!」


と思い、サッサと踊ってサッサと帰るという「やり逃げ作戦」でこの場をクリアすることにしました。












そんな決死の思いで撮影した墨汁工場での写真&丹精込めて作成したルポは


無事


巻頭カラーで掲載!ワーイワーイ


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アトリエサードのSさん、ほんとうにいつもありがとう。







しかし…


開明墨汁をめぐるエピソードはここでは終わらなかったのです。


長くなっちゃったから②に続くね。


ぶーぶー墨汁風呂の話~その②~