中日新聞より
(以下、引用)
脳死移植が適正に行われたかどうかを調べる厚生労働省の「検証会議」(座長・藤原研司横浜労災病院名誉院長)が昨年3月から1年以上開かれておらず、2007年5月以降に愛知や長野、滋賀など国内で実施された計32例の検討作業が宙に浮いていることが分かった。
このうち東京と兵庫の2例は臓器提供日から3年以上放置されている。
厚労省の臓器移植対策室は「改正臓器移植法施行に伴う準備で忙しいため」と説明、当面は開催する予定もないとしている。
会議の委員からは早期再開を求める声が上がっており、移植医療に詳しい生命倫理学者は「脳死移植をめぐる手続きの透明性が損なわれている」と指摘している。
臓器提供の大幅増を目指す改正移植法が17日に全面施行され、15歳未満の子どもからの臓器提供も可能となったが、移植医療の信頼確保に向けた国の姿勢があらためて問われそうだ。
検証会議は医師や法学者、精神的ケアの専門家など十数人の委員で構成。
臓器提供のプロセスに重点を置いて
(1)提供者に対する救命治療
(2)法的脳死判定
(3)日本臓器移植ネットワークのあっせん業務
について問題がなかったかどうか、資料の分析や関係者への聞き取りなどを通じて確認する。
厚労省によると、国内でこれまでに法的脳死と判定されたのは87例(うち1例は臓器提供に至らず)で、55例目まではすでに検証が行われた。
このうち金沢大病院(金沢市)で行われた46例目の検証では、同病院が脳死判定時の脳波検査の記録を紛失したことが明らかになった。
会議は、事務局の厚労省が開催時期の判断や日程調整などの庶務を取り仕切っている。
従来、ほぼ半年に1回のペースで開かれていたが、昨年3月を最後に招集されておらず、07年5月、兵庫県の県立病院で40代の男性が提供した56例目以降の検証が行われていない。
移植医療に詳しい東京海洋大の小松美彦教授(生命倫理学)の話 密室で行われる脳死移植の透明性を確保するために設けられた検証会議が1年以上も開店休業状態なのは大問題で、透明性が大きく損なわれているといえる。
脳死移植は、臓器摘出を急ぐあまりに脳死判定や救命治療がおろそかになりかねない危うい医療だ。
検証が適切になされているかどうかの評価は置いておくとしても、検証会議に与えられた役割はとても大きい。
今後、小児も臓器提供者になるわけで、検証はますます重要になる。
(以上)